泣けない、泣かない。

黒蝶

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泣かないver.

彼女の答え

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「ごめん!」
「大翔、寝不足だったんでしょ?...私は一緒にいられて楽しかったよ」
あのあと結局寝過ごしそうになり、久遠に迷惑をかけるところだった。
にも関わらず、彼女はただ照れくさそうに笑っている。
「それじゃあまた後で」
「おう、また」
俺はそのまま朝の生徒会の仕事をこなし、久遠は自分の教室に向かっていく。
どうしても様子が気になってしまうが、自分の都合だけで覗きに行くわけにはいかない。
それから授業をひたすら受け、ふたりで昼食を摂る。
「悪い、待たせたか?」
「ううん。さっきまで自習だったし、丁度書き終わったところだから」
そのノートは見覚えがあるもので、何を書いていたのかはすぐに理解した。
そこには大量の文字が隊列を組んでいて、どれだけ捗ったのかなんて訊くまでもない。
「かなり集中して書けたみたいでよかった」
「すごく楽しかったよ」
授業でも一緒になったり、お昼になったら弁当の中身を見せあったり...そして、目の前で久遠が笑っている。
今はこの景色を護りたい、そう思う。
「早く食べないと時間がなくなりそうだな」
「そうだね。...いただきます」
明るい笑顔に嘘はない。
それに安心しながら卵焼きを頬張っていると、久遠は話をはじめた。
「大翔」
「どうした?」
「私ね...今日頑張って来てよかった。ありがとう」
「別に礼を言われるようなことなんて何もしてないぞ」
ありのままの思いをぶつけると、久遠は箸を置いて話を続ける。
「私にとっては昨日のビデオ通話が本当にありがたかったの。...大翔が言ってくれたことも含めて、全部」
「俺は俺にできることをしただけだ。お世辞とか苦手だから、思ってることしか言えないし」
「それは長所なんじゃないかな?」
「そうなのか?」
久遠はゆっくり頷くと、再び箸をすすめはじめた。
「...それ書き終わったら今度読ませて」
「あんまり上手じゃないよ?」
「それでもいいんだ。久遠の想いが籠っているものを見てみたい」
はじめは驚かれてしまったが、優しい声でいいよと言ってくれた。
「それじゃあ、大翔に1番最初の読者さんになってもらおうかな」
自信があるわけではないようだが、それでも必死にもがいている。
久遠は気づいていないようだが、それがこいつのすごいところなのだと俺は思う。
「今日、できるだけ早く生徒会の仕事終わらせるから待ってて」
「いつものところにいるね。もう今から放課後が楽しみだよ。...これも大翔が楽しいことでいっぱいにしてくれたおかげだね。
カフェに行くの、楽しみにしてる」
「俺も楽しみだ」
思いつくままの楽しいことを言ってみる、そしてそれを実行する。
俺がいつもしてきた方法だが、どうやら久遠にも合っていたようだ。
緩みそうになる頬を隠しながら、昼休みはそれでわかれた。
...それからみっちり2時間あった苦手な授業を乗りきれたのは、きっとあいつのおかげだ。
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