【ライト版】元死にたがりは、異世界で奴隷達と自由気ままに生きていきます。

産屋敷 九十九

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第2章 奴隷を買いました。

第20話

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「元はといえば、狐人……貴方が血の契約を持ちかけたのが原因だ。契約書作成のために一度この商館を出なければならないだろう? 俺が外に出ているうちに先に買われたりしたら嫌じゃないか。取り置きも考えたが、位の高い貴族がくれば手のひら返して俺より先に引き渡す可能性もあるだろ?」

 壁と同化するように突っ立っている蝶ネクタイの男をビシッと指差してやれば、無言で「とんでもない」といった顔をして、ぶんぶんと音が鳴りそうなくらいに首を勢いよく横へ振っている。

(嘘つくなよ、腹立つ顔しやがって)

 狐人も同様、首を横に振り、さらに右手で宙を仰いだ。

「いやいやいや、ありえないから。マジでおかしいから。このメンツ選ぶ奴マジでいないから。そこのエルフと狼人は知らないけど、僕と合わせて、この三人は誰も欲しがらないから」

「何を言っている。欲しがる奴はいるだろう? 特におまえは医師だしな」

「その前にテロリストと共謀して捕まった犯罪者だけど?」

(ドヤ顔で言うなよ)

「加えて従業員に毒を盛ったとも書いてあったな」

「殺してないからセーフ!」

「アウトだよ⁉︎」  

(何がセーフだ⁉︎)

 野球の審判員のように胸の前に真っ直ぐ置いた両手を、外に払う動作をする。

「ご主人、一体どういう基準で選んだのだ?」

「えぇ、もしかして何か変な趣味でもあんの? やだぁ~」

 龍人は普通に聞いてくるが、狐人はオネエ口調で一々煽ってくる。普通に聞けよ⁉︎

「失敬な⁉︎ 基準は、ここに居た期間が長く、購入履歴の無い者だ。変な趣味などない」

「何故、その基準で……選ばれたのですか?」

 初めて聞く声だな、と少し驚いてそちらを向けばラピスラズリの瞳と視線が交わる。透き通るようなはっきりした声は、育ちの良さが窺える。彼は狼人だ。

「購入履歴のある者は、少しでも外の空気を吸えているのだろう? だが、おまえたちはここに居た期間が長く、長らく外の空気を吸えていないだろ」

「それだけか? それだけでオレを選んだのか……?」

 声変わりをしてすぐの若い男のような声だなと顔を向ければ、ボルドーの瞳がそこにあった。彼は鬼人だ。

「あぁ、そうだ。それと、狐人と同様におまえたち全員、今日から三年後に解放し、一年暮らせる程の金銭を充分に提供する。血の契約はひとりだけしかできないから、また新たに契約書を渡そう。双方ともに痛みを伴わない契約書だろうから、ただの紙になってしまうが」

 狐人と龍人を除く三人が、はくっと息を呑む音がした。信じられない、正にそんな顔だ。
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