物置小屋

黒蝶

文字の大きさ
1,803 / 1,897
物語の欠片

『童話売りの魔女』第2話候補

しおりを挟む
目の前には、小さな男の子。
「あなたは一体...」
男の子は寂しそうに笑っていた。
私は遠ざかっていく背中を追いかける。
「お願い、待って!」
袖を掴もうとしたとき、視界がぼやけてきて...
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「...の」
何か声がしたような気がして、重い瞼をあげる。
「あの、大丈夫...?」
ぱっと目を開けると、見たことがない黒髪の少女がいた。
「ようやく、気づいた...」
「あの、ここは?」
「私の、家」
(いや、それは見ればなんとなく分かるんだけど...)
たしかバイト帰りだったはずなのに、どういう状況なのか全く呑みこめない。
「あなたは誰?」
「私は、童話の魔女」
『童話の魔女』。噂に聞いてないわけではなかったが、演技か何かだと思った。
「童話の魔女さんが、どうして...」
「クロエで、いい。あなたに、童話を見せたがっている人がいる。あなたは無理矢理物語に引きずりこまれただけ。それを、私が助けた」
(本物の魔女なんだ...)
言葉を聞いただけで、なんとなく本当なのではないかという気がした。
「しばらくは、童話にひきこまれやすいかもしれない。でも...」
「でも?」
クロエは真っ直ぐ私を見て、小さな声で一息に言った。
「ちゃんと、王子様を思い出して」
「王子、様...?」
私は何かを忘れているのかもしれない。
「今日はもう帰った方がいい」
「また来ていいの?」
「勿論。待ってる。私も...彼も」
その言葉の意味を、そのときの私は理解しきれていなかった。
帰り道、待ってると言ったクロエのことを思い出す。
(本当に吃驚するくらい不思議な体験だったな...)
魔女だということはさておき、仲良くしてみたいと思った。
私には、友人がいないに等しいからだろうか。
それとも...あの寂しそうな瞳が気になっているからだろうか。
(取り敢えず家に帰ろう)
月光が照らす道をただ歩く。
『彩葉』
どこかで、優しく名前を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
半分ミステリーなのですが、この時点では謎がまだまだ多いと思います。
連載するかはさておき、もう少し書いてみようと思います。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

処理中です...