物置小屋

１人向け・慰め系

幸福の雨(優しい死神)

こんばんは。突然で申し訳ないけど、君の命はあと1時間で終わります。何かやり残したことがあるなら…。
その前に移動した方がよさそうだ。歩ける？
よかったらこれを使って。僕は濡れても平気だから、この傘を持ってて。
…会いたい人？…流石に死んだ相手に会わせるのは難しい。
だけど、君が強く願うなら奇跡をおこせるかもしれない。
ここにいた子猫の世話、君がひとりでやっていたんでしょ？…資料で読んだ。
心の支えがなくなったところで、いきなりこんなことを言われても困るのは分かってる。
だけど、ここに眠る子猫はきっと幸せな時間を過ごせたんじゃないかな。
君がいたからひとりじゃなかった。…だから、そんなに不安がる必要はない。
余計なお世話だったかとか、そういうことを思わなくていいと思う。
…子猫はきっと君を元気づけたかったんだ。
なんとなくそんな気がする。
君自身がやり残したことはもうないの？
写真…成程。この写真を持っていきたいと。
大丈夫、余程のことがなければ申請は通るよ。
カメラも持っていけるし、これからは君が撮りたいものを撮ればいい。
…それが叶うように祈ってるから。


…向こうで再会できたかな。
僕にできるのはこんなことくらいだけど、雨の日も気にかけてくれた少女が心配だなんて…あの子猫も優しい。
ふたりの心が冷えることはもうないだろう。
…偶然同時期に寿命が尽きたふたりが、雨のなかでも楽しく笑っていられますように。
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優しい死神の話にしました。