泣けない、泣かない。

黒蝶

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泣かないver.

ほんのりティータイム

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「美味しい...」
「それならよかった」
大翔が淹れてくれた紅茶は、疲れきった脳に染みるのを感じる。
それにお菓子も甘くて、いくらでも食べられそうだった。
「まだ沢山あるし、ゆっくり食べて休めばいい。俺もこうやってふたりで話すのは楽しいからな」
「...ありがとう」
大翔と一緒に勉強ができるのは楽しいけれど、その分こうして一緒に休憩できる時間も楽しい。
(私、大翔といられる時間が好きなんだな...)
頬が緩みそうになるのを手で隠してしまいながら、じっと大翔を見つめる。
「もしかして、口に合わなかったか?」
「ううん、そうじゃなくて...幸せだなって思ったんだ」
「...そうか」
素っ気ない返事のように聞こえたけれど、耳まで赤くなっているのを知っているからつっこまない。
大翔と一緒にいられることをずっと噛みしめていたいと思う。
「...このお菓子じゃちょっと甘すぎたか」
「そうかな?私はこのくらいがいいなって思ったんだけど...」
「相手の好みに合わせられるのが1番いいんだろうけど、万人受けしそうなものはどれなんだろうな」
真剣に選んでいる大翔の力になりたくて、色々なお菓子を一緒に食べてみる。
クッキーにチョコレート、さっぱり系のケーキ...とにかく色々なものがあってかなり楽しめた。
(どれも美味しい...でもそれじゃあきっと大翔を困らせてしまうよね)
「こんなことに付き合わせて悪い」
「ううん。色々なお菓子を食べられるし、大翔の役に立てるのは嬉しいな」
「...将来の為にはなってるのかもな」
楽しそうに笑う姿をずっと見ていたくて、なんとか笑顔になってほしくて一緒にできることからやってみる。
食器を洗いながら何ができるのか考えていると、口の中に甘さが広がった。
「これ、すごく美味しい...!」
「久遠が1番気に入ってたチョコレート、これだろ?沢山余ってるし好きなだけ持って帰ってくれていいから」
「本当にいいの?」
「ひとりじゃ食べきれないしな」
苦笑混じりにそう話す大翔の視線の先には、大量のお菓子が並んでいた。
全部手作りなので、たしかに早く食べないと傷んでしまいそうだ。
「これ、いつから作ってたの?」
「だいぶ前から。楽しくなって手が止まらなくなった」
「あれだけのお菓子を全部作れるなんて、私より女子力が高いかも...」
「俺は女子力より男子力が欲しいんだけどな」
そんな会話をしながら時計を見てみると、もう夕方の5時になっていた。
「早く帰らなくていいのか?」
「今日も泊まっていい...?」
「俺は構わないけど、帰らなくて大丈夫なのか?」
「お母さん、今夜も帰ってこないんだ」
「そうなのか...」
ぽんと肩に手が置かれてそっと目を閉じる。
...新しい恋人ができたのか、それとも本当に仕事なのか。
お母さんはどっちなのだろう。
片づけた食器たちがきらきらと輝いていた。
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