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第4章 奴隷と暮らす
第18話
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「インクの匂い……それから、ノートや本を捲る音、かな? これは」
狐人が両耳と鼻先をぴくりと動かしながら話す。それを確認するように、俺も耳と鼻に集中させる。
濃厚なインクの匂いが、俺の嗅覚で感知される。それから、ツプッ……カンカン………シュルッという音を聴覚で拾った。これは……まずペンにインクを吸わせ、ボトルの端で余分なインクを落とし、ノートに書く音……か。
「何故……ここで作業されないのでしょうか?」
俯き加減で、そう疑問を口にしたのはエルフだ。
(確かに……)
作業をするだけであれば、わざわざ奴隷専用の部屋へ入る必要はない。ここにだってテーブルはある。
「ふむ……」と顎を摩りながら暫し考えた龍人は、俺たちの方を見た。俺たちというのは、俺とエルフと鬼人のことだ。
「おまえたちに、気をつかったのではないのか?」
「「「俺(私)(オレ)たちに……?」」」
少し前から思っていたことではあるが、確信を持てずにいた。そもそも主人が奴隷を気遣う理由がない。奴隷を買ったのなら、命令により命従紋を発動させ、従わせればいいのだから。しかし、龍人からはっきりそう言われてしまうと、そうだったのかと胸にストンと腑に落ちるのを感じた。
「そうそう、君たちがそんなあからさまにビクビクしてるからきっと気ぃ遣ったんだよ、あの子は」
やれやれといった様子で、狐人が話した。
「そんなこと言われたって‼︎ ゔぐっ⁉︎」
カァッと頭に血が上り、声を荒げかけたところで、龍人の光魔法により生み出された口枷によって、言葉を呑み込むことになった。口に巻きついた輪っかを力いっぱい両手で握りしめて引っ張るが、びくともしない。
(何するんだ⁉︎)
そう思い、俺は龍人を睨みつけた。
「あまりご主人に聞かれていいものではないだろう。少しの間、防御壁を張るか」と龍人が手のひらから小さなドームを生み出したかと思えば、それを徐々に膨らませて、俺たち全員を呑み込む。透けていながらも、やや白いドームの中に俺たちはいた。
それから、パチンと龍人が指を鳴らせば、俺の口枷がパシンと音を立てて弾け、解放される。
「さて、この中であれば、ご主人に聞かれることはない。思う存分、話すがいい」
少し細められたカージナルレッドの瞳から、余裕が見えた。余裕というより、どこか楽しそうなと言った方がいいのか。
俺の荒げた声によって、ご主人様が駆けつけるといった騒ぎにならずに済み、龍人に内心感謝する。そして、俺は口を開いた。
「龍人、貴方は種族上、主従契約によって縛られない。そして、狐人、貴方はご主人様と血の契約を交わしている」
俺は下げ気味になった頭を持ち上げ、ふたりを交互に見た。
「しかし、俺たちには、何もないんですよ。主従契約に逆らえるほどの力も無ければ、効力の強い契約によって約束された未来も。信じられるものはあなた方にはあるが、俺たちにはそれが何ひとつ……ない」
狐人が両耳と鼻先をぴくりと動かしながら話す。それを確認するように、俺も耳と鼻に集中させる。
濃厚なインクの匂いが、俺の嗅覚で感知される。それから、ツプッ……カンカン………シュルッという音を聴覚で拾った。これは……まずペンにインクを吸わせ、ボトルの端で余分なインクを落とし、ノートに書く音……か。
「何故……ここで作業されないのでしょうか?」
俯き加減で、そう疑問を口にしたのはエルフだ。
(確かに……)
作業をするだけであれば、わざわざ奴隷専用の部屋へ入る必要はない。ここにだってテーブルはある。
「ふむ……」と顎を摩りながら暫し考えた龍人は、俺たちの方を見た。俺たちというのは、俺とエルフと鬼人のことだ。
「おまえたちに、気をつかったのではないのか?」
「「「俺(私)(オレ)たちに……?」」」
少し前から思っていたことではあるが、確信を持てずにいた。そもそも主人が奴隷を気遣う理由がない。奴隷を買ったのなら、命令により命従紋を発動させ、従わせればいいのだから。しかし、龍人からはっきりそう言われてしまうと、そうだったのかと胸にストンと腑に落ちるのを感じた。
「そうそう、君たちがそんなあからさまにビクビクしてるからきっと気ぃ遣ったんだよ、あの子は」
やれやれといった様子で、狐人が話した。
「そんなこと言われたって‼︎ ゔぐっ⁉︎」
カァッと頭に血が上り、声を荒げかけたところで、龍人の光魔法により生み出された口枷によって、言葉を呑み込むことになった。口に巻きついた輪っかを力いっぱい両手で握りしめて引っ張るが、びくともしない。
(何するんだ⁉︎)
そう思い、俺は龍人を睨みつけた。
「あまりご主人に聞かれていいものではないだろう。少しの間、防御壁を張るか」と龍人が手のひらから小さなドームを生み出したかと思えば、それを徐々に膨らませて、俺たち全員を呑み込む。透けていながらも、やや白いドームの中に俺たちはいた。
それから、パチンと龍人が指を鳴らせば、俺の口枷がパシンと音を立てて弾け、解放される。
「さて、この中であれば、ご主人に聞かれることはない。思う存分、話すがいい」
少し細められたカージナルレッドの瞳から、余裕が見えた。余裕というより、どこか楽しそうなと言った方がいいのか。
俺の荒げた声によって、ご主人様が駆けつけるといった騒ぎにならずに済み、龍人に内心感謝する。そして、俺は口を開いた。
「龍人、貴方は種族上、主従契約によって縛られない。そして、狐人、貴方はご主人様と血の契約を交わしている」
俺は下げ気味になった頭を持ち上げ、ふたりを交互に見た。
「しかし、俺たちには、何もないんですよ。主従契約に逆らえるほどの力も無ければ、効力の強い契約によって約束された未来も。信じられるものはあなた方にはあるが、俺たちにはそれが何ひとつ……ない」
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