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キスのバリエーション
6【微】
「……く、くびと、みみ、は……あの、へ、変になるので……やめてください」
前回のキスを思い出して羞恥心で涙目になる。
あんな風に訳の分からなくなるキスは、困る。
ゆでダコみたいに真っ赤になった私を見下ろして、神尾君がしばし、沈黙した。
「──どこならいいですか」
律儀に許可を求める神尾君に、私はとっさに仮眠室で額に口付けられたときのことを思い出した。
あのくらいなら、きっと大丈夫。
「えっと、顔なら」
「顔」
小さく復唱して、わかりました、と神尾君が頷く。
視界が神尾でいっぱいになってしまう、一瞬。突っぱねた時のまま神尾君の胸に置いた自分の手が目に入った。
「あっ、やっぱり」
──手とか。
続けるはずだった言葉は、ちゅ、と額に落とされたリップ音に消えてしまった。
場所を変えて、今度はこめかみにくちづけされる。
押し当てられる唇の感触に、ぴく、と震えた私の肩を、神尾君の左手がそっと抑えた。
「ん」
頰に、瞼に、いくつも落とされるキスに頭がぼうっとする。
ふわふわした気持ちでキスを受け入れていると、篠瀬さん、と神尾君の声が囁いた。
「口にしてもいいですか」
「……え」
──口?
うまく働かない頭でぼんやりとその意味を考える。
口って、どこ。
与えられた時間は僅かだった。返事のない私にふと笑うような気配を残して、神尾君の唇が私の唇に重なる。
──え。
触れるだけの、短いキスだった。
ぽかんと見上げると、私の反応を確かめてから神尾君が再度顔を寄せてくる。
「う、ん」
ちゅ、ちゅ、と啄ばむようなキスを与えられて、私は身じろいだ。
無意識に逃れようとする顔に手を添えられて、さらにキスされる。
「か、かみおく、ん」
これは、だめなやつだ。
これまでキスされたどの場所よりもはっきりと神尾君の熱を感じる。
押し当てられ、柔らかく食まれ、その度に体が熱くなる。
ああだめだ。おかしい。キモチイイ。もっとしてほしい。
もう自分が何を考えているのかよく分からなくなって、私は無意識に手に触れていた神尾君の服にしがみついた。
その時。
ピピピ。とアラームが鳴り響いて、私はびく、と大きく体を震わせた。
「大丈夫」
アラームに驚いて固まる私をなだめるように、神尾君が私を抱きしめて背中をさする。
あやすように頭頂部にキスを落とすと、神尾君が片手でアラームを止めた。
「篠瀬さん」
いつまでも顔を上げない私に、心配そうな声が掛かる。
怯えていると思ったのかもしれないが、私の心中はそれどころではなかった。
アラームの存在を忘れるほどキスに夢中になっていたなんて。
その事実に動揺したのだ。
どんな顔をして神尾君を見たらいいのか分からない。
頑なにこわばっている私の体を抱き直して、神尾君が背中を撫でてくれる。
「びっくりしましたね」
よしよし、となだめられるうちに少しずつ落ち着いてきて、私は深く息をした。
そうなると今度はこの状況がひたすら恥ずかしい。
「神尾君」
呟くような小さな声に気がついて、神尾君が手を止める。
何ですか、と問うような沈黙に、私はおずおずと顔を上げた。
「私にも、モフモフをください……」
これが取引なら要求してもいいはずだ。
人間神尾君、よりも、モフの神尾君といたほうがきっと落ち着く。
渾身のお願いを聞き届けて、神尾君が何か言いたげに口を開いて──結局何も言わずに微笑んだ。
「はい」
いいですよ、と言った時にはもう、真っ白の美しい獣に姿を変えていて。
私は残りわずかになった昼休みの時間を、あったかくてふわふわしているその毛並みに埋もれるようにして過ごした。
前回のキスを思い出して羞恥心で涙目になる。
あんな風に訳の分からなくなるキスは、困る。
ゆでダコみたいに真っ赤になった私を見下ろして、神尾君がしばし、沈黙した。
「──どこならいいですか」
律儀に許可を求める神尾君に、私はとっさに仮眠室で額に口付けられたときのことを思い出した。
あのくらいなら、きっと大丈夫。
「えっと、顔なら」
「顔」
小さく復唱して、わかりました、と神尾君が頷く。
視界が神尾でいっぱいになってしまう、一瞬。突っぱねた時のまま神尾君の胸に置いた自分の手が目に入った。
「あっ、やっぱり」
──手とか。
続けるはずだった言葉は、ちゅ、と額に落とされたリップ音に消えてしまった。
場所を変えて、今度はこめかみにくちづけされる。
押し当てられる唇の感触に、ぴく、と震えた私の肩を、神尾君の左手がそっと抑えた。
「ん」
頰に、瞼に、いくつも落とされるキスに頭がぼうっとする。
ふわふわした気持ちでキスを受け入れていると、篠瀬さん、と神尾君の声が囁いた。
「口にしてもいいですか」
「……え」
──口?
うまく働かない頭でぼんやりとその意味を考える。
口って、どこ。
与えられた時間は僅かだった。返事のない私にふと笑うような気配を残して、神尾君の唇が私の唇に重なる。
──え。
触れるだけの、短いキスだった。
ぽかんと見上げると、私の反応を確かめてから神尾君が再度顔を寄せてくる。
「う、ん」
ちゅ、ちゅ、と啄ばむようなキスを与えられて、私は身じろいだ。
無意識に逃れようとする顔に手を添えられて、さらにキスされる。
「か、かみおく、ん」
これは、だめなやつだ。
これまでキスされたどの場所よりもはっきりと神尾君の熱を感じる。
押し当てられ、柔らかく食まれ、その度に体が熱くなる。
ああだめだ。おかしい。キモチイイ。もっとしてほしい。
もう自分が何を考えているのかよく分からなくなって、私は無意識に手に触れていた神尾君の服にしがみついた。
その時。
ピピピ。とアラームが鳴り響いて、私はびく、と大きく体を震わせた。
「大丈夫」
アラームに驚いて固まる私をなだめるように、神尾君が私を抱きしめて背中をさする。
あやすように頭頂部にキスを落とすと、神尾君が片手でアラームを止めた。
「篠瀬さん」
いつまでも顔を上げない私に、心配そうな声が掛かる。
怯えていると思ったのかもしれないが、私の心中はそれどころではなかった。
アラームの存在を忘れるほどキスに夢中になっていたなんて。
その事実に動揺したのだ。
どんな顔をして神尾君を見たらいいのか分からない。
頑なにこわばっている私の体を抱き直して、神尾君が背中を撫でてくれる。
「びっくりしましたね」
よしよし、となだめられるうちに少しずつ落ち着いてきて、私は深く息をした。
そうなると今度はこの状況がひたすら恥ずかしい。
「神尾君」
呟くような小さな声に気がついて、神尾君が手を止める。
何ですか、と問うような沈黙に、私はおずおずと顔を上げた。
「私にも、モフモフをください……」
これが取引なら要求してもいいはずだ。
人間神尾君、よりも、モフの神尾君といたほうがきっと落ち着く。
渾身のお願いを聞き届けて、神尾君が何か言いたげに口を開いて──結局何も言わずに微笑んだ。
「はい」
いいですよ、と言った時にはもう、真っ白の美しい獣に姿を変えていて。
私は残りわずかになった昼休みの時間を、あったかくてふわふわしているその毛並みに埋もれるようにして過ごした。
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