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第4章 奴隷と暮らす
第11話
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ようやく奴隷商館『カミュア』を出た俺たちが向かった先は、服屋と靴屋だった。
「さぁ、選んでこい。金に糸目はつけない、好きなのを選ぶと良い。とりあえず今日のところは、普段着と寝間着と下着、デミグラブそれから靴下三セット、あと靴二足だ。生憎、今は持ち家がないので、持ち運びできる量に抑えてほしい」
調教されてきた期間が長かった所為か、命従紋の影響かはわからないが、まるで見えない鎖で身体の自由を奪われているようで、思うように身体が動かない。
"選んでこい"それはそのままの意味として捉えてもいいのだろうか? 狐人と龍人はさっさと店の中へと入ってしまって姿は見えなくなっていた。
なかなか動こうとしない俺たちを見てご主人様はフードを被ったままの頭を傾けた。
「どうした?」
「失礼ながら、ご主人様……奴隷は自分で服を選びません。そもそも、奴隷に選択させるようなことは一般的にはしないのです……」
エルフも思うように身体が動かせないでいるようだ。癖なのか緊張のためかはわからないが、エルフの右手が反対側の腕を強く掴みローブに大きな皺をつくった。
「おまえら、ちょっとこっちに来い……」
そうご主人様に手招きされ、俺たちは他の客を避けて店の端に寄った。そして、ご主人様は周囲の人々を気にするように辺りを一通り見渡して俺たちに向き直ると、小さく口を開いて声を潜め話す。
「おまえら、三年後も自分の意思を捨てて誰かに従って生きていくつもりなのか?」
息継ぎをするように、はくっと俺は息を呑む。
(三年後も……? 自分の意思?)
正直、この話をどう受け止めたらいいのかわからない。奴隷から解放されたいとは思うが───
「ご主人様、貴方は本当に我々を三年後に解放するつもりでいらっしゃるのですか?」
信用に値するのか、まだ判断材料が少な過ぎて見極められない。まだだ、いまは時間が欲しい。俺がどうするべきなのかを考える時間が。
俺は小さなご主人様を見下ろし、フードの奥に潜む瞳を見つめた。
そして、俺は解放された後のことを考える。奴隷から解放されても、家族と再会できるかわからない。再会できたとしても叱責されるかもしれない。俺の居場所はもう……どこにもないかもしれない。
そうしたら、どうやって生きていけばいいのかわからない。情勢もだいぶ変わっていることだろう。身寄りがないのは……不安だ。
すると、ご主人様は眉間に寄せた皺を指で押さえながら、ふぅっと溜め息を吐いた。不機嫌にも見えたその表情に、奴隷が主人に対して向ける言葉にしては、かなり不味いことを言ったことに気がつき、冷水を頭から被った時のようにサァーッと青ざめる。同時に、このご主人様は話の通じる人物なのではという僅かな期待を含んだ考えが頭を巡る。
ご主人様が、眉間を押さえていた指を下ろして俺たちに向き直る。上げられた顔は、やけに真剣な表情をしていて、俺が先程した質問に対して不快を感じた様子はなく、内心安堵する。
「わかった。おまえたちとも『血の契約』を結ぼう。効力の強いものの方が、おまえたちも安心できるだろう? 狐人と契約を交わしたのは、契約を結ぶのなら俺の主治医になると条件を出されたからで、特別扱いしたわけじゃないからな」
(は? 血の契約はひとりだけしかできないのではなかったのか……?)
この小さなご主人様は、次々と訳の分からないことを言い出して、混乱させてくる。時折、俺たちのそんな反応を見て楽しんでいるのではと思うほどだ。掴み所がなく、真意がわからない。
「さぁ、選んでこい。金に糸目はつけない、好きなのを選ぶと良い。とりあえず今日のところは、普段着と寝間着と下着、デミグラブそれから靴下三セット、あと靴二足だ。生憎、今は持ち家がないので、持ち運びできる量に抑えてほしい」
調教されてきた期間が長かった所為か、命従紋の影響かはわからないが、まるで見えない鎖で身体の自由を奪われているようで、思うように身体が動かない。
"選んでこい"それはそのままの意味として捉えてもいいのだろうか? 狐人と龍人はさっさと店の中へと入ってしまって姿は見えなくなっていた。
なかなか動こうとしない俺たちを見てご主人様はフードを被ったままの頭を傾けた。
「どうした?」
「失礼ながら、ご主人様……奴隷は自分で服を選びません。そもそも、奴隷に選択させるようなことは一般的にはしないのです……」
エルフも思うように身体が動かせないでいるようだ。癖なのか緊張のためかはわからないが、エルフの右手が反対側の腕を強く掴みローブに大きな皺をつくった。
「おまえら、ちょっとこっちに来い……」
そうご主人様に手招きされ、俺たちは他の客を避けて店の端に寄った。そして、ご主人様は周囲の人々を気にするように辺りを一通り見渡して俺たちに向き直ると、小さく口を開いて声を潜め話す。
「おまえら、三年後も自分の意思を捨てて誰かに従って生きていくつもりなのか?」
息継ぎをするように、はくっと俺は息を呑む。
(三年後も……? 自分の意思?)
正直、この話をどう受け止めたらいいのかわからない。奴隷から解放されたいとは思うが───
「ご主人様、貴方は本当に我々を三年後に解放するつもりでいらっしゃるのですか?」
信用に値するのか、まだ判断材料が少な過ぎて見極められない。まだだ、いまは時間が欲しい。俺がどうするべきなのかを考える時間が。
俺は小さなご主人様を見下ろし、フードの奥に潜む瞳を見つめた。
そして、俺は解放された後のことを考える。奴隷から解放されても、家族と再会できるかわからない。再会できたとしても叱責されるかもしれない。俺の居場所はもう……どこにもないかもしれない。
そうしたら、どうやって生きていけばいいのかわからない。情勢もだいぶ変わっていることだろう。身寄りがないのは……不安だ。
すると、ご主人様は眉間に寄せた皺を指で押さえながら、ふぅっと溜め息を吐いた。不機嫌にも見えたその表情に、奴隷が主人に対して向ける言葉にしては、かなり不味いことを言ったことに気がつき、冷水を頭から被った時のようにサァーッと青ざめる。同時に、このご主人様は話の通じる人物なのではという僅かな期待を含んだ考えが頭を巡る。
ご主人様が、眉間を押さえていた指を下ろして俺たちに向き直る。上げられた顔は、やけに真剣な表情をしていて、俺が先程した質問に対して不快を感じた様子はなく、内心安堵する。
「わかった。おまえたちとも『血の契約』を結ぼう。効力の強いものの方が、おまえたちも安心できるだろう? 狐人と契約を交わしたのは、契約を結ぶのなら俺の主治医になると条件を出されたからで、特別扱いしたわけじゃないからな」
(は? 血の契約はひとりだけしかできないのではなかったのか……?)
この小さなご主人様は、次々と訳の分からないことを言い出して、混乱させてくる。時折、俺たちのそんな反応を見て楽しんでいるのではと思うほどだ。掴み所がなく、真意がわからない。
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