同僚がモフ度の高い神獣でした。【R18】【本編完結】

雲間香月

文字の大きさ
22 / 48
恋だとか。愛だとか。私だって知ってる。

「ところで篠瀬さん、今日」

 神尾君が何事か言いかける。なんだろう、と思ったところで、別の声が割り込んできた。

「おはようございます。何してるんですかこんなところで」

 近寄って来たのは戸塚君だ。
 立ち話とはいえ会話中の先輩達の間に入ってくるとは、物怖じしない戸塚君らしい。

「おはよう。ちょっと仕事の話を……」

「ふうん」

 興味があるのかないのか、しらっとした表情で戸塚君が神尾君に目をやる。
 にこ、と完璧な営業スマイルで応じた神尾君に、戸塚君がぞんざいに頭を下げた。

「それより、篠瀬さん金曜日ちゃんと電車に乗れました? 店から駅までちょっとあったでしょ? 送るって言ってんのに振り切って帰るとか、ほんと変なとこで頑固なんだから」 

 ぴく、と神尾君の表情がこわばる。
 それより、とかさすがに失礼だったのかもしれない。

「大丈夫だって。ちゃんと乗れたよ。子供じゃないんだから……あっ」
たしなめようとしたところで、私はふと大事なことを思い出した。

「そうだ! 戸塚君、あの時お会計自分で済ませちゃったでしょう! 電車乗ってから気がついたよ」

 そうなのだ。送るの迷惑だのというやり取りに気を取られて気づかなかったが、いつの間に済ませていたのか、あの日私がお財布を開く場面は訪れなかった。

「いや、あれは。付き合ってもらったので」

「お詫びだったよね」

「そうでしたっけ?」

 白々しく嘯く戸塚君に、私はむむむ、と眉根を寄せる。
 むくれた顔がおかしかったのか、戸塚君がニヤリと笑った。

「なら今度また付き合ってください。それであいこにしましょう」

 言いながら、何故か戸塚君が神尾君の方へ視線を流す。
 つられて見ると、表情を消した神尾君が戸塚君を見据えていた。

 ──え、何。

 ピリ、と張り詰めた空気が辺りを包む。
 不安になっておろおろ二人を見比べていると、ふいに神尾君が柔和な笑みをこちらに向けた。

「じゃあ篠瀬さん、先ほどの件については俺から正式に申請を上げるので、よろしくお願いします」

「あ、はい」

 完璧な微笑みは、しかしさっきのように柔らかさがない。

「あ、そうそう」

 唇に笑みを引いたまま、神尾君が私の耳元に顔を寄せる。

「取引がしたいです。今日、昼休みに」

 怒ったような低い声にびっくりして見ると、離れた神尾君はやっぱりにこやかに笑っていて。

「では。追って連絡しますので」

 折り目正しくお辞儀をして、神尾君が先に立ち去る。
 残された私の隣で息を吐いた戸塚君が、こえーおっさん、とぼそりと呟いた。

感想 36

あなたにおすすめの小説

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! ✽全28話完結 ✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 ✽他誌にも掲載中です。 ✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。 →表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。