99 / 156
泣かないver.
夕暮れ時のデート
しおりを挟む
「大丈夫か?」
「うん。もう少しだし...頑張る」
空で夕陽が輝く頃、俺たちは約束したとおり噂になっているクレープを食べにきた。
行列ができるほど人気とは聞いていたが、予想以上の人の波に圧倒されながらとにかく進む。
「着いたぞ。どれ食べたい?」
「苺とチョコがのってるのがいいな...」
「すみません、チョコレートパフェと苺チョコパフェをください」
大量の人にあてられてしまったのか、久遠はふらふらだった。
周囲に目をやると、席は端の方が何とかひとつ空いている状態だ。
「...歩けるか?」
「大、丈夫。えっとどっちに行けば...」
もう既にふらふらになっている久遠の腕をひき、店の外に連れ出す。
そして、誰も通ってこないであろう狭い路地に誘った。
「ちょっと休んだら朝の公園に行ってみよう」
「ごめんね...」
「気にしなくていい。...あれだけ大量の人間の思いを見ていれば疲れるだろ。
悪いけどクレープを頼む」
「大翔...?」
誰も来ないような道とはいえ、表の通りは人で溢れている。
このままではもっと酷くなってしまうのは時間の問題だと考えた俺は、久遠の体を横抱きにした。
「このまま裏道を突っ切る」
「分かった、信じる」
こんなに安心したように言われたら頑張ろうと思うのは、きっと間違っていない。
なんとか久遠が傷つかない場所に連れて行きたかった。
折角今日を楽しんでいたのに、最後の最後で苦しい思いをするのは誰だって嫌だろうから。
「ここならもう平気か?」
「...」
真っ青な顔が縦にふられるのを見て少しだけほっとする。
「飲み物買ったから、これ飲みながら一緒に食べよう」
「迷惑をかけて、本当にごめん」
「気にしなくていい。...予想外の人の数だったからな」
少しずつ落ち着いてきた久遠にぬるくなってしまった紅茶を渡しながら、一口頬張ってみる。
シンプルなのに甘くて少しほろ苦いこの味は、一体どうやって出しているのだろうか。
「大翔、目が完全にレシピ研究の人だね」
「悪い。そんなつもりじゃなかったんだけど、どうやったらこの味が出せるのかつい考えこんだ。
...一口食べてみるか?」
「う、うん」
何故か恥ずかしそうにしながら一口食べた久遠は、美味しいと目を輝かせた。
「わ、私のもどうぞ」
「ありがとな。...ん、苺とチョコレートのバランス、が...」
そこまで言ってようやく照れていた理由に気づく。
...まさかこんなときに間接キスになるなんて、どんな表情をするのが正解か分からなかった。
「大翔」
「どうした?」
「今日はありがとう。本当に楽しかったよ」
「俺の方こそ、付き合わせて悪かった。次はこんでない時間帯を調べておくから、また一緒に行こう」
優しい瞳で頷く彼女の目には、沈みゆく夕陽がうつっている。
俺の瞳にも同じものがうつっていると思うと、なんだか少し照れくさかった。
「うん。もう少しだし...頑張る」
空で夕陽が輝く頃、俺たちは約束したとおり噂になっているクレープを食べにきた。
行列ができるほど人気とは聞いていたが、予想以上の人の波に圧倒されながらとにかく進む。
「着いたぞ。どれ食べたい?」
「苺とチョコがのってるのがいいな...」
「すみません、チョコレートパフェと苺チョコパフェをください」
大量の人にあてられてしまったのか、久遠はふらふらだった。
周囲に目をやると、席は端の方が何とかひとつ空いている状態だ。
「...歩けるか?」
「大、丈夫。えっとどっちに行けば...」
もう既にふらふらになっている久遠の腕をひき、店の外に連れ出す。
そして、誰も通ってこないであろう狭い路地に誘った。
「ちょっと休んだら朝の公園に行ってみよう」
「ごめんね...」
「気にしなくていい。...あれだけ大量の人間の思いを見ていれば疲れるだろ。
悪いけどクレープを頼む」
「大翔...?」
誰も来ないような道とはいえ、表の通りは人で溢れている。
このままではもっと酷くなってしまうのは時間の問題だと考えた俺は、久遠の体を横抱きにした。
「このまま裏道を突っ切る」
「分かった、信じる」
こんなに安心したように言われたら頑張ろうと思うのは、きっと間違っていない。
なんとか久遠が傷つかない場所に連れて行きたかった。
折角今日を楽しんでいたのに、最後の最後で苦しい思いをするのは誰だって嫌だろうから。
「ここならもう平気か?」
「...」
真っ青な顔が縦にふられるのを見て少しだけほっとする。
「飲み物買ったから、これ飲みながら一緒に食べよう」
「迷惑をかけて、本当にごめん」
「気にしなくていい。...予想外の人の数だったからな」
少しずつ落ち着いてきた久遠にぬるくなってしまった紅茶を渡しながら、一口頬張ってみる。
シンプルなのに甘くて少しほろ苦いこの味は、一体どうやって出しているのだろうか。
「大翔、目が完全にレシピ研究の人だね」
「悪い。そんなつもりじゃなかったんだけど、どうやったらこの味が出せるのかつい考えこんだ。
...一口食べてみるか?」
「う、うん」
何故か恥ずかしそうにしながら一口食べた久遠は、美味しいと目を輝かせた。
「わ、私のもどうぞ」
「ありがとな。...ん、苺とチョコレートのバランス、が...」
そこまで言ってようやく照れていた理由に気づく。
...まさかこんなときに間接キスになるなんて、どんな表情をするのが正解か分からなかった。
「大翔」
「どうした?」
「今日はありがとう。本当に楽しかったよ」
「俺の方こそ、付き合わせて悪かった。次はこんでない時間帯を調べておくから、また一緒に行こう」
優しい瞳で頷く彼女の目には、沈みゆく夕陽がうつっている。
俺の瞳にも同じものがうつっていると思うと、なんだか少し照れくさかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
思い出のチョコレートエッグ
ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。
慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。
秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。
主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。
* ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。
* 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。
* 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness
碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞>
住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。
看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。
最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。
どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……?
神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――?
定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。
過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる