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泣かないver.
最近のお決まり
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「久遠は本当にその格好が好きだな」
「え?」
空が茜色に染まる頃、少し勉強を進めて夕食を一緒に作っていると大翔がそんな話をする。
首を傾げていると、洋服を指さされた。
「それだよ、それ。...元・俺のシャツを見ないときはないような気がする」
「そうかな...?」
持っている部屋着と交代で着ているはずなのに、そんなものすごい頻度でここに来ているのだろうか。
(迷惑になっているんじゃ...)
さあっと血の気が引いていくのを感じていると、すぐに体が抱き留められる。
「迷惑というより、寧ろ嬉しい。こうやって一緒にいられる時間が増えるのは、俺も嬉しい」
「大翔...」
自然と唇が重なって、少しだけ驚いてしまうと同時に一緒に過ごしてきた時間の長さを感じる。
こんなふうに息をするように口づけるようになったのは、いつからなんだろう。
「...もう1回補充してもいい?」
「うん、勿論」
唇が重なりかけた瞬間、インターホンの音が鳴り響いた。
「...出てくる」
不機嫌そうな大翔におろおろしていると、玄関の前には見知った顔があった。
「大翔、おかずを作りすぎたから...」
「こんばんは、優翔さん」
「久遠さんが来てたってことは僕がいたら邪魔になるね」
「いえ、私は、その...」
「そんなにおろおろしなくて大丈夫だから。兄貴もそんなによそよそしくしなくても入っていい」
「いやいや、畏れ多いよ...というか大翔、自分から出てるオーラがすごいことに気づいてないでしょ?」
兄弟の仲睦まじい会話に思わず笑ってしまう。
「本当に仲良しさんで羨ましい...」
「別にこれくらい普通だろ?」
「普通だと思うんだけどな...」
声を揃えて同じようなことを話すふたりを、私はまた微笑ましく感じてしまった。
優翔さんが帰っていった後、大翔がずるずるとその場に座りこむ。
「大翔、大丈夫?」
「...馬鹿兄貴」
「きっと大翔のことが心配なんだね」
『恋人を泊めるのは構わないけれど、節度は保つこと。...彼シャツなんて、本当に仲がいいんだね』
優翔さんに最後に言われたことを思い出して、少しずつ恥ずかしくなってくる。
「結局作りすぎたって言って、何日かに1度こんなふうに様子を見にくるんだ」
「いいお兄さんだね」
「時々鬱陶しいって思うこともあるけど、やっぱり兄貴には感謝の気持ちの方が大きい」
いつも誇らしげに語る大翔を見ていると、私まで嬉しくなる。
「そういえば、どうして彼シャツって...」
「何でも知ってるからな、兄貴は」
苦笑しながら夕飯の準備を手際よく終わらせる大翔の姿はかっこいいなんて一言では表せないほどかっこいい。
つい見惚れてしまっていると、ふっと笑いながら声をかけられる。
「ご飯冷めるぞ」
「あ、うん...!」
今この時間に感謝しよう、そんなことを考えながら料理に向かって両手をあわせた。
「え?」
空が茜色に染まる頃、少し勉強を進めて夕食を一緒に作っていると大翔がそんな話をする。
首を傾げていると、洋服を指さされた。
「それだよ、それ。...元・俺のシャツを見ないときはないような気がする」
「そうかな...?」
持っている部屋着と交代で着ているはずなのに、そんなものすごい頻度でここに来ているのだろうか。
(迷惑になっているんじゃ...)
さあっと血の気が引いていくのを感じていると、すぐに体が抱き留められる。
「迷惑というより、寧ろ嬉しい。こうやって一緒にいられる時間が増えるのは、俺も嬉しい」
「大翔...」
自然と唇が重なって、少しだけ驚いてしまうと同時に一緒に過ごしてきた時間の長さを感じる。
こんなふうに息をするように口づけるようになったのは、いつからなんだろう。
「...もう1回補充してもいい?」
「うん、勿論」
唇が重なりかけた瞬間、インターホンの音が鳴り響いた。
「...出てくる」
不機嫌そうな大翔におろおろしていると、玄関の前には見知った顔があった。
「大翔、おかずを作りすぎたから...」
「こんばんは、優翔さん」
「久遠さんが来てたってことは僕がいたら邪魔になるね」
「いえ、私は、その...」
「そんなにおろおろしなくて大丈夫だから。兄貴もそんなによそよそしくしなくても入っていい」
「いやいや、畏れ多いよ...というか大翔、自分から出てるオーラがすごいことに気づいてないでしょ?」
兄弟の仲睦まじい会話に思わず笑ってしまう。
「本当に仲良しさんで羨ましい...」
「別にこれくらい普通だろ?」
「普通だと思うんだけどな...」
声を揃えて同じようなことを話すふたりを、私はまた微笑ましく感じてしまった。
優翔さんが帰っていった後、大翔がずるずるとその場に座りこむ。
「大翔、大丈夫?」
「...馬鹿兄貴」
「きっと大翔のことが心配なんだね」
『恋人を泊めるのは構わないけれど、節度は保つこと。...彼シャツなんて、本当に仲がいいんだね』
優翔さんに最後に言われたことを思い出して、少しずつ恥ずかしくなってくる。
「結局作りすぎたって言って、何日かに1度こんなふうに様子を見にくるんだ」
「いいお兄さんだね」
「時々鬱陶しいって思うこともあるけど、やっぱり兄貴には感謝の気持ちの方が大きい」
いつも誇らしげに語る大翔を見ていると、私まで嬉しくなる。
「そういえば、どうして彼シャツって...」
「何でも知ってるからな、兄貴は」
苦笑しながら夕飯の準備を手際よく終わらせる大翔の姿はかっこいいなんて一言では表せないほどかっこいい。
つい見惚れてしまっていると、ふっと笑いながら声をかけられる。
「ご飯冷めるぞ」
「あ、うん...!」
今この時間に感謝しよう、そんなことを考えながら料理に向かって両手をあわせた。
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