物置小屋

１人向け・other

さいごの悪戯(ハロウィン)

こんばんは。突然だけど、君の寿命はあと1時間で尽きます。
まだやり残したことがあるなら、今のうちにやっておいた方がいい。
欲しいもの？非現実的なものじゃなければ用意できるけど…便箋？こういうのでいいなら。
手伝えって、何を？これを僕がつけるの？…分かった。それが君の望みなら。

君も泣かないんだね。僕を見て恐れたり、追い出そうとしたり…そういう人間の方が多いのに。
もう、どうでもよかった？それなのにお菓子作りはしたいのか。…不思議だな。
まるで、まだやりたいことがあったと言っているように見える。
君がどんな人生を送ってきたかは書類で読んだ。
事故で両親を亡くし、大切に育ててくれた養母は病死。
その後、様々な場所を転々としながらひとりで生きてきた。
…幸せにしたい相手がいたんじゃないの？
疫病神？君みたいに誰かを気遣える人が？
僕からすれば、その周りの人間とやらの方が何百倍も恐ろしい。
悪意を悪意と思わずに向け、平然と他者の心を踏み荒らす。それのどこが怖くないんだ。
ハロウィン…10月31日のことか。
その日の約束を守るのが君のやり残したことだったんだね。
お菓子交換をするものなの？…もう少し遅く迎えに来られたらよかったんだけど、無理なんだ。
もうやり残したことはない？…これ、さっきのとは別のお菓子？
僕が食べていいの？ありがとう。
…そろそろ時間だ。行こうか。

本来は告知するのも禁止だけど、彼女が少しでも救われたなら意味があったと思える。
いつものことながら、僕を受け入れる人間っていうのは変わっているな。
願わくば、ふたりでお菓子を分け合う日がきますように。
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優しい死神シリーズにしました。