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泣かないver.
初デート 久遠side
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『おはよう』
「おはよう。もう準備できてるよ」
『相変わらず早いな』
朝陽があたりを照らしはじめたころ、私たちは電話で今日のプランを話していた。
「今年の初デート、すごく楽しみだな...」
『初デートなんて言ったら意味が変わりそうだけど...まあ、そうだな』
「大翔、無理してない?」
『連勤だった訳でもないし、全然。...レポートがちょっとだけ残ってるけどな』
声だけだけれど、大翔は今きっと苦笑しているんだろうなということは分かる。
「それじゃあいつもの場所で待ってるね」
『ああ。それじゃあまた後で』
「うん、また後でね」
少し寂しい気持ちになりながら、通話を終わりにして家を出る。
あまり余裕を持って行きすぎても体調を崩してしまうし、だからといって大翔を待たせるわけにもいかない。
(...もう少し後にしようかな)
最近はこの時間調整がとても難しいのだ。
結局それから10分ほどして家を出ると、なんとか約束の時間には間に合った。
ただ、早く着いたことには変わりないうえに...人通りがとても多い。
(音楽でも聴いていようかな)
沢山の音に疲れないようにする為の最終手段を使ってみるけれど、周りの声の方が大きいのかあまり効果がない。
どうしようと焦っていると、肩をぽんとたたかれる。
「悪い、遅くなって...」
「ううん、大丈夫だよ」
「具合悪いだろ?ちょっと向こうで休んでからにしよう」
大翔の前では相変わらず繕えないなと思いながら、腕をひかれる先に何があるのか楽しみだった。
「こんな噴水、あったっけ?」
「ここは最近できた公園で、噴水がシンボル的な意味を持ってるらしい」
「全然知らなかった...すごく綺麗だね」
「そうだな。それで、その...」
大翔は言葉を切った後、続きを一息に話した。
「この噴水に向かって後ろ向きに小銭を投げて、弾きかえされなかったら願いが叶うらしい」
「もうそんなジンクスまで...大翔はすごく詳しいね」
「多少調べる時間があったからな」
今のは半分本当で半分嘘だ。
その優しさに感謝しながら、ふたりで噴水の近くに座ってまったり休む。
「ごめんね。私がもっと人混みに酔わなかったら...」
「気にするな。俺は休んでる時間ものんびりできて嫌いじゃない。
それに、こうやって久遠といられればそれでいい」
「大翔はやっぱり優しいね」
「こ、これくらい普通だろ」
照れているのはすぐ分かったものの、そっと肩を寄せてもられかかってみる。
嫌がられないかと不安に思っていたけれど、寧ろそのまま抱き寄せられてしまった。
そのぬくもりに少しだけ眠気が襲ってくる。
(折角一緒にいるのに...)
そう思いながらも重い瞼はあがってくれない。
「少しそのまま休め」
その言葉を最後に、私の意識は真っ黒になった。
「おはよう。もう準備できてるよ」
『相変わらず早いな』
朝陽があたりを照らしはじめたころ、私たちは電話で今日のプランを話していた。
「今年の初デート、すごく楽しみだな...」
『初デートなんて言ったら意味が変わりそうだけど...まあ、そうだな』
「大翔、無理してない?」
『連勤だった訳でもないし、全然。...レポートがちょっとだけ残ってるけどな』
声だけだけれど、大翔は今きっと苦笑しているんだろうなということは分かる。
「それじゃあいつもの場所で待ってるね」
『ああ。それじゃあまた後で』
「うん、また後でね」
少し寂しい気持ちになりながら、通話を終わりにして家を出る。
あまり余裕を持って行きすぎても体調を崩してしまうし、だからといって大翔を待たせるわけにもいかない。
(...もう少し後にしようかな)
最近はこの時間調整がとても難しいのだ。
結局それから10分ほどして家を出ると、なんとか約束の時間には間に合った。
ただ、早く着いたことには変わりないうえに...人通りがとても多い。
(音楽でも聴いていようかな)
沢山の音に疲れないようにする為の最終手段を使ってみるけれど、周りの声の方が大きいのかあまり効果がない。
どうしようと焦っていると、肩をぽんとたたかれる。
「悪い、遅くなって...」
「ううん、大丈夫だよ」
「具合悪いだろ?ちょっと向こうで休んでからにしよう」
大翔の前では相変わらず繕えないなと思いながら、腕をひかれる先に何があるのか楽しみだった。
「こんな噴水、あったっけ?」
「ここは最近できた公園で、噴水がシンボル的な意味を持ってるらしい」
「全然知らなかった...すごく綺麗だね」
「そうだな。それで、その...」
大翔は言葉を切った後、続きを一息に話した。
「この噴水に向かって後ろ向きに小銭を投げて、弾きかえされなかったら願いが叶うらしい」
「もうそんなジンクスまで...大翔はすごく詳しいね」
「多少調べる時間があったからな」
今のは半分本当で半分嘘だ。
その優しさに感謝しながら、ふたりで噴水の近くに座ってまったり休む。
「ごめんね。私がもっと人混みに酔わなかったら...」
「気にするな。俺は休んでる時間ものんびりできて嫌いじゃない。
それに、こうやって久遠といられればそれでいい」
「大翔はやっぱり優しいね」
「こ、これくらい普通だろ」
照れているのはすぐ分かったものの、そっと肩を寄せてもられかかってみる。
嫌がられないかと不安に思っていたけれど、寧ろそのまま抱き寄せられてしまった。
そのぬくもりに少しだけ眠気が襲ってくる。
(折角一緒にいるのに...)
そう思いながらも重い瞼はあがってくれない。
「少しそのまま休め」
その言葉を最後に、私の意識は真っ黒になった。
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