79 / 103
第4章 奴隷と暮らす
第8話
しおりを挟む
その客がじっとこちらを無言で穴があくほど見つめてくる。流石に気まずくなって落ち着かなくなってしまう。いつもの客のように罵声でも浴びせてくれれば一瞬で終わるのにと考えてしまった。
だが、その客から向けられた視線が、俺を不快な気持ちにはさせることはなかった。客の瞳には差別や嫌悪はなく、ただ純粋に見ているだけだったからかもしれない。例えるならば、たまたま珍しいものを見つけて、まじまじと見て終わるような感じの目に近い。
暫くして、客は申し訳なさそうに少し眉を下げて俺から目を逸らした。
(俺に……気を遣った? そんなわけ……ない、か)
そして、客は支配人に「護衛の狼人をひとり決めたよ。全体的に種族は被らないようにしたい。護衛で良さそうな者は他にいないか?」と伝えると、次の奴隷を選んで行った。
あの客が選んだ狼人は、一体、誰なんだろうか? いつもは気にならないはずなのに、この客が変わった雰囲気を纏っている所為か、興味が湧いた。同時に、少しだけ寂しさを感じた。
(……?)
何故そう感じたのか、よく分からなかった。
暫くこの部屋で奴隷を慎重な様子で見ていた客は、支配人がぽろりと口に出した龍人に興味を示したようで、部屋を出て行った。きっと物珍しさで行っただけだろうとこの時は思っていた。
数時間経過し、また同じ客が支配人と共にVIP専用の部屋へ入ってきた。どうやら客は一度外へ出ていたようだ。そして、客は支配人から再び奴隷資料を受け取り開いて、内容をさらっと確認し、はっきりとした口調で支配人へ伝える。
「購入する奴隷を決めた。55番、3番、17番、24番、97番……以上だ。あと、97番に伝えてくれ、準備は整った、とな」
(55番……?)
55番には聞き覚えがあった。聞き覚えがあるというより、毎日聞いている。だってその番号は────
(お、れ? 嘘だろ……?)
俺の奴隷番号だったからだ。
あの時の客の言葉が思い出される。
"護衛の狼人をひとり決めたよ"
あれは、俺のことだったのか────?
俺はただただ唖然とし、目を丸くする。客のいなくなったVIP専用の部屋で、支配人の指示により、従業員が檻から奴隷を出した。そして、また驚く。
共に檻から出されたのは、護衛としての腕は申し分ないが不人気な鬼人と自傷癖のあるエルフだった。そして、客のいる応接室前で合流した奴隷を見て、驚愕を通り越して顔がぴくりと引き攣った。
まさかの、そのまさかだ。あの扱いにくいことで有名な龍人がいた。そして、噂でしか知らないが、テロリストと共謀して捕まり、更に従業員に毒を盛ったと思われる狐人がいた。連れてこられた方向を見るに、地下から来ただろうから間違いない。
集められた奴隷は、どれもこれも問題を抱えている者たちばかりだ。もっと良い奴隷がいるはずなのに、何故俺たちのような奴隷を選んだのか……客の意図が分からず混乱する。
(この客は、一体、何をしようとしてるんだ……
?)
だが、その客から向けられた視線が、俺を不快な気持ちにはさせることはなかった。客の瞳には差別や嫌悪はなく、ただ純粋に見ているだけだったからかもしれない。例えるならば、たまたま珍しいものを見つけて、まじまじと見て終わるような感じの目に近い。
暫くして、客は申し訳なさそうに少し眉を下げて俺から目を逸らした。
(俺に……気を遣った? そんなわけ……ない、か)
そして、客は支配人に「護衛の狼人をひとり決めたよ。全体的に種族は被らないようにしたい。護衛で良さそうな者は他にいないか?」と伝えると、次の奴隷を選んで行った。
あの客が選んだ狼人は、一体、誰なんだろうか? いつもは気にならないはずなのに、この客が変わった雰囲気を纏っている所為か、興味が湧いた。同時に、少しだけ寂しさを感じた。
(……?)
何故そう感じたのか、よく分からなかった。
暫くこの部屋で奴隷を慎重な様子で見ていた客は、支配人がぽろりと口に出した龍人に興味を示したようで、部屋を出て行った。きっと物珍しさで行っただけだろうとこの時は思っていた。
数時間経過し、また同じ客が支配人と共にVIP専用の部屋へ入ってきた。どうやら客は一度外へ出ていたようだ。そして、客は支配人から再び奴隷資料を受け取り開いて、内容をさらっと確認し、はっきりとした口調で支配人へ伝える。
「購入する奴隷を決めた。55番、3番、17番、24番、97番……以上だ。あと、97番に伝えてくれ、準備は整った、とな」
(55番……?)
55番には聞き覚えがあった。聞き覚えがあるというより、毎日聞いている。だってその番号は────
(お、れ? 嘘だろ……?)
俺の奴隷番号だったからだ。
あの時の客の言葉が思い出される。
"護衛の狼人をひとり決めたよ"
あれは、俺のことだったのか────?
俺はただただ唖然とし、目を丸くする。客のいなくなったVIP専用の部屋で、支配人の指示により、従業員が檻から奴隷を出した。そして、また驚く。
共に檻から出されたのは、護衛としての腕は申し分ないが不人気な鬼人と自傷癖のあるエルフだった。そして、客のいる応接室前で合流した奴隷を見て、驚愕を通り越して顔がぴくりと引き攣った。
まさかの、そのまさかだ。あの扱いにくいことで有名な龍人がいた。そして、噂でしか知らないが、テロリストと共謀して捕まり、更に従業員に毒を盛ったと思われる狐人がいた。連れてこられた方向を見るに、地下から来ただろうから間違いない。
集められた奴隷は、どれもこれも問題を抱えている者たちばかりだ。もっと良い奴隷がいるはずなのに、何故俺たちのような奴隷を選んだのか……客の意図が分からず混乱する。
(この客は、一体、何をしようとしてるんだ……
?)
29
あなたにおすすめの小説
修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。
底無しポーターは端倪すべからざる
さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。
ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。
攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。
そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。
※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。
※ごくまれに残酷描写を含みます。
※【小説家になろう】様にも掲載しています。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる