迫害王子は義理の兄に愛される

償い sideフィア

私には弟がいた。とはいえ血の繋がりはなく、父がある日連れてきたのだ。

王族にはよくある話だ。長男しか居ない場合スペアとしてオメガの子を使うのは。

ただオメガの子が宮中に上がることは殆どない。彼らは表向き、スペアだが本当は性奴隷にされるのが運命だ。

だから私の弟も十六歳になると性奴隷にされ、貴族の相手をさせられていた。

私はそれを止めようとしたが父上に、あの子の仕事だと言われた。

だから私は成人でもある十八歳の誕生日にあの子、マナを助けようと思った。

友人のアランとナハトにも手伝って貰い囁かな誕生日パーティをしようと…

しかし私が部屋に呼びに行くとマナは自分の首をナイフで刺した。

慌てて駆け寄ったが、マナの体は冷たくなった。

そしてその後アランから、マナが貴族によって発情期を強制的に起こされ番にされたこと。

そしてその番を解除されたこと。

最後にマナのお腹には誰の子かも分からない子が宿っていた事を聞かされた。

私は涙が止まらなかった。あと少しで幸せになれたのに、全て貴族と父上が奪った。それを私は止めることも出来なかった。

「マナ…」

私はマナの亡骸を抱きしめる。

この子は何も悪くないのに虐げられた。そして私達は三人とも同じ願いを口にした。

戻りたいと…

マナに出会う日に戻りたいと…そう願った瞬間、ぐわりと世界が歪み、気を失った。


次に目を覚ますと私は王城の自分の部屋にいた。

そして鏡を見て驚いた。

「幼くなっているだと…」

私の姿は十四歳ぐらいになっていた。

慌てて日付を見れば、十年前で…しかもマナに出会う前日の日だったのだ。

どうやら私は、タイムスリップというのをしたらしい。

何故したのかは分からないが…とりあえずこれは好都合だ。

これならマナを救い出せる。

そう思っていたら扉が開き、幼いアランとナハトが入って来て驚いた。

どうやら二人もタイムスリップしたらしい。

そして私達はマナを助ける作戦を考える。

「無難に、来た時に奪えば良くないか？」

「まぁそれが一番ですね」

「確かにな」

とりあえず父上の手から離してしまえば後は何とかなる。

私は第一王子だ。それなりの権力はこの歳であるのだ。

「その後はナハトみたいに使用人にしたらいいだろ？」

「それが良いな。表向きの肩書きさえあれば後は何とかなる」

使用人というかマナの場合はお世話係だ。それなら誰も怪しまない。

とりあえずは明日、父上からマナを奪還する。そしてマナはそのまま私と暮らす。

父上も私が弟を溺愛していたら手は出せない。

「今度こそマナを幸せにする」

「そうだな！！」

「はい」

アランとナハトは頷き、そして私は次の日にマナを父上から奪ったのだ。