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第3章 奴隷と暮らすまで
第25話
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ローダの薬屋へ向かう途中、空を見上げるように顔を上げて時計台を探す。どれくらいの間、歩き回っていただろうと、時計の差す針を見れば、十七時四十分だった。
そこで初めて、休憩を入れぬまま行動していたことに気づいた。日は沈みかけていたが、星が現れるほど暗いというわけではない。屋台は道沿いに沢山あるため、取り敢えず休憩がてらに水分補給のための飲み物と、少し腹を満たせるくらいの魔物の串肉を彼らに与え、私も食べた。
人外故に人間より丈夫な身体の為か、彼らは疲れた表情を見せないし、息切れもない。だから人間の私には彼らの疲労の程度がどれくらいなのかは理解できなかった。
軽く腹を満たしてから十五分ほど休憩した後、私たちはローダの薬屋へ向かった。
***
チリンチリン────……。
ドアベルを響かせながらローダの薬屋へと入る。
まるで粉薬を常に口に含まされ続けているかのような苦々しい匂いは、二回目だからか鼻を塞ぐほどではなかった。
だが、
「ゔぐっ⁉︎」
「ぐぇっ⁉︎」
「ゔぉっ⁉︎」
「ゲッホゲッホ⁉︎」
「うぇっ⁉︎」
ここの匂いを初めて嗅ぐ彼らにとっては、相当辛かったようだ。口を、鼻を塞いでえずいている。特に鼻がよく利く獣人にはきつかったようで、狼人は涙目になっていた。狐人は狼人に比べて苦しそうではなかった。恐らく、薬品の扱いに慣れていることが関係しているのだろう。
「いらっしゃい。おやっ、昨日の……」
店の奥から耳の尖った白髪混じりの丸眼鏡をかけたご老人、ここの店主が出てきた。
「はい。昨日はお世話になりました」と私は礼を言って軽く頭を下げた。
「おぉっ! そうじゃったそうじゃった! ということは……ほほぅ、なるほどのぉ」とご老人顎に伸びる長い白髭を上から下へキュッとしぼるように撫でながら、私の背後にいる彼らへ視線を移した。
この店主には奴隷を買うことをちらっと伝えていたので気になるのだろう。
「随分と、うむ。うん……変わった趣味をしておるのぉ……」
ローブの奥を覗き込むようにじっくり彼らを見たかと思えば、直後現実から目を背けるような勢いで視線をすぅっと逸らした。その様子は、なんだか引いているような感じだった。
(何に引いてるんだ……?)
店主の様子に不安が煽られ、おずおずと口を開く。
「あの……何か?」
「あぁ~いや、その顔は……おまえさん、わかっておらんようじゃなぁ。取り敢えず、彼ら買ったことはあまり周りには言わん方がえぇじゃろう」
高額な奴隷だと一目見てわかるから危ないと言いたいのか、それとも彼らが危険な存在だとでも言いたいのか……。
店主の曖昧な解答に何が言いたいのか分からず首を傾げる。そんな私の様子を見て、店主は続けて話した。
「獣人はともかく、そこのエルフと龍人、鬼人はその存在自体が目立つ。あまりいい目では見られんじゃろう。ま、ローブも被っておることだし、よく見んとわからんから、おまえさんのローブを着せるという判断は正しかったな」
店主から向けられた視線とその言葉を気にした為か、エルフと鬼人は無言で額に垂らしたローブをするっと引っ張り深く被り直した。
「そう、ですか」
(目立つって、差別の対象……ということか?)
この場には彼らがいるし、あまり聞いていていい気分ではないだろうと、私は聞くのを止めた。
そこで初めて、休憩を入れぬまま行動していたことに気づいた。日は沈みかけていたが、星が現れるほど暗いというわけではない。屋台は道沿いに沢山あるため、取り敢えず休憩がてらに水分補給のための飲み物と、少し腹を満たせるくらいの魔物の串肉を彼らに与え、私も食べた。
人外故に人間より丈夫な身体の為か、彼らは疲れた表情を見せないし、息切れもない。だから人間の私には彼らの疲労の程度がどれくらいなのかは理解できなかった。
軽く腹を満たしてから十五分ほど休憩した後、私たちはローダの薬屋へ向かった。
***
チリンチリン────……。
ドアベルを響かせながらローダの薬屋へと入る。
まるで粉薬を常に口に含まされ続けているかのような苦々しい匂いは、二回目だからか鼻を塞ぐほどではなかった。
だが、
「ゔぐっ⁉︎」
「ぐぇっ⁉︎」
「ゔぉっ⁉︎」
「ゲッホゲッホ⁉︎」
「うぇっ⁉︎」
ここの匂いを初めて嗅ぐ彼らにとっては、相当辛かったようだ。口を、鼻を塞いでえずいている。特に鼻がよく利く獣人にはきつかったようで、狼人は涙目になっていた。狐人は狼人に比べて苦しそうではなかった。恐らく、薬品の扱いに慣れていることが関係しているのだろう。
「いらっしゃい。おやっ、昨日の……」
店の奥から耳の尖った白髪混じりの丸眼鏡をかけたご老人、ここの店主が出てきた。
「はい。昨日はお世話になりました」と私は礼を言って軽く頭を下げた。
「おぉっ! そうじゃったそうじゃった! ということは……ほほぅ、なるほどのぉ」とご老人顎に伸びる長い白髭を上から下へキュッとしぼるように撫でながら、私の背後にいる彼らへ視線を移した。
この店主には奴隷を買うことをちらっと伝えていたので気になるのだろう。
「随分と、うむ。うん……変わった趣味をしておるのぉ……」
ローブの奥を覗き込むようにじっくり彼らを見たかと思えば、直後現実から目を背けるような勢いで視線をすぅっと逸らした。その様子は、なんだか引いているような感じだった。
(何に引いてるんだ……?)
店主の様子に不安が煽られ、おずおずと口を開く。
「あの……何か?」
「あぁ~いや、その顔は……おまえさん、わかっておらんようじゃなぁ。取り敢えず、彼ら買ったことはあまり周りには言わん方がえぇじゃろう」
高額な奴隷だと一目見てわかるから危ないと言いたいのか、それとも彼らが危険な存在だとでも言いたいのか……。
店主の曖昧な解答に何が言いたいのか分からず首を傾げる。そんな私の様子を見て、店主は続けて話した。
「獣人はともかく、そこのエルフと龍人、鬼人はその存在自体が目立つ。あまりいい目では見られんじゃろう。ま、ローブも被っておることだし、よく見んとわからんから、おまえさんのローブを着せるという判断は正しかったな」
店主から向けられた視線とその言葉を気にした為か、エルフと鬼人は無言で額に垂らしたローブをするっと引っ張り深く被り直した。
「そう、ですか」
(目立つって、差別の対象……ということか?)
この場には彼らがいるし、あまり聞いていていい気分ではないだろうと、私は聞くのを止めた。
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