物置小屋

１人向け・イベント系

やめるときも(失声症)

久しぶりの植物園、楽しかったね。
大丈夫？疲れてない？…それならよかった。
何か気になってるみたいだけど、どうしたの？
『雨がふ──』わ、雨だ！走れる？
あそこに何か建物があるから休ませてもらおう。


こんばんは…誰もいないみたいだね。
随分古い教会みたい。こういう場所、あんまり来たことないけど…すごく綺麗だ。
君は？こういうところに来た経験、あんまりないんじゃない？
どうしたの？困った顔して…あ、メモ帳がびしょびしょに…。電子メモ、電池切れで置いてきたって言ってたもんね。
これ使って。ちょこちょこ書いてあるけど、このページ以降は真っ白だから。
『ごめんなさい』…謝らないで。雨が降ってきたのは君のせいじゃないでしょ？
…ねえ、今ここで勝手に誓ってもいい？
首を傾げてるところも可愛いけど…俺はやっぱり、君の笑顔が好きだ。
優しいところも、楽しそうにしているところも…あと、俺と一緒にいてくれるところも。
たとえ君がこれから先ずっと人前で声を出せなかったとしても、ずっと側にいたい。
…君が生きるのをやめてふたりで消えるか、お互いしわしわになるまで一緒にいてほしいんだ。
だから、その…いつか、こういう場所で愛を誓ってくれない？
…ごめん、なんだかぐだぐだだ。やっぱりちゃんと考えて言わないと…わっ、いきなりどうしたの？
そんなに強く抱きつかれるとどきどきするよ。
『いつかふたりで、こういう素敵な場所で式をしてみたい』…本当？ありがとう。すごく嬉しい。
それじゃあ、えっと…これからもよろしく。
やっぱり緊張して、上手く言葉にできないや。
もう少し小降りになったらバス停まで走ろうか。
今日、君に決意だけでも伝えられてよかった。
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プロポーズもどきの話にしてみました。