【ライト版】元死にたがりは、異世界で奴隷達と自由気ままに生きていきます。

産屋敷 九十九

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第4章 奴隷と暮らす

第8話

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 その客がじっとこちらを無言で穴があくほど見つめてくる。流石に気まずくなって落ち着かなくなってしまう。いつもの客のように罵声でも浴びせてくれれば一瞬で終わるのにと考えてしまった。

 だが、その客から向けられた視線が、俺を不快な気持ちにはさせることはなかった。客の瞳には差別や嫌悪はなく、ただ純粋に見ているだけだったからかもしれない。例えるならば、たまたま珍しいものを見つけて、まじまじと見て終わるような感じの目に近い。

 暫くして、客は申し訳なさそうに少し眉を下げて俺から目を逸らした。

(俺に……気を遣った? そんなわけ……ない、か)

 そして、客は支配人に「護衛の狼人をひとり決めたよ。全体的に種族は被らないようにしたい。護衛で良さそうな者は他にいないか?」と伝えると、次の奴隷を選んで行った。

 あの客が選んだ狼人は、一体、誰なんだろうか? いつもは気にならないはずなのに、この客が変わった雰囲気を纏っている所為か、興味が湧いた。同時に、少しだけ寂しさを感じた。

(……?)

 何故そう感じたのか、よく分からなかった。

 暫くこの部屋で奴隷を慎重な様子で見ていた客は、支配人がぽろりと口に出した龍人に興味を示したようで、部屋を出て行った。きっと物珍しさで行っただけだろうとこの時は思っていた。

 数時間経過し、また同じ客が支配人と共にVIP専用の部屋へ入ってきた。どうやら客は一度外へ出ていたようだ。そして、客は支配人から再び奴隷資料を受け取り開いて、内容をさらっと確認し、はっきりとした口調で支配人へ伝える。

「購入する奴隷を決めた。55番、3番、17番、24番、97番……以上だ。あと、97番に伝えてくれ、準備は整った、とな」

(55番……?)

 55番には聞き覚えがあった。聞き覚えがあるというより、毎日聞いている。だってその番号は────

(お、れ? 嘘だろ……?)

 俺の奴隷番号だったからだ。

 あの時の客の言葉が思い出される。


"護衛の狼人をひとり決めたよ"


 あれは、俺のことだったのか────?


 俺はただただ唖然とし、目を丸くする。客のいなくなったVIP専用の部屋で、支配人の指示により、従業員が檻から奴隷を出した。そして、また驚く。

 共に檻から出されたのは、護衛としての腕は申し分ないが不人気な鬼人と自傷癖のあるエルフだった。そして、客のいる応接室前で合流した奴隷を見て、驚愕を通り越して顔がぴくりと引き攣った。

 まさかの、そのまさかだ。あの扱いにくいことで有名な龍人がいた。そして、噂でしか知らないが、テロリストと共謀して捕まり、更に従業員に毒を盛ったと思われる狐人がいた。連れてこられた方向を見るに、地下から来ただろうから間違いない。

 集められた奴隷は、どれもこれも問題を抱えている者たちばかりだ。もっと良い奴隷がいるはずなのに、何故俺たちのような奴隷を選んだのか……客の意図が分からず混乱する。

(この客は、一体、何をしようとしてるんだ……
?)

 
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