泣けない、泣かない。

黒蝶

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泣かないver.

バレンタイン当日-遊園地の定番-

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それから昼食を摂り、俺たちはあるアトラクションに挑戦している最中だ。
「...5秒後、左側から何かくるよ」
「お、おう...」
久遠の言うとおり、左側から仕掛けが飛び出してきた。
「久遠はこういうの平気なんだな」
「お化けとか大好きなんだ。それに...右側に何かいる」
...お化け屋敷というのは、位置を把握してサバゲーのようなものだっただろうか。
お化け役に申し訳なく思いながら、そのまま前へ進んでいく。
その後も何人かの見掛けたが、久遠相手には通用しない。
そしてとうとう一切悲鳴をあげることなく、ゴールに到達した。
「久しぶりに沢山歩けて楽しかった...!」
俺は堪えきれなくなり、そのまま声を出して笑ってしまった。
「え、大翔?」
「悪い、こんな楽しみ方も楽しいなと思って...ふっ」
「どうしたの、さっきの不敵な笑み...」
それからふたりでチュロスとジュースを買い、ベンチに腰掛け休憩することになった。
メリーゴーランドにお化け屋敷、もの作りコーナー...今日1日で沢山まわれたような気がする。
「楽しかったか?」
「うん!こんなふうにはしゃいだのは久しぶりだったかも...」
空は茜色に染まっている。
乗れるとしたらあとひとつだが、最後はどこかなんてもう決まっているようなものだった。
「最後に乗るのは定番があるし、それから帰るか」
「...そうだね」
久遠の笑顔にはどこか寂しさが滲んでいて、手を伸ばしてそっと頬に触れる。
「大翔...?」
「楽しい時間は、これからふたりでもっと沢山作っていけばいい。
...それに、今夜も泊まりにくるだろ?」
「いいの?」
「泊まる気満々だっただろ、沢山荷物持ってたし」
遊園地にあるロッカーを借り、そこに預けているのだが...久遠が預けたもののなかにいつも泊まりにくるときに荷物をまとめているリュックサックが交ざっていたことは知っている。
「ほら、行くぞ」
「うん!」
ふたり並んで座り、少しずつゴンドラが上昇していく。
久遠はこれも初めてなのか、見えるもの全てに目をきらきらさせて反応していた。
「あの小さいのがボートを漕いだところかな?」
「向こうはサバゲーになったお化け屋敷だな」
「あっちのエリア、まわれなかったね...」
「次来たときに行ってみればいい」
色々な話をしているうちに頂点へと到達する。
「あ、あのね、ひろ...」
言いたいことは分かっていた。
だからこそ、そっとキスをする。
これで本当に永遠の愛になるかどうかは分からない。
ただ、どんなジンクスにだってすがりたいと思ってしまった。
...俺らしくないと内心苦笑しながら。
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