物置小屋

黒蝶

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1人向け・慰め系

誰かの力になりたくて。(『誰かのヒーローになれたなら。』の続きです)

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おはようございます。
もう朝食の準備は整っているので、今日はそれから着替えを買いに行きましょう。
...一応洗濯はしておいたけど、もう古くなってるから新しいものを買った方がいい。
勝手に捨てたりしないから、好きな服を買ってください。
不思議そうな顔をしているけど、もしかして洋服売り場に行ったことがない?
...大丈夫、俺もついていけるところまでは一緒に行くから。
食べるのはゆっくりで構いません。
その様子では、学校にもあまり行ったことがないのでしょう?
...一体何年軟禁状態だったんだか。年は?20...あなたが嘘つきではないことは、見ていれば分かります。
ただ、それならもっと健康になるように食事はしっかり摂った方がいい。...どう考えても細すぎる。
食べ終わりましたか?しっかり食べられたようでよかったです。
それでは行きましょうか。...ん?お願い、ですか?
僕にできることならやりますよ。
...分かりました。今度こそ行きましょう。


まさか手を繋いでほしいなんて言われるとは思ってなかった。
嫌という訳ではないけど...もっと俺を警戒した方がいいかもしれないよ?俺は、とても悪い奴だから。
よし、このお店にしましょう。
ここだったら雑貨もあるし、あなたがいいと思ったものをこのかごに入れてくれればいい。
遠慮なんかしなくていいから、一緒に回ろう。
...すみません、彼女の洋服を何着か揃えたいのですが...。
それから、男の僕が彼女の下着を選ぶわけにはいきませんのでお願いします。
大丈夫です、ここでかごを持って待ってますから。

さっき目で追ってたぬいぐるみが欲しいと思ったんだろうな...。
すみません、この文房具一式とぬいぐるみをプレゼント用で包んでいただけますか?
彼女に内緒で用意して驚かせたいので、先にこれだけお会計をお願いします。ありがとうございます。
着替え終わりましたか?...可愛い。よく似合っています。
すみません、これはそのまま着ていくのでタグを切っていただいても構いませんか?
他のものは少しこの辺を見てから取りに来ます。
それから...先に会計をお願いします。
ご丁寧にどうも。それではまた後程。

着替えて疲れた?それとも、人混みが苦手?
...申し訳ないなんて思う必要はない。
俺がやりたいからやってるだけだし、俺もある人に助けてもらったから今があるんだ。
買い物が終わったら何か食べて...どうかしましたか?
手が震えてる...もしかして、あれが君が逃げ出してきた家の人間たち?
...こっち。嫌だと思うけど、今だけは俺を信じて隠れてて。
すぐ戻るから待ってること。大丈夫、服をとってくるだけだから。

連れ戻しそうな様子はないが...あの男児もあの家の子どもなのか。
ただ、彼女と違って傷はなさそうだ。
ストレス発散に使うのは1人で充分ということか、あの子だけ血が繋がっていないのか...。
すみません、洋服は仕上がりましたか?ありがとうございます。
聞きたいこと?...いいえ。彼女は僕の依頼人ではありません。
ただ、個人的な感情で拾っただけです。
未来がどうなるかは分かりませんが、不足の事態に備えて今あそこにいる家族についての情報を集めてください。
...彼女はあいつらの家から逃げ出してきたようなので、至急調べていただきたいのです。
この前はあなたの依頼人の駆け落ちを手伝ったでしょう?...あれ以上に悲惨な家庭環境だった可能性があります。
どうか今回は僕に協力してください。...ありがとうございます。
それでは、情報が集まり次第連絡を。

お待たせしました。
これが洋服、これは...家に帰ってからのお楽しみです。
あの場所はもうあなたが帰ってもいい場所だから。
あなたが出ていきたいときに出ていっていいから。
俺は閉じこめるつもりはない。
ただ、俺の近くにいる間は何があっても絶対に護るから。
...おいで。一緒に帰ろう。
それから何か温かいものを作るから、ご飯を食べてゆっくり休もうか。


やっと着いた...予想外にバスが混んでましたね。
それ、開けてみてください。
...そんなに可愛いのを俺が使うわけないでしょ、それは全部あなたのものです。
泣き虫だな...ほら、涙が止まるまでまたこうして抱きしめてるから好きなだけ泣いていい。
痛いし辛いし怖かったよね。
...大丈夫、俺が絶対に護るから。

涙、止まりましたね。仕込みは朝のうちにばっちりしておいたので、このまますぐ完成させます。
...その前に、包帯を換えましょうか。
滲みるのは苦手?分かった、それなら早く済ませるようにする。
これでよし。少しでもよくなるといいけど...。
そんなに気にしなくても、これが俺にとっての普通だから。
それから、今日からそこがあなたの部屋です。
昨日片づけたからそこまで汚れてない...はず。
さっき買ったものも全部まとめておいたから、タンスなりクローゼットなりは自由に使って。
それから、何かあったらそこの部屋に来ること。
...俺は大抵そこにいるから。
ある程度片づけたらご飯にしよう。

できましたよ...って、食器を並べてくれたのか、ありがとう。
カレーなんて久しぶりに作ったから、もしかすると美味しくないかもしれないけど...美味しい?それならよかった。
これからそうやって沢山笑っていられる道を探せばいい。
俺もできる限りのことはするから。
ご飯、おかわりもあるからもっと食べていい。
まさか誰かと食事をとる日がまたくるなんて思ってなかったけど...やっぱり悪くない。
いえ、なんでもありません。それより、冷めないうちに食べてしまおう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『誰かのヒーローになれたなら。』の続きです。
全ての人を救えると言えるほどの強さはないけれど、周りのちょっとした人たちに手を差し伸べられたら...なんて思うのは、間違いでしょうか。
少しごちゃごちゃしてしまいましたが綴ってみました。
今のところ便利屋のお仕事については詳しく話さない彼ですが、いつか話す日がきてしまうのかもしれません。
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