96 / 156
泣かないver.
想像する明日
しおりを挟む
『私がやりたいこと...』
久遠はいまひとつぴんとこないのか、考えこんでいる様子だった。
「自分の気持ちを素直に言ってくれればいい。流石に空を飛びたいとかは無理だけど、できる範囲のことなら俺が叶える」
そう力強く宣言すると、久遠はおずおずと話しはじめた。
『...朝陽が見たいな』
早起きできない俺では、残念ながらその願いを叶えるのは難しい。
だが、ただできないと突っぱねるのはきっと違う。
「それは厳しそうだけど、公園に行ってみるのは?」
『公園?』
「駅の近くにある、知る人ぞ知るスポット。景色の綺麗さなら負けてないと思う」
これは嘘ではない。
俺が独りで悩んでいた頃、よく通っていた場所だ。
朝はほとんど人通りもないうえ、駅の近くなので遅刻する可能性はほぼないと言えるだろう。
「それから、最近駅の近くにクレープが美味しい店がオープンしたらしい」
『知らなかった...』
「夕方はそこに行ってみる、それならどうだ?」
学校が終わった後の楽しみ...これもあった方が不安はきっと少なくなるはずだ。
俺がそうだったからと言って全てが当てはまる訳ではないだろうが、それでも何とか明日を楽しみにしてほしいと思ってしまう。
「俺の場合は敵情視察の意味もこめてになるけど、普通に人気のチョコクレープを食べてみたいんだ。
でも、女の子ばっかり行くような店らしいし...つまり、可愛らしいカフェってことだろ?もしかしたら久遠が好きなタイプなんじゃないかって思ったんだ」
久遠は可愛いものに目がない。
それも知っているうえで誘ったのだ。
『朝は探検で、夕方はクレープ...すごく楽しそう!』
「やっと笑ったな」
ずっと思い詰めているような表情をしていたので、安心してつい口から言葉が零れてしまう。
先程よりは楽しそうでただただほっとする。
『ちょっとだけ、明日が楽しみになった気がする。大翔はすごいね、魔法使いみたい...!』
「別にそんなことないと思うけど、まあ、ありがとな」
何だか妙に照れくさくて、ついそんなぶっきらぼうな言葉を返してしまう。
画面越しの久遠はただ笑っていた。
「今夜はこのまま通話状態にして寝るか。...遅くまで起きてた方が切るということで」
『いいの?』
「ああ」
おまえがすごく眠そうだから...なんて言えるはずもなく、空になったカップを見つめながらベッドに横になる。
『それじゃあ、また明日』
「ああ、またな」
また明日と口にする久遠はいつもより楽しそうで、それを見ているだけでひどく落ちつく。
やはり眠かったのか、すぐに寝息が聞こえてきた。
「...おやすみ」
俺はそれからもしばらく眠れず、結局2時前になって目を閉じた。
どんなことがあるのか、楽しいことをひたすら想像しながら──。
久遠はいまひとつぴんとこないのか、考えこんでいる様子だった。
「自分の気持ちを素直に言ってくれればいい。流石に空を飛びたいとかは無理だけど、できる範囲のことなら俺が叶える」
そう力強く宣言すると、久遠はおずおずと話しはじめた。
『...朝陽が見たいな』
早起きできない俺では、残念ながらその願いを叶えるのは難しい。
だが、ただできないと突っぱねるのはきっと違う。
「それは厳しそうだけど、公園に行ってみるのは?」
『公園?』
「駅の近くにある、知る人ぞ知るスポット。景色の綺麗さなら負けてないと思う」
これは嘘ではない。
俺が独りで悩んでいた頃、よく通っていた場所だ。
朝はほとんど人通りもないうえ、駅の近くなので遅刻する可能性はほぼないと言えるだろう。
「それから、最近駅の近くにクレープが美味しい店がオープンしたらしい」
『知らなかった...』
「夕方はそこに行ってみる、それならどうだ?」
学校が終わった後の楽しみ...これもあった方が不安はきっと少なくなるはずだ。
俺がそうだったからと言って全てが当てはまる訳ではないだろうが、それでも何とか明日を楽しみにしてほしいと思ってしまう。
「俺の場合は敵情視察の意味もこめてになるけど、普通に人気のチョコクレープを食べてみたいんだ。
でも、女の子ばっかり行くような店らしいし...つまり、可愛らしいカフェってことだろ?もしかしたら久遠が好きなタイプなんじゃないかって思ったんだ」
久遠は可愛いものに目がない。
それも知っているうえで誘ったのだ。
『朝は探検で、夕方はクレープ...すごく楽しそう!』
「やっと笑ったな」
ずっと思い詰めているような表情をしていたので、安心してつい口から言葉が零れてしまう。
先程よりは楽しそうでただただほっとする。
『ちょっとだけ、明日が楽しみになった気がする。大翔はすごいね、魔法使いみたい...!』
「別にそんなことないと思うけど、まあ、ありがとな」
何だか妙に照れくさくて、ついそんなぶっきらぼうな言葉を返してしまう。
画面越しの久遠はただ笑っていた。
「今夜はこのまま通話状態にして寝るか。...遅くまで起きてた方が切るということで」
『いいの?』
「ああ」
おまえがすごく眠そうだから...なんて言えるはずもなく、空になったカップを見つめながらベッドに横になる。
『それじゃあ、また明日』
「ああ、またな」
また明日と口にする久遠はいつもより楽しそうで、それを見ているだけでひどく落ちつく。
やはり眠かったのか、すぐに寝息が聞こえてきた。
「...おやすみ」
俺はそれからもしばらく眠れず、結局2時前になって目を閉じた。
どんなことがあるのか、楽しいことをひたすら想像しながら──。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢
秋野 林檎
恋愛
「わ……私と結婚してください!」と叫んだのは、男爵令嬢ミーナ
プロポーズされたのは第一騎士団の団長、アークフリード・フェリックス・ブランドン公爵
アークフリードには、13年前に守りたいと思っていた紫の髪に紫の瞳をもつエリザベスを守ることができず死なせてしまったという辛い初恋の思い出があった。
そんなアークフリードの前に現れたのは、赤い髪に緑の瞳をもつミーナ
運命はふたりに不思議なめぐりあいの舞台を用意した。
⁂がついている章は性的な場面がありますので、ご注意ください。
「なろう」でも公開しておりますが、そちらではまだ改稿が進んでおりませんので、よろしければこちらでご覧ください。
退屈令嬢のフィクサーな日々
ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。
直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。
『後宮薬師は名を持たない』
由香
キャラ文芸
後宮で怪異を診る薬師・玉玲は、母が禁薬により処刑された過去を持つ。
帝と皇子に迫る“鬼”の気配、母の遺した禁薬、鬼神の青年・玄曜との出会い。
救いと犠牲の狭間で、玉玲は母が選ばなかった選択を重ねていく。
後宮が燃え、名を失ってもなお――
彼女は薬師として、人として、生きる道を選ぶ。
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
新しい家族は保護犬きーちゃん
ゆきむらさり
エッセイ・ノンフィクション
〔あらすじ〕📝初めて🐶保護犬ちゃんを迎え入れる我が家。
過去の哀しい実情のせいで人間不信で怯える保護犬きーちゃん。
初日から試行錯誤の日々と保護犬きーちゃんがもたらす至福の日々。
◇
🔶保護犬ちゃん達の過去・現在の実情の記述もあります🐾
🔶日々の些細な出来事を綴っています。現在進行形のお話となります🐾
🔶🐶挿絵画像入りです。
🔶拙いエッセイにもかかわらず、HOTランキングに入れて頂き(2025.7.1、最高位31位)ありがとうございます🙇♀️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる