物置小屋

黒蝶

文字の大きさ
427 / 1,897
1人向け・慰め系

ふたりで(失声症の恋人)

しおりを挟む
お疲れ様。次の駅で一旦降りようか。そろそろ着くよ。
手、しっかり繋いでてね。…わ、え!?
まさかこんなに人が多いとは…。それに、どこ行ったか分からなくなっちゃった。
連絡しようにもスマホの充電切れそうだって言ってたし、向こうから連絡がくるのを待った方がいいかな?
…きた。もしもし、大丈夫?今どこあたりにいるか、カメラで写してくれる?
もう出口付近まで来てるんだね。パン屋さんの看板と本屋さん、あとは…どうしたの?
『ごめんなさい。手を離してしまって…』…いいんだよ。気にしないで。
ビデオ通話だと君の言葉をちゃんと受け止められるから嬉しいな。
もう少しつないでいられそう?絶対に迎えに行くから待ってて。
そっちも結構人が多いんだね…。え、どうしたの?もしもし?…切れた。
充電切れかな?だけど、さっき後ろから沢山人が近づいてたような…とにかく急がないと。


いた。…おい、俺の女に気安くさわるな。
それに、これだけ嫌がられてるのに近づくとかストーカーかよ。
あんたらが誰かなんて知らないしどうでもいいけど、これ以上彼女を怖がらせるつもりなら容赦しない。…失せろ。
大丈夫、じゃないよね…遅くなってごめん。怖かったよね。
声が出ないのをいいことにぐいぐい迫ったり小馬鹿にしたり、そういう奴って本当に最低だと思う。
無理しないで。手、震えてる。
もう大丈夫だよ。今度こそ離さないから。

…落ち着いた?『ごめん』なんて言う必要ないんだよ。
今日はもう疲れたでしょ?そろそろ帰ろうか。
『行きたいところがあるんじゃなかったの?』…今日じゃなくてもいいから今度にするよ。
『私ならもう大丈夫だから、今から行こう』…俺が嫌なんだ。
君を不安にさせたくないし、早くふたりになりたい。
可愛い君のことを独り占めしたい…なんて言ったら、びっくりさせちゃうかな?
あれ、照れてる?…そういう可愛い顔されたら、俺まで恥ずかしくなってきちゃった。
やっぱり今日はもう帰ろう。また今度一緒に出かけようね。
できれば、もう少し人が少ないときに。
そうすれば君が怖い思いをすることはないだろうし、きっとふたりで楽しい時間を過ごせるから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
久しぶりに失声症の恋人で綴ってみました。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

処理中です...