泣けない、泣かない。

黒蝶

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泣かないver.

いいことづくしの早朝

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翌朝、いつもより早く家を出る。
...勿論約束を守る為に。
「...ねむ」
「おはよう。今日は早いね」
「兄貴...」
見覚えのある車の窓が開き、兄貴が不思議そうな顔でこちらを見つめる。
「久遠さんのところに行くなら途中まで送っていくよ。
...近くのお店に用事があるからそのついで」
「悪いけど、頼んでいい?」
このままふらふら歩いていると、誰かにぶつかってしまいそうだ。
「勿論。ごめん、後ろ荷物でいっぱいだから助手席に座ってくれる?」
「...ありがとな」
「昨日遅くまで起きてたんじゃない?夜ふかしはあんまり体によくないよ」
「分かってはいるんだけどな...」
そんな話をしているうちに、あっという間に目的地に辿り着く。
「本当に助かった。何かお礼させて」
「...それじゃあ、時間があるときにまたふたりでご飯食べよう。それだけでいいから」
それじゃあ、と兄貴は笑顔で車をはしらせる。
何かいいことがあったことだけは感じとることができて、それを微笑ましく思った。
「...いるか?」
いつもより早いせいか、なかなか出てこない。
あまり大声を出すわけにもいかず、もう1度だけと決めてインターホンを鳴らした。
「あら、大翔君」
「おはようございます。久遠、まだ寝てますか?」
「あの子ならもう少しで出てくると思うわ。...大翔君、本当にありがとう」
「俺はやりたいことをやっているだけなので」
久遠のお母さんはいつも優しくしてくれる。
...もしこんな人が母親だったら、なんて考えてしまうほどに。
「おはよう」
「体調は大丈夫か?」
いつもと生活リズムを少しでもずらすと体調を崩しやすくなることは聞いたことがある。
正直、それが1番心配だった。
「今日は調子がいいんだ。...だから、行こう?」
「そうだな」
その場から見送る女性に一礼して、久遠の手をひいて歩き出す。
...ただ1歩踏み出すのでさえ緊張してしまうのは、おかしいことだろうか。
「ここの公園だ」
「噴水が綺麗だね。それに、本当に静か...」
もっと話したかったが、残念なことに頭がまだ働いていないらしい。
少し走っただけでふらふらになってしまった俺を支えて、噴水が見えるベンチに隣り合わせに腰掛ける。
「大丈夫...?もしかして、寝不足?」
「レポートがまだ終わってなかったから急いで終わらせてた」
こう言わないと、余計な心配をかけてしまう。
それが嫌でそう伝えることしかできなかった。
久遠はそっかと言いながら肩を貸してくれる。
「...このまま休んでて」
「悪い、ちょっとそうさせてもらう」
生徒会の仕事も頑張れそうだ、そんなことを思いながら目を閉じる。
兄貴に会えて久遠とも話せて...朝からいいことづくしで、本当にいい1日になりそうだ。
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