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第10章『願い』
第53話
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はっと気づいたとき、人形が頭を抱えて座りこんでいた。
首に巻きついていた髪の毛はもうなくなっている。
「……苦しかった、よね。大切な人、護れなくて…」
じじじと耳元で音がして、氷雨君の声が耳に届く。
『…聞こえていたら返事して』
「この子、悪い子じゃない」
『どういうこと?どうしていきなり…』
「虐待死、熱中症、暴行死…どれか分からないけど、本日のお客様にはるかっていう女の子がいないか探してほしい。
多分、私たちより少し年下だと思う。それ以上のことは分からないけど…」
人形はじっと私を見る。
その視線が少し怖かったけど、構わず話を続けた。
「急にこんなことを言っても困らせちゃうと思うけど、お願い」
『…分かった』
氷雨君は何も言わずに紙の資料を見てくれている。
その間、目の前の人形に声をかけた。
「あなたはただ、遥さんに会いたかったんですよね?」
《遥ちゃん、いるの…?》
「今探してもらっています。お茶、飲めますか?」
《…ありがとう》
少女の名前を出したことにより、かなり落ち着いたらしい。
人形は正座してお茶を飲みはじめた。
「い、いかがですか?」
《美味しい…。遥ちゃんにも飲ませてあげたかった》
冷たいものが必要だということは、彼女も分かっていたのだろう。
だから必死に助けを呼んで、持ち主の少女を救おうとした。
だけど、人形の声が届くことはなかったのだ。
「お客様には、大切な人がいるんですよね?」
《…遥ちゃんには、私の声が届いていなかった》
「それでも、大切に想う気持ちは変わりません」
《…おはなし、できるかしら》
「きっとできます」
人形の原動力が少女の想いからできているのなら、きっと話すことだってできるはずだ。
今の少女は死者なわけだから、余計にそうである可能性が高い。
私にできるのはこうして話を聞くくらいだけど、人形はこれからも少女と一緒にいられるはずだ。
「失礼します」
しばらく人形と話していると、いつものように笑顔の氷雨君とさっき夢で見た少女が歩いてくる。
お茶を飲む人形の姿を見て、少女はただ驚いていた。
《こと、ちゃん…?》
《遥ちゃん?もう苦しくない?》
《うん!もう痛くないよ。そっか、私本当に死んじゃったんだ…》
少女は人形を抱きしめ、柔らかい髪を撫でている。
やっぱり彼女に攻撃の意思はもうない。
《ことちゃんと沢山おはなしできるなら、私もう寂しくないよ》
《私も、一緒に行っていいの?》
《勿論!》
ふたりが抱き合って喜ぶ姿にほっとする。
駅に辿り着くまで、一緒にお茶を飲んで楽しんでいた。
首に巻きついていた髪の毛はもうなくなっている。
「……苦しかった、よね。大切な人、護れなくて…」
じじじと耳元で音がして、氷雨君の声が耳に届く。
『…聞こえていたら返事して』
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『どういうこと?どうしていきなり…』
「虐待死、熱中症、暴行死…どれか分からないけど、本日のお客様にはるかっていう女の子がいないか探してほしい。
多分、私たちより少し年下だと思う。それ以上のことは分からないけど…」
人形はじっと私を見る。
その視線が少し怖かったけど、構わず話を続けた。
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『…分かった』
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その間、目の前の人形に声をかけた。
「あなたはただ、遥さんに会いたかったんですよね?」
《遥ちゃん、いるの…?》
「今探してもらっています。お茶、飲めますか?」
《…ありがとう》
少女の名前を出したことにより、かなり落ち着いたらしい。
人形は正座してお茶を飲みはじめた。
「い、いかがですか?」
《美味しい…。遥ちゃんにも飲ませてあげたかった》
冷たいものが必要だということは、彼女も分かっていたのだろう。
だから必死に助けを呼んで、持ち主の少女を救おうとした。
だけど、人形の声が届くことはなかったのだ。
「お客様には、大切な人がいるんですよね?」
《…遥ちゃんには、私の声が届いていなかった》
「それでも、大切に想う気持ちは変わりません」
《…おはなし、できるかしら》
「きっとできます」
人形の原動力が少女の想いからできているのなら、きっと話すことだってできるはずだ。
今の少女は死者なわけだから、余計にそうである可能性が高い。
私にできるのはこうして話を聞くくらいだけど、人形はこれからも少女と一緒にいられるはずだ。
「失礼します」
しばらく人形と話していると、いつものように笑顔の氷雨君とさっき夢で見た少女が歩いてくる。
お茶を飲む人形の姿を見て、少女はただ驚いていた。
《こと、ちゃん…?》
《遥ちゃん?もう苦しくない?》
《うん!もう痛くないよ。そっか、私本当に死んじゃったんだ…》
少女は人形を抱きしめ、柔らかい髪を撫でている。
やっぱり彼女に攻撃の意思はもうない。
《ことちゃんと沢山おはなしできるなら、私もう寂しくないよ》
《私も、一緒に行っていいの?》
《勿論!》
ふたりが抱き合って喜ぶ姿にほっとする。
駅に辿り着くまで、一緒にお茶を飲んで楽しんでいた。
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