物置小屋

１人向け・慰め系

雨と流れてしまえば(優しい死神)

こんばんは。突然だけど、君の寿命はあと1時間で尽きます。もしやり残したことがあるなら…。
ああ、そういう他人を害する計画はおすすめしない。
その手は誰かの孤独を包みこむ、優しい手であってほしいから。
…僕は天使じゃない。ただの死神です。
会いたい人がいるんでしょ？だったら、その人に血に塗れた手を見せなくてすんだ方がいい。
恋人さんが事故で亡くなって、気持ちの整理がついていないところに自分の体調不良が重なって…。
周囲からは人として扱われなかったんだね。
だから心に孤独を抱えて、誰かを救えても自分はずっと闇の底にいる顔をしている。
なんとなく分かるんだ、そういうの。
君は自分が救われようとは微塵も思っていないように見える。
…本当に恋人さんのことが大切だったんだね。
だから今も、恋人さんを間接的に死に追いやった人物に同じ思いをさせてやろうと思ったんでしょ？
…調べてきたから少しは知ってる。
君の恋人さんは遊び半分で突き飛ばされたんだよね？その先にあるのがたまたま道路で、いきなりのことで対処しきれなかった恋人さんはバランスを崩して、そのまま…。
突き飛ばした相手は権力者だから、君が見た光景を伝えても誰も調べてくれなかった。…それなら自分で復讐すればいいと思った。
やっぱりおすすめできない。
敵討ちは生き残った人間たちのエゴでできている。
そんなことをしても、失われた命も心の虚しさも消えない。
…それに、恋人さんとの時間が幸せだったなら、もう一度それを手にできた方がずっと素敵なことなんじゃないかな。
恋人さんが君を待っているはずだし。…そろそろ時間だけど、どうする？まだやるつもり？
それがいい。そのまま真っ直ぐ進んで。その光の先に君が望んだものがあるはずだから。

…今回の仕事はこれで終わり。
土砂降りになったな…。願わくば、この雨が彼女の罪悪感を流してくれますように。
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優しい死神の話にしてみました。