約束のスピカ

黒蝶

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追憶のシグナル

第13項

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「桜良!」
弓道場の近くで、陽向に声をかけられる。
他に人がいないのを確認して、さっきおさげ眼鏡の少女と話した内容を伝えた。
「そっか…だから手を洗いに行ってたんだね」
「流石にそのまま授業を受けるわけにはいかない」
「…それじゃあ」
「あ、ちょっと!」
人が沢山陽向に向かってきている。
私が一緒にいたら、彼まで弾かれてしまうかもしれない。
それだけはどうしても耐えられなかった。
「……」
「木嶋さん、とても上手ね。もしよければ弓道部に…」
「すみません。上手いと言っていただけるのは嬉しいですが、弓道部には入りません」
体育の担当教諭が弓道部の顧問であるため、毎回こんなふうに誘われている。
けれどやっぱり、人と関わって生きていくことはできない。
個人競技のいいところは、自分ひとりで片づけまでできるところだ。
「さく──」
「岡副君、さっきの理科の授業で分からないところがあったんだけど…」
「そこ俺も聞きたい!」
陽向の周りに人だかりができている間に静かにその場を離れる。
私がいても邪魔にしかならない。
日常生活も、夜怪異たちを調べるときも。
旧校舎へ向かおうとした瞬間、後ろからいきなり誰かに抱きしめられる。
《可哀想に…ずっと無理をしているのね》
おさげ眼鏡の少女の声が、脳の奥深くまで響き渡る。
《少し違うからというだけで、野蛮な人間たちはすぐ仲間外れにする。
家族からさえ化け物と言われて、あなたには彼ひとりしかいない。秘密を抱えたまま側にいるのは辛いでしょう?》
「そんなことない」
《あなたは充分頑張っているわ。誰も気づかなくても、私に声をかけてくれたあなたの心はとても綺麗よ。
…だからこそ、嫉妬してしまう自分の心が許せないのよね?》
心が読めるのか、そんなに顔に出ていたのか。
どのみち、ここまで肯定されることに免疫がない私はどうすることもできない。
《いいのよ、程々で。それ以上頑張ればあなたが壊れてしまうわ。
もっと力を抜いて。夜になる前に、私とふたりで話をしましょう》
この人は怖い思いをさせようと思って言っているわけではない。
そして、私を無理矢理閉じこめてしまおうとも思っていないようだ。
それなら、やっぱりあの大樹にとどまった子どもたちは…。
《あなたが落ち着ける場所を教えてくれる?》
「……ついてきて。午後からの授業はさぼるつもりだったから、旧校舎に行く」
どうせ陽向は来られない。
今の醜い心を隠すためにも、彼女と話していれば気が紛れるのではないだろうか。
《行きましょう》
差し出された手をとり、そのまま歩きだす。
誰かに呼ばれた気がしたけれど、後ろをふりかえらず進み続けた。
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