【ライト版】元死にたがりは、異世界で奴隷達と自由気ままに生きていきます。

産屋敷 九十九

文字の大きさ
19 / 103
第2章 奴隷を買いました。

第5話

しおりを挟む
 尋常じゃないほどの汗が、男の額から顎にかけてだらだらと流れ落ちてゆく。私はそんな男の様子を気にも止めず立ち上がり、ゆったりと歩きながら落ち着いた声で話す。

「あのねぇ、俺が軽装備なのは目立ちたくないからなんだ。元より自由の効かない身だからね。とはいえ、何も言わずにここまで来たわけじゃない。俺はこれでも大事な跡取りだから、父上にここへ寄ることは伝えてあるよ。
 だから、俺の身に何かあったらすぐに駆けつけるだろう。あ、そうそう、奴隷は表にいたやつだけじゃないだろう? ちゃんと隠し玉も見せてくれるよな?」と男の座るソファの後ろから肩に手を置いて顔を出し、ニタァとした笑顔で圧力をかけた。

「ももも、もちろんでございます!」

 男の背筋がピシッと伸びる。

 ここで重要なのは、魔力やスキルじゃない。名字のある立場であること、そして財力だ。

 例え、名の知れ渡っていない貴族であっても、それを誇示しておけば、下手な態度はとられないだろう。


***


 男は一番奥の部屋まで、私を連れて来た。

「ここがVIP専用の部屋でございます」

 表にいる奴隷の部屋と違い、豪華な装飾が施された部屋だった。見たことはないが、王室ってこんな感じなのかもしれない、というのが印象だ。

 そんな豪華な部屋に、上半身裸の奴隷の檻が壁側にあった。ぱっと見、どの奴隷にも痣や傷があったものの、表にいた奴隷たちや道を歩く奴隷たちよりは軽症のように見えた。

(なるほど。ここにいるのが、質の良い奴隷か)

 男が棚から資料を取り出して来て、それを私に手渡してきた。

「こちらが、ここにいる奴隷たちの資料です」

「どうも」と受け取り見ていくが、あまりにも分厚くて、全て読むのに一日かかってしまいそうだ。

「ふむ。気性が荒くなく、常に冷静に行動することのできる誠実な者はいるか? その中で、第一に紳士的な者、続いて第二に強い者と知識の豊富な者が好ましい」

「なら、いいのがおります。誠実さでいえば、獣人が良いでしょう。獣人は生まれながらに素直な者が多いので。ですが、どの奴隷に関しましても調教済みですので、誠実さも気性についても問題ないかと。ですから、お客様の気に入った容姿で選ぶと良いでしょう。この辺りの獣人は護衛に向いております。腕は確かで能力も高いです。資料はこちらのページです」

 手に持ったままの資料が、隣の男によって捲られ、獣人のページが開かれる。

「有難う」

「……いえ」

 資料と檻の奴隷を見比べ、どの奴隷にしようかとぶつぶつ呟きながら考える。

「こっちは借金奴隷か……で、こっちが」


────────────────────────────────
奴隷番号   55番
種族     狼人
年齢     89歳
性別     男
奴隷種別   犯罪奴隷
奴隷要因   敵国の捕虜
使用用途   護衛
魔力     9,800
スキル    超直感、超嗅覚、超聴覚、超味覚、   
       超回避、超速度、危機察知、生活魔
       法、風魔法、剣術、毒耐性、物理攻
       撃耐性、麻痺耐性、動体視力、解体
問題行動履歴
奴隷歴    34年
購入履歴
────────────────────────────────


(犯罪奴隷? あぁ、敵国の捕虜だったからか。獣人全体、寿命長いな。普通に百歳越えてるのも結構多い。購入履歴は……)

 ふと資料の一番下の項目に目が留まった。その獣人の購入履歴は何も書かれていなかった。

(買う人がいなかったってことか)

 幸いこの部屋の奴隷たちは質もよく能力が高い。だからといって、容姿で選ぶのはあまりよくない気がする。何がよくないかと問われれば分からないが、罪悪感に呑まれそう。

(決めた。選ぶのはここに居た期間が長く、購入履歴のない奴隷だ)
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

底無しポーターは端倪すべからざる

さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。 ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。 攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。 そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。 ※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。 ※ごくまれに残酷描写を含みます。 ※【小説家になろう】様にも掲載しています。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...