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アクア
しおりを挟む「フェル」
フェルと手を繋いでぼんやりと人を見てたら可愛らしい声がした。
顔を上げると目の前にいたのは、フェアリースクイズのヒロインであるアクアだった。
彼女はフェルの幼なじみであり、不治の病の持ち主でもあり、そして、邪神の贄に選ばれる。中々に不運なヒロイン。しかしフェルは彼女を守りながら騎士になる。
だからこそ会いたくなかった。だってフェルを取られてしまいそうで…
長い青の髪とブルーの瞳がとても綺麗で、ドレスも淡い水色でアクアによく似合ってる。
「フェル、こんばんは。あの、今夜のパーティでのダンスを一緒に踊ってくれないかな?」
「アクア。ごめん。キミの許嫁ではないから僕は踊れない」
「許嫁は関係ないわよ。ただのダンスだし…」
するとフェルは僕の腰を抱き寄せる。
「悪いけど、キミとは無理だから。ルナ。行こう」
「フェル…いいの?」
フェルは立ち上がり僕の手を引く。しかし空いた手を握られて、立ち止まってしまった。
「え?」
振り向くとアクアが僕の手を握ってた。
「ルナ。貴方本当に目障りね。平民の癖してフェルにいつも可愛がられて…」
アクアは怖い顔で僕を見る。ゲームの中の彼女は可愛らしいヒロインなのに今のアクアはただ恐ろしい。
「アクア!ルナを離して!ルナに八つ当たりしてもダメだ」
「なによフェルまで!!ルナ、貴方さえ居なかったらフェルは私を選んでくれるのよ!!」
「え?かはっ…!?」
「ルナ!!」
アクアが叫んだ瞬間、胸が苦しくなって座り込む。
「けほっ、けほっ…」
胸が締め付けられるように痛くて涙が溢れる。
「アクア何をした!!」
「ちょっとしたお仕置よ。平民が図に乗るから…」
「ぅぅ…けほっ、かはっ…ごほっ」
痛い……胸が痛い。息が上手くできない。
「お前、ルナは悪くないだろ!!」
フェルはアクアに怒鳴り僕を抱きしめてくれて魔法で癒してくれる。
「なんで…なんでその子に癒しの魔法なんて使うのよ!私にも使ってよ!私だって病を…」
「うるさい!!ルナ、大丈夫?苦しいね…」
「ぁっ…くっ…はぁ…」
フェルの魔法に癒されて胸の痛みが引いていく。
フェルは僕の胸に手を当てもう一度魔法を使う。
「なんで、なんで…そんな…フェルのばか!!」
アクアはそう言ってこの場からいなくなる。
「ふぇ…る…アクアが…」
「放っといていいよ。ルナを苦しめさせたんだから…」
フェルはそう言うと、魔法を止める。
「もう苦しくない?」
「大丈夫…ありがとう。フェル」
「よかった…ゆっくり休める場所に行こう」
「う、ん…」
横抱きで抱き上げられて、外に出る。夜風が気持ちいい。
「ここならゆっくりできるよ。人も来ないしさ」
庭にあるベンチに座る。
「胸、本当に大丈夫?苦しくない?」
「大丈夫。けどなんでいきなり発作が…」
「アクアのせいだよ」
「え?」
フェルは僕の頬を撫でる。
「アクアが魔力を急に強めたんだ。それにルナの体が反応してしまったから発作が出たんだよ」
「そうだったんだ……」
「通常は魔力の流れは一定なんだ。それを意図的に強めたりもできるけど、そんなことしたら周りにも影響が出るんだ。それをアクアがしたんだよ」
なんだろう…
アクアはヒロインなのに、この世界では悪役ぽい。
これもフェルが僕を選んだせいなのだろうか?
だけどフェルを手放すなんて出来ない。
「心配しないで。アクアの事は父上にも言うし、ルナにも近付けないようにするね」
「ありがとうフェル」
フェルは僕の首に顔を埋める。
「ぁ…だめ…」
チュッという音がして首を吸われた。
「やっぱり隠すのやめた。ルナは僕のものって見せつける」
「え!?ええ!?」
庭に僕の大きな声が響いたのだった。
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