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肆、「敵」の姿
しおりを挟む今日のチャットで僕は憤りを感じた。
事件の怪しいところより、しのぶさん、いや、あの女のほうがよっぽど怪しいのだ。
僕に拘りもなく、学校の友だちの身元を調べたりして、付き合っていいかどうかまで口に出してしまうって、何様のつもりだ?
ちょうどお坊さんのところに行く日だったので、紹介者に文句を言った。
「あのさ、お坊さん昨日、紹介してくれたあの警察のお偉いさんと会いましたよ。」
「どうだ?あの容姿、一目惚れしたんだろう?」
「いや、それじゃなくて、仕事の話ならわかるけど、勝手に...」僕の右腕に針が刺さった痛みがジーンと来たて、話の腰が折られた。「ちょっといつもより痛いですよ、お坊さん。」
「あーーあ、ごめんごめん」お坊さんがアフロヘアを搔き分けて、もう一本の銀針を引き出した。「それで、彼女は勝手に何をやった?」
「勝手にさ、僕の学校の友だちの個人情報を調べましたのよ。」今度は左腕に鋭い痛みを感じた。「スーーー、今日は手荒いですね。」
「アハハハ!やっぱごめんね。」お坊さんがアロハシャツのボタンを外し、マッサージベッドの隣にある椅子に腰を下ろした。「ちょっと一服するか?」
と言いながら、彼は胸のポケットからタバコとライターを取り出した。
胸、腹そして両腕のツボに銀針がいっぱい刺さっているため、僕は起きることができない。
「調べただけでないぞ。」僕は首を横にして、できるだけお坊さんの目を見て話そうとしたが、短パンから伸びている毛深い脛、足首に付けているGPSとビーチサンダルしか見えない。そして、タバコの煙も見える。「あの子が僕と付き合っていいって言うのですよ!!警察とはいえ、しのぶさんは僕のプライベートを干渉する権限はないよね。」
「今なんと呼んでいた?」
「こんな行為は、日本語にありますよね、専門用語が、えーと、そうだ、国家権力の濫用です!!」
「さっきあの女をなんと呼んでいた?」
「国家権力の濫用はすごい罪ですよね...」
「やーー、ちょっ、ちょっ、ハンサムちゃん、話を聞いて、さっきあの女の名前、何と呼んだ?」
「あ?スミレちゃん?」
「違う、あのかわいい子は学校の友達だろう?」お坊さんがタバコを指に挟んで、僕の顔に近づいてきた。「あの公安の女のことだ、彼女の名前をしっているのか?」
「はい、だって、名刺をくれましたよ。」
「おまえに名刺を渡したのか!?どこにある?持ってきた?」お坊さんはあまりにも驚いたようで、いつもつけている七色のサングラスまで外した。
「あっち、カバンの中に」僕は踏ん張って手を挙げ、指で荷物置きを指さした。
お坊さんは舌を打って僕のカバンを取ってきた。
「どこにある?......これか?観月しのぶ......チェッ、偽名かよ。」
お坊さんは名刺を持っている手の指を緩め、名刺がゆらゆらと裏返って床に落ちた。
あの紋章が見えた。
僕はただびっくりして何も言えなかったが、その紋章を見たお坊さんは再び名刺を手に取って、携帯を取り出した。
「何するの?無駄よ、スキャンしてもまだアクセス出来ません。」
「お前も知っているのか?この紋章にQRコードが隠されていること。」
「しのぶさんが教えてくれました。」
お坊さんは深くため息をして名を僕の枕元に置いた。
「やっぱり、君は重要だよ。」お坊さんは僕に背を向けて話した。「だから、あの女、しのぶさんがあれだけお前の身の回りを気にしている。」
お坊さんの顔は見えないが、タバコの煙と沈黙がふわりと立ち上り続けている。
なぜか、気まずくなってきた......
「話が変わりますが、最近テレビで他所の寺のお祓いを見ましたけど、お坊さんがやっていることと全然違うようですね。」
「あっ、は、はい?」
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5月29日、雨降りな日だった。
夜でもないのに、あたりが暗くて、村の道はさらに歩きにくくなっている。
二人の私服警察、王さんと劉さんが龍治民の家に来た。
街灯の光すら届かない、奥まった通りの古びた庭と窑洞だった。
この家全体が汚物浄化槽に浸っているようだ。
まだ数十メートル離れているのに、反吐を催す匂いが鼻の穴からしつこく忍び込んできた。
窑洞の扉を開けた後、室内の光景には二人ともさらに驚愕した。
部屋の床は凹凸ばっかり、窓にも泥が塗られており、光は全く通らない。
窑洞全体が日の光を見ない地下室のようだった。
角の屋根裏の階段は腐食されて形が崩れており、上には何らかの不明な汚れがあって、
乾いた血痕のように見えた。
家の中には、時間が止まったかのような静寂が漂っていた。
壁には文化大革命時代の賞状や麦わら帽子が掛けられており、歴史が感じられた。
階段を登り始めると、木の軋む音とともに空気が一変、何かの秘密に近づいていくようだった。
王さんは急に劉さんの袖を引っ張った。
「屋根裏に誰かいる。」
劉さんは耳を澄まし、確かに重くて急な呼吸の音が聞こえる。
「いるね、上は窓もなく逃げられないと思う。」
「そうだね。外からホシの仲間が着たら、我々が挟み撃ちをくらってしまうから、先に退路を確保しよう。」と王さんが言った。
二人はまたゆっくりと階段を降り、窑洞の扉が閉まらないように仕掛けようとした。
が、まさにその時、庭から人の罵声が聞こえてきた。
「おーーい、中のクソ野郎!!そう!お前のことだ!!マジで臭いわ、早く出てこない!!」
「やっぱり囲まれた!」王さんと劉さんは互いの顔を見て、阿吽の呼吸で合意した。
劉さんは扉を開けて外に出た。
王さんは扉の裏に身を隠し、屋根裏にいる正体不明な人が降りてくることを警戒しながら、外の様子に注目する。
必要な時に劉さんを応援するか、庭にいる連中に急襲を仕掛けることだって可能だ。
「お前か?龍治民はお前だな!」庭に立っている者は六人いるが、先頭に仁王立ちしている大男は声を荒らげて叫んでいる。「俺の弟をどこに隠した?早く言え!!」
大男は叫びながら手を伸ばし、劉さんの襟元をつかもうとした。
劉さんは横に一歩避け、「人違いだぞ、け...」と言ったにもかかわらず、大男はさらに大声で彼の話を遮った。
「嘘つくな!お前だよ、チビで四十代で間違いね!!」大男は後ろにいる者たちに合図を送り、みんなで劉さんを囲んだ。
劉さんは仕方なく応戦しようとしたその時、「バーーーン」と窑洞の扉が飛ばされてもう一人の男が勢いよく、庭に出てきた。
「警察だ!!動くな!!」
もちろん王さんだった。彼は身分証を見せ、劉さんにさしながら言った「彼もだ。」
「え!?警察?」大男は取り乱した。「龍治民は警察なの?」
「バカ!龍治民じゃないぞ。人違いだ。」隣の仲間が大男の耳元でささやいた。
「お前らは誰だ?」王さんが聞いた。
「俺は銀山という、姜銀山です。」
実は、彼の弟も失踪していた。
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