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親友 森下加奈子
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親友の早坂由紀は美人だ。
とてつもない程の美人だ。
初対面は初等部1年の時。
リアルなバービー人形キタ!!
興奮したのを覚えている。
あまりにも完璧に整っている顔立ちで嫉妬する事は無かった。
それよりも近くで鑑賞したい。
着せ替えしたい。
7歳の私の頭の中は可愛い洋服を着せることでいっぱいだったのだ。
結果的に由紀とは大学までの腐れ縁となり、一番の親友である。
だからそんな友が大学時代に初めて
「あの人素敵よね」
と呟いた先の人物を見て絶句した。
「ねぇ、由紀。私には用務員のおじさんしか見えないんだけど…気のせいよね?」
恐る恐る聞くと
「えっ。うん、あの用務員さんだけど?あ、指輪してる…やっぱり既婚者かぁ。素敵な人だから当たり前だよね。」
空耳じゃなかったようだ。
「そういえば今まで由紀の好みのタイプて聞いたことなかったよね。数々のイケメンを振ってきたから理想が高いと思ってたんだけど。」
「男性のタイプ?うん、多分高いと思う。えーとね…」
絶句した。
ただのブサイクじゃないか。
そりゃイケメンを断るわけだ。
第一、由紀に正面から近づいてくるのは自分に自信が無いと無理だ。
由紀は美人な上に表情が控えめだからクールな印象を受けがちなのだ。
中身はそんな事ないけど?
だから由紀の好みであろうブサイクはこっそりと想いを募らせるだけで、声なんか掛けてこない。
たまに暴走してストーカーになる奴はいるけど、それは論外だ。
なんて事。
バービーのお相手はケンのはずなのに。
由紀の隣にブサイクなおっさん?
ムリムリムリ。
想像するだけで泣ける。
でも、それが由紀の幸せなら応援するべき?
ある意味ブサイクに夢を与える由紀はさすがなんじゃないだろうか。
うん。子供は由紀に似る事だけを祈ろう!
由紀の優性遺伝がブサイクの劣性遺伝に勝つ事を祈る。
それにまだ由紀は理想の王子様?とやらには出会えていないし。
もしかしたら、イケメンは無理でもフツメンぐらいに落ち着くかもしれないし。
大学生活なんて出会いの宝庫じゃないか。
親友の為に良さげなフツメンを探そう!
ついでに私はイケメンを探そう!!
なんて思っていた時代もありました。
私、森下加奈子は全敗した 。
由紀は妥協を許さなかったのだ。
そんな大学生活を思い出しながら、お気に入りのカフェで珍しく興奮した親友の話を聞いている。
「で?王子様に出会えたと。」
「そうなの!もう本当に素敵な人で!あぁ、思い出しただけで胸がキュンとしちゃう。これが恋なのね。」
ほんのりピンク色に頬を染めてうっとりとしている由紀は色気がダダ漏れして超絶に美人だ。
周りの視線を釘付けにしてる事は、気づいていても気にはしていないんだろう。
「ふーん。チビでハゲで一重のデブなんでしょ。でもまぁ 唯一の救いは仕事が出来る事ね。ちなみに写真無いの?」
どのレベルか知りたい。
怖いもの見たさで見てみたい。
「あ、写真あるよ!何か学生時代に友人とニ人で会社を立ち上げたみたいなの。それからは仕事一筋だったらしくて…はぁ。あんな素敵な人が独身でいたなんて信じられない。」
スマホに映し出された写メを見て、私は視覚の暴力を受けた。
マジか。えっ?38歳?50歳じゃなくて?
年齢詐称してない?
頭バーコードだけど、ヒゲ濃くて口周り真っ青じゃん!
目とか開いてんのか寝てんのか分からないくらい糸目で鼻はぺったんこ。
身長は由紀の耳ぐらいだから160cm位か。
足とか由紀の膝くらいしかないんじゃない?
そして何より紫のシャツにオレンジのネクタイって!
せめてセンスは良くあれよ。
周りも止めようよ!アドバイスしてやって!
副社長なんでしょ!
スーツは良い物っぽいのに、裾を詰めすぎてライン崩れてるし…
デザイナーが見たら泣くぞ。
もう突っ込み所が多すぎて疲れる。
「あー、うん。由紀のワンピース可愛いね。似合ってる。さすがセンスあるわ。隣の人にもアドバイスしてあげたら?」
「ふふ、素敵な人でしょ。西条貴之さんて名前もかっこよくて、服のセンスも斬新よね。私には思いつかない配色だわ。それなのに服に負ける事なく似合ってるなんて!」
名前!西条って!もっとこう
戸愚呂とか轟とか似合いそうなのあるでしょ。
いや、全国の戸愚呂さん轟さんすみません。
「分かった、分かった。それで次に会う約束はしたわけ?」
「うん。帝和ホテルでディナーでもって誘われちゃった。ど、どう思う?」
おい、西条!
早すぎだろうが!
ホテルのディナーって。
2回目は水族館か映画がセオリーじゃない?
しかもそのホテルクリスマスや記念日に♡って人気のとこじゃん。
がっつきすぎ!
気持ちは分かるけどがっつきすぎ!!
いくら由紀の反応が良かったにせよ焦りすぎだわ。
「由紀は何て答えたわけ?」
「はい。楽しみにしてますって。」
「意味理解してる?」
「うん、もちろん。もう西条さん以上に素敵な人に出会える気はしないし、自分で決めたの。そこで加奈ちゃんに色々と相談したくて。その、下着とかな、な、流れ的な事とか」
真っ赤になりながらも覚悟を決めている目を見て由紀の本気を悟った。
そうか、由紀はこのブサイクに決めたのか。
このブサイクに由紀が抱か…イヤイヤ
無理無理無理無理無理…
ちらっと由紀を見ると真剣な表情で私の発言を待っている。
はぁ。
仕方ない。由紀が幸せなら私の価値観なんてどうでもいいじゃないか。
私も覚悟を決めよう!親友の為に。
「まずは下着ね…」
こうしてレッスンはコーヒーの追加を3回するまで続いた。
とてつもない程の美人だ。
初対面は初等部1年の時。
リアルなバービー人形キタ!!
興奮したのを覚えている。
あまりにも完璧に整っている顔立ちで嫉妬する事は無かった。
それよりも近くで鑑賞したい。
着せ替えしたい。
7歳の私の頭の中は可愛い洋服を着せることでいっぱいだったのだ。
結果的に由紀とは大学までの腐れ縁となり、一番の親友である。
だからそんな友が大学時代に初めて
「あの人素敵よね」
と呟いた先の人物を見て絶句した。
「ねぇ、由紀。私には用務員のおじさんしか見えないんだけど…気のせいよね?」
恐る恐る聞くと
「えっ。うん、あの用務員さんだけど?あ、指輪してる…やっぱり既婚者かぁ。素敵な人だから当たり前だよね。」
空耳じゃなかったようだ。
「そういえば今まで由紀の好みのタイプて聞いたことなかったよね。数々のイケメンを振ってきたから理想が高いと思ってたんだけど。」
「男性のタイプ?うん、多分高いと思う。えーとね…」
絶句した。
ただのブサイクじゃないか。
そりゃイケメンを断るわけだ。
第一、由紀に正面から近づいてくるのは自分に自信が無いと無理だ。
由紀は美人な上に表情が控えめだからクールな印象を受けがちなのだ。
中身はそんな事ないけど?
だから由紀の好みであろうブサイクはこっそりと想いを募らせるだけで、声なんか掛けてこない。
たまに暴走してストーカーになる奴はいるけど、それは論外だ。
なんて事。
バービーのお相手はケンのはずなのに。
由紀の隣にブサイクなおっさん?
ムリムリムリ。
想像するだけで泣ける。
でも、それが由紀の幸せなら応援するべき?
ある意味ブサイクに夢を与える由紀はさすがなんじゃないだろうか。
うん。子供は由紀に似る事だけを祈ろう!
由紀の優性遺伝がブサイクの劣性遺伝に勝つ事を祈る。
それにまだ由紀は理想の王子様?とやらには出会えていないし。
もしかしたら、イケメンは無理でもフツメンぐらいに落ち着くかもしれないし。
大学生活なんて出会いの宝庫じゃないか。
親友の為に良さげなフツメンを探そう!
ついでに私はイケメンを探そう!!
なんて思っていた時代もありました。
私、森下加奈子は全敗した 。
由紀は妥協を許さなかったのだ。
そんな大学生活を思い出しながら、お気に入りのカフェで珍しく興奮した親友の話を聞いている。
「で?王子様に出会えたと。」
「そうなの!もう本当に素敵な人で!あぁ、思い出しただけで胸がキュンとしちゃう。これが恋なのね。」
ほんのりピンク色に頬を染めてうっとりとしている由紀は色気がダダ漏れして超絶に美人だ。
周りの視線を釘付けにしてる事は、気づいていても気にはしていないんだろう。
「ふーん。チビでハゲで一重のデブなんでしょ。でもまぁ 唯一の救いは仕事が出来る事ね。ちなみに写真無いの?」
どのレベルか知りたい。
怖いもの見たさで見てみたい。
「あ、写真あるよ!何か学生時代に友人とニ人で会社を立ち上げたみたいなの。それからは仕事一筋だったらしくて…はぁ。あんな素敵な人が独身でいたなんて信じられない。」
スマホに映し出された写メを見て、私は視覚の暴力を受けた。
マジか。えっ?38歳?50歳じゃなくて?
年齢詐称してない?
頭バーコードだけど、ヒゲ濃くて口周り真っ青じゃん!
目とか開いてんのか寝てんのか分からないくらい糸目で鼻はぺったんこ。
身長は由紀の耳ぐらいだから160cm位か。
足とか由紀の膝くらいしかないんじゃない?
そして何より紫のシャツにオレンジのネクタイって!
せめてセンスは良くあれよ。
周りも止めようよ!アドバイスしてやって!
副社長なんでしょ!
スーツは良い物っぽいのに、裾を詰めすぎてライン崩れてるし…
デザイナーが見たら泣くぞ。
もう突っ込み所が多すぎて疲れる。
「あー、うん。由紀のワンピース可愛いね。似合ってる。さすがセンスあるわ。隣の人にもアドバイスしてあげたら?」
「ふふ、素敵な人でしょ。西条貴之さんて名前もかっこよくて、服のセンスも斬新よね。私には思いつかない配色だわ。それなのに服に負ける事なく似合ってるなんて!」
名前!西条って!もっとこう
戸愚呂とか轟とか似合いそうなのあるでしょ。
いや、全国の戸愚呂さん轟さんすみません。
「分かった、分かった。それで次に会う約束はしたわけ?」
「うん。帝和ホテルでディナーでもって誘われちゃった。ど、どう思う?」
おい、西条!
早すぎだろうが!
ホテルのディナーって。
2回目は水族館か映画がセオリーじゃない?
しかもそのホテルクリスマスや記念日に♡って人気のとこじゃん。
がっつきすぎ!
気持ちは分かるけどがっつきすぎ!!
いくら由紀の反応が良かったにせよ焦りすぎだわ。
「由紀は何て答えたわけ?」
「はい。楽しみにしてますって。」
「意味理解してる?」
「うん、もちろん。もう西条さん以上に素敵な人に出会える気はしないし、自分で決めたの。そこで加奈ちゃんに色々と相談したくて。その、下着とかな、な、流れ的な事とか」
真っ赤になりながらも覚悟を決めている目を見て由紀の本気を悟った。
そうか、由紀はこのブサイクに決めたのか。
このブサイクに由紀が抱か…イヤイヤ
無理無理無理無理無理…
ちらっと由紀を見ると真剣な表情で私の発言を待っている。
はぁ。
仕方ない。由紀が幸せなら私の価値観なんてどうでもいいじゃないか。
私も覚悟を決めよう!親友の為に。
「まずは下着ね…」
こうしてレッスンはコーヒーの追加を3回するまで続いた。
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