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泣けないver.
空が紺碧色に染まるまで
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「これがしたいな」
詩音が選んだのは花札だった。
他のゲームを一旦片づけ、急いで札の準備をする。
「ごめんなさい、折角色々見せてくれたのに...」
「ううん、詩音がやりたいものをやりたかっただけだから謝る必要なんかないんだよ。
それに、僕も花札好きなんだ。年寄りくさいってよく言われちゃうんだけどね」
苦笑しながら配っていると、手札をめくろうとした詩音の手が重なる。
「...!ご、ごめん!」
「ううん。寧ろよかったというか、その...手を繋げたみたいで嬉しかった」
恥ずかしそうにしながらもう1度手を重ねられ、真っ直ぐな瞳を見つめていると動けなくなる。
「もう少しだけ、こうしててもいい...?」
「勿論。詩音が望むならいくらでも」
いつもどおりを装いながら、実は内心欲望で荒れ狂っている。
もっと近づきたい、もっと抱きしめたい、もっと詩音を感じていたい...。
だが、大人としての理性がはたらく。
欲望のままに近づいてしまえば、それはもうただの恐ろしい男と変わらない。
...暗くなるまでには家に帰さなくては。
「ありがとう。すごく安心できた」
「僕も、久しぶりに手を繋げて嬉しかった」
「...ねえ、優翔。もし私が花札で勝ったら、今夜は泊まっていってもいい?」
その言葉でまた決意が揺らぎそうになる。
それだけのことを言うということは、やはり何かを話さなければならないと思っているのかもしれない。
彼氏贔屓かもしれないが、ただの我儘には見えないのだ。
僕は覚悟を決めて、大きく頷いてみせる。
ただ、遊びだろうと手を抜くつもりはない。
「それじゃあ、こっちの光札をもらって花見で一杯。こいこいは...する」
「私は猪をもらって...あ、蝶々ももらえる」
そうしてしばらく続けていると、詩音の前には沢山のリーチができていた。
次完成したら終わらないと、そう思っていたがもう遅い。
「えっと、これで雨四光と赤短。それから...猪鹿蝶。もう手札なくなったからあがり」
「...!」
ぼんやりしていた。
もう僕の手には手札がないのに、何故あがろうなんて考えていたのだろう。
「負けちゃった。...詩音、花札が得意なんだね」
「得意かどうかは分からないけど、遊び慣れてはいるのかもしれない」
本来なら、ここで冗談だと笑い飛ばしてでも家に帰さなければならないのだろう。
だが、約束は約束だ。それをうやむやにしていいわけがない。
「それじゃあ今夜はお泊まりだね」
「え、いいの?」
「約束だから、それはちゃんと護らないと。それに...」
わざと耳許で囁くように告げた。
「...話、聞かせてくれるんでしょ?」
詩音が選んだのは花札だった。
他のゲームを一旦片づけ、急いで札の準備をする。
「ごめんなさい、折角色々見せてくれたのに...」
「ううん、詩音がやりたいものをやりたかっただけだから謝る必要なんかないんだよ。
それに、僕も花札好きなんだ。年寄りくさいってよく言われちゃうんだけどね」
苦笑しながら配っていると、手札をめくろうとした詩音の手が重なる。
「...!ご、ごめん!」
「ううん。寧ろよかったというか、その...手を繋げたみたいで嬉しかった」
恥ずかしそうにしながらもう1度手を重ねられ、真っ直ぐな瞳を見つめていると動けなくなる。
「もう少しだけ、こうしててもいい...?」
「勿論。詩音が望むならいくらでも」
いつもどおりを装いながら、実は内心欲望で荒れ狂っている。
もっと近づきたい、もっと抱きしめたい、もっと詩音を感じていたい...。
だが、大人としての理性がはたらく。
欲望のままに近づいてしまえば、それはもうただの恐ろしい男と変わらない。
...暗くなるまでには家に帰さなくては。
「ありがとう。すごく安心できた」
「僕も、久しぶりに手を繋げて嬉しかった」
「...ねえ、優翔。もし私が花札で勝ったら、今夜は泊まっていってもいい?」
その言葉でまた決意が揺らぎそうになる。
それだけのことを言うということは、やはり何かを話さなければならないと思っているのかもしれない。
彼氏贔屓かもしれないが、ただの我儘には見えないのだ。
僕は覚悟を決めて、大きく頷いてみせる。
ただ、遊びだろうと手を抜くつもりはない。
「それじゃあ、こっちの光札をもらって花見で一杯。こいこいは...する」
「私は猪をもらって...あ、蝶々ももらえる」
そうしてしばらく続けていると、詩音の前には沢山のリーチができていた。
次完成したら終わらないと、そう思っていたがもう遅い。
「えっと、これで雨四光と赤短。それから...猪鹿蝶。もう手札なくなったからあがり」
「...!」
ぼんやりしていた。
もう僕の手には手札がないのに、何故あがろうなんて考えていたのだろう。
「負けちゃった。...詩音、花札が得意なんだね」
「得意かどうかは分からないけど、遊び慣れてはいるのかもしれない」
本来なら、ここで冗談だと笑い飛ばしてでも家に帰さなければならないのだろう。
だが、約束は約束だ。それをうやむやにしていいわけがない。
「それじゃあ今夜はお泊まりだね」
「え、いいの?」
「約束だから、それはちゃんと護らないと。それに...」
わざと耳許で囁くように告げた。
「...話、聞かせてくれるんでしょ?」
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🔶拙いエッセイにもかかわらず、HOTランキングに入れて頂き(2025.7.1、最高位31位)ありがとうございます🙇♀️
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