物置小屋

１人向け・other

さいごのお茶会(優しい死神)

…ふう。酷い目に遭った。魂がどうなるか見届けることはできなかったけど、あと5分ってところか。…次はここだ。
こんばんは。そんなに死に急がなくてもいいんじゃない？
だって、君はあと1時間で死ぬから。
取り敢えず…右手で持ってるカミソリ、おいてくれない？
ねえ、何かやりたいことはない？俺にできることならなんでもやるよ。
俺は死神。だから、君の寿命が短くなったことを知らせにきた。
…変？そうかもしれない。死んだところを回収していくのが正解なんだと思う。
だけど俺は、事前に知っておけば少しでも悔いを減らせるだろうと思って知らせてる。
さっきご老人のところに行ったときは、死にたくない、あっちいけって追い出されちゃったけどね。
…紅茶？君が望むならごちそうになろうかな。
それだけでいいの？…そう。
君は、こんなささやかな幸せを望んだんだね。
それさえ手に入らない環境…だから震える手でカミソリを持っていたんでしょ？
それに、今の君はとても安心しきった顔をしている。
心がすり減って、疲れていたんだろうってことくらい分かるよ。
だからせめて、さいごくらいお茶を楽しむ権利はあるんじゃないかな？
そこに俺がくわわっていいのか分からないけど…。
何か望みはある？…その子を連れていきたいの？
ぬいぐるみは雑貨って扱いになるから、全然構わないよ。
…そろそろ時間だ。他はもうない？
お礼を言われるようなことはしてないよ。今から君をこの世界から連れ出すんだから。
…もう行こう。もう二度と、君は怖い思いをすることはない。

最近仕事多いな…。まあ、別にいいけど。
でも、どうして俺のことを怖がらない人間がいるんだろう。
人間は誰だって死にたくない…本にはそう書かれていたのに。
…今回の子も、ちゃんと救われるといいな、
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優しい死神の話を綴るのに、若干はまってしまっている自分がいます。