皓皓、天翔ける

黒蝶

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第33章『かくしん』

第196話

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「ごめんなさい。私ひとりじゃできることが少なくて…助かりました」
「僕は大丈夫だから顔をあげて。それにしても、リーダーが体調不良なんて珍しいな…」
息苦しそうにしている氷雨君を前に、私は何もできない。
いつもは完璧そうなのに、今はただ弱っているように見える。
「今夜は休憩室で休んでもらおう」
「そうですね」
心配だけど、ひとりで置いていくよりはいいはずだ。
気持ちを切り替えて、今夜のお客様の資料を読む。
「氷空ちゃんが来てくれて、本当に助かってるんだ」
突然矢田さんにそんな言葉をかけられて、どんな反応をすればいいか分からなくなる。
「雪…長田のこともだけど、休まずがむしゃらに働きづめだったリーダーが休憩をとるようになったんだ」
「氷雨君、休んでなかったんですか?」
「うん。何度か過労で倒れたこともあったし、自分ひとりでケリをつけようとしてた」
たしかに言っ休んでいるんだろうとは思っていたけど、そこまでスケジュールいっぱい働いていたなんて知らなかった。
「今は休んでいるんですか?」
「多少はね。氷空ちゃんに休めって言えなくなるからって…。あと、人と会話する機会を増やしているように見えるんだ。
前は業務連絡しかしなかったのに、君のことになると色々話してくれる」
「私の話、ですか?」
「うん。真面目で働きものだから様子を見ていてほしいとか、怪我したときに心配したりとか…人らしい部分を見られる気がする」
私が知らない氷雨君はどんな感じだったんだろう。
それを知るのは難しいだろうけど、とにかく今は休んでほしい。
それから…全然興味がないんだと思っていたから、私の話ってどんなことを言っていたのか気になる。
「そろそろ時間だ。リーダーは僕が運ぶから、氷空ちゃんはお客様のところに行って。薬は飲ませておくから」
「わ、分かりました」
氷雨君がいないなか接客するのは初めてだ。
どこまでできるか分からないけどやってみよう。
そう決心して、お客様の前に立つ。
その男性はずっとマスクをしていて、全然外す気配がなかった。
「こ、こんばんは。飲み物はいかがですか?」
《いりません》
「でしたら、何かお召しあがりに、」
《いりません》
取り付く島もない。
どうしようか迷っていると、男性のお腹が鳴った。
「お金のこととか、そういうことは考えなくていいので、その…何か召しあがってください」
《すみません。僕、人前でマスクを外せなくて…》
「そうでしたか。でしたら、カーテンをお持ちします。私も覗かないのでご安心ください」
緊張して一気に話してしまったけど、男性はやっと口を開いた。
《ラーメンが食べたいです。飲み物は…烏龍茶の冷たいやつ》
「かしこまりました。少々お待ちください」
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