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第3章『迷子』
第14話
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「お姉さん、できたよ!」
個室に戻った瞬間、ひまりちゃんはにこにこしながら画用紙を見せてくれた。
「お兄さんですか?」
「うん!お兄ちゃん、喜んでくれるかな…」
これから彼女に残酷な問いかけをしなければならないと思うと辛くなる。
動揺する私の隣で、氷雨君はいつもどおりの笑顔で話しかけた。
「お客様、この列車がどこに向かっているか分かりますか?」
「分かりません。どこ行きなの?」
「黄泉行きです」
「よみってなあに?」
「…あの世とか、天国という言い方をすれば分かりやすいですか?」
ひまりちゃんが驚いてしまうのではないかと思ったけど、寧ろ明るい笑顔で尋ねられる。
「天国ってことは、もう痛いことされないってこと?」
「そういうことになります」
「よかった…。おにいちゃんももう痛くないんだね」
その言葉に胸が締めつけられる。
氷雨君が話してくれたとおりだったんだとそこで納得した。
──淡々と事実を告げられた私は、その場で凍りついた。
「それじゃあ、ふたりは虐待で死んでしまったってこと?」
「正確に言えば兄の方はもう亡くなってる。ただし、如月ひまりは…」
「この列車は間もなく天国に到着します。ですが、あなたはまだ天国に行かずに戻ることができます」
「怖いところに、戻るの?」
「あなた次第です。どうしたいですか?」
こんなに幼い子に、兄と会えない生き地獄か現実を捨てて死ぬか選んでもらわないといけないなんて辛い。
だけど、1番辛いのはひまりちゃん自身のはずだ。
「ひまはもう、怖いところに行きたくない…」
「もう戻ることはできませんが、それでよろしいのですか?」
「おにいちゃんが一緒なら平気だよ」
「かしこまりました。それでは、」
《ひまり!》
氷雨君の言葉を遮るように列車の下り口に現れたのは、ひまりちゃんがずっと探していた人物だ。
「おにいちゃん!」
ふたりは近づくけれど、お兄さんは敢えて触れないようにしているように見える。
《俺はもう帰れないけど、ひまりは生きて幸せに…》
「やだ!おにいちゃんと一緒がいい!」
氷雨君が見つけた記事によると、お兄さんは小学生で毎日周りの大人たちに助けを求めていたらしい。
それが行政まで伝わらず、そのまま亡くなってしまったようだ。
「ひま、おにいちゃんが一緒ならどんなことも我慢する。だからおいていかないで……」
泣いている妹の涙をそっと拭う兄。
彼は私たちを見て、申し訳なさそうに尋ねた。
《ひまりを…妹を、連れて行ってもいいですか?》
「勿論です。本人様もそれをお望みのようですから」
「おにいちゃん、これ…」
さっき書いた手紙を、小さな手で差し出す。
それを両手で受け取ったお兄さんは、ただ微笑んでいた。
普通に見ていれば、仲良し兄妹のほのぼのとした日常のワンシーンだ。
…そうじゃないことは、この場にいる私たちだけが知っている。
個室に戻った瞬間、ひまりちゃんはにこにこしながら画用紙を見せてくれた。
「お兄さんですか?」
「うん!お兄ちゃん、喜んでくれるかな…」
これから彼女に残酷な問いかけをしなければならないと思うと辛くなる。
動揺する私の隣で、氷雨君はいつもどおりの笑顔で話しかけた。
「お客様、この列車がどこに向かっているか分かりますか?」
「分かりません。どこ行きなの?」
「黄泉行きです」
「よみってなあに?」
「…あの世とか、天国という言い方をすれば分かりやすいですか?」
ひまりちゃんが驚いてしまうのではないかと思ったけど、寧ろ明るい笑顔で尋ねられる。
「天国ってことは、もう痛いことされないってこと?」
「そういうことになります」
「よかった…。おにいちゃんももう痛くないんだね」
その言葉に胸が締めつけられる。
氷雨君が話してくれたとおりだったんだとそこで納得した。
──淡々と事実を告げられた私は、その場で凍りついた。
「それじゃあ、ふたりは虐待で死んでしまったってこと?」
「正確に言えば兄の方はもう亡くなってる。ただし、如月ひまりは…」
「この列車は間もなく天国に到着します。ですが、あなたはまだ天国に行かずに戻ることができます」
「怖いところに、戻るの?」
「あなた次第です。どうしたいですか?」
こんなに幼い子に、兄と会えない生き地獄か現実を捨てて死ぬか選んでもらわないといけないなんて辛い。
だけど、1番辛いのはひまりちゃん自身のはずだ。
「ひまはもう、怖いところに行きたくない…」
「もう戻ることはできませんが、それでよろしいのですか?」
「おにいちゃんが一緒なら平気だよ」
「かしこまりました。それでは、」
《ひまり!》
氷雨君の言葉を遮るように列車の下り口に現れたのは、ひまりちゃんがずっと探していた人物だ。
「おにいちゃん!」
ふたりは近づくけれど、お兄さんは敢えて触れないようにしているように見える。
《俺はもう帰れないけど、ひまりは生きて幸せに…》
「やだ!おにいちゃんと一緒がいい!」
氷雨君が見つけた記事によると、お兄さんは小学生で毎日周りの大人たちに助けを求めていたらしい。
それが行政まで伝わらず、そのまま亡くなってしまったようだ。
「ひま、おにいちゃんが一緒ならどんなことも我慢する。だからおいていかないで……」
泣いている妹の涙をそっと拭う兄。
彼は私たちを見て、申し訳なさそうに尋ねた。
《ひまりを…妹を、連れて行ってもいいですか?》
「勿論です。本人様もそれをお望みのようですから」
「おにいちゃん、これ…」
さっき書いた手紙を、小さな手で差し出す。
それを両手で受け取ったお兄さんは、ただ微笑んでいた。
普通に見ていれば、仲良し兄妹のほのぼのとした日常のワンシーンだ。
…そうじゃないことは、この場にいる私たちだけが知っている。
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