勇者と魔王は真実の愛を求めて異世界を渡り行く

usiroka

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第一章 勇者と魔王、そして神さま

第六話 水を差した理由

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「「…ッ!!」」 
 
あまりにも予想外の状況に二人は攻撃を止めることが出来ず、ぶつかり合いの中心にいた見知らぬ青年は二人の最大級の攻撃を容赦なく喰らう。 
 
「………ふぅ。」 
 
しかしぶつかり合いの中心にいた見知らぬ青年は二人のあれほどの攻撃をまともに喰らったのに、一切の傷を追わずに二人の攻撃を容易(たやす)くしっかりと受け止めていた。 
 
「「…なっ!?」」 
 
「ちょっと、ごめんね…。【ウェポン・ブレイク】」 
 
ぶつかり合いの中心にいた見知らぬ青年は、素手で受け止めていた勇者の剣をガラスのコップを地面に落として割るように粉々に砕いた。 
 
「そんな…っ!!」 
 
「…クッ!」 
 
魔王は突如現れた見知らぬ青年に攻撃をしようと残された魔力で魔法を放とうとするも 
 
「【マジック・ロッキング】」 
 
見知らぬ青年が先に放った魔法により、南京錠の形をした紋章が両手の甲に現れた途端魔王は魔法が使えなくなってしまった。 
 
「…っ!!」 
 
為す術をなくした二人は、限界を迎えて力尽きて虫の息となって地面に倒れこむ。 
 
「いやぁ…、間に合ってよかったよ…。」 
 
見知らぬ青年は胸を撫で下ろして何故か一安心していた。二人は意識が薄れていく中で、一体あの一瞬で何が起こったのか理解が出来ないでいた。 
 
「…おっと!話をする前に君たちを急いで治さないとね!」 
 
「「………?」」 
 
「【パーフェクト・ゴッド・ヒーリング】」 
 
謎の人物の右手から回復魔法が放たれ、二人をどんどん癒していく。 
 
「「…!!」」 
 
たったの数秒程度でもう助からないだろうと思われていた二人の体力やケガが一気に回復していき、治療が終わると二人の身体からは、自身が経験したことが無い程の元気が身体の底からあふれ出るような錯覚に囚われていた。 
 
「…おっと、君もそういえば魔法が使えたね…。悪いけど【マジック・ロッキング】で魔法を封じさせてもらうよ。」 
 
そう言って見知らぬ青年が指をパチンと鳴らすと、魔王と同様に勇者の両手の甲にも南京錠の形をした紋章が現れて、勇者も魔法を封じられてしまった。 
 
(…さて準備は整ったし、そろそろいいかな…。) 
 
謎の人物は何やら少し考えて、左手で短いシルクハットを押さえるしぐさをする。 
 
「…じゃあ自己紹介を。僕は…。」 
 
「…待てっ!!」 
 
見知らぬ青年が自己紹介しようとした瞬間に、魔王は地面から素早く起き上がって大きな声を挙げてそれを妨害する。 
 
「…傷を癒してくれたことには感謝しよう。…だがっ!!何故私たちの殺し合いを邪魔した!!どういうつもりでここに来た!?そしてお前は何者なんだ!!」 
 
魔王は怒りを交えた声で見知らぬ青年に質問をプレッシャーと共に投げかける。普通の人間や魔族であれば魔王のプレッシャーにはとても驚くであろう。しかし見知らぬ青年は 
 
「…。」 
 
少しキョトンとして真顔になっていた。 
 
「…あのねぇ魔王ちゃん、僕は今からそれを話そうとしてたんだよ…。それに僕はちゃんと殺し合いに水を差した理由もちゃんと言うから…。とりあえず僕は魔王ちゃんの言う通りメチャクチャ怪しいけど、包み隠さず全部話すからとりあえず落ち着いて。ねっ?」 
 
((…ま、ま、魔王…、ちゃん………!?)) 
 
『魔王ちゃん』と呼ばれ不快に思いながらも、見知らぬ青年にとても落ち着いた状態で的確に言葉を返された魔王は 
 
「…っはい。なんか…、スミマセン…。」 
 
と複雑な感情になりながらも、少し間抜けな声で答えることしかできなかった。 
 
「あっ!勇者くんもとりあえず変に僕の会話に水を差すような言葉は絶っ対に入れないようにねっ!!」 
 
((ゆ、…ゆ、勇者…、くん………?)) 
 
自分は何もしてないのにと思いながらも 
 
「あっ、ハイ…。」 
 
勇者は魔王と同じように複雑な感情になりながら、少し間抜けな声で『ハイ』としか答えられなかった。 
 
「では改めて…。……僕はロキ。ただの悪戯好きな神さまだよ。」 
 
「「…は???」」 
 
『自分を神さまである』と自称する見知らぬ青年のロキは、爽やかな笑顔で丁寧に自己紹介をする。 
勇者と魔王は自分を神さまだと自称をするロキに、『コイツ頭大丈夫か?』と酷く唖然した。 
 
「おっと!僕は正真正銘の神様だからね!勇者くんと魔王ちゃんが『コイツ頭大丈夫か?』と思ってるけど、世界中のそこら辺にいる厨二病の奴らみたいに決してイタイ奴ではないからね!!」 
 
((心の中を読まれたっ…!?)) 
 
ロキに心の中まで読まれて、『厨二病』という聞いたことのない言葉に疑問を寄せながら二人は少し驚いたものの、未だにロキに唖然としていた。
 
「まぁ…、長い話になるだろうと思うから、とりあえず椅子を出すから座って座って。」 
 
そう言ってロキが『パチン』と指を鳴らすと、三つほどフカフカで柔らかそうなソファが地面から現れた。 
勇者と魔王は警戒しながらも渋々とゆっくりソファへ腰を下ろした。 
 
「それじゃあ、話を進めようか。なんで僕がここに来たのかを…。」 
 
ロキも脚を組んでソファに座ると、話をする体制に入る。 
 
「僕がここに来た理由はただ一つ…。…それは。」 
 
「「……!」」 
 
 
 
 
 
 
 
「…それは、僕が君たちを見ていてとっても面白いと思える存在だったからさ!!!」 
 
 
 
 
 
 
 
「「………え???」」 
 
 
 
 
 
 
あまりにも予想外過ぎる答えに二人はポカンと口を空ける。 
 
「俺たちがロキから見て面白い存在だっただけにわざわざ今の殺し合いにに水を差したのか…?」 
 
「うん!そうだよ?」 
 
「「…。」」 
 
爽やかな笑顔であっさりと答えたロキに、二人は思わず黙って下を向いてしまう。 
 
「あれ…?二人ともどうしたの?おーい?」 
 
「「………けるな。」」 
 
「ん?」 
 
「「ふっざっけるなあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」 
 
大きな怒りを露わにして勇者と魔王はソファから思いっきり立ち上がる。 
 
「ど…、どうしたの二人とも…。」 
 
「…どうしたも、こうしたもあるかっ!!こっちは身を滅ぼす覚悟で殺し合いをした!!それをあっさりと止めて!!その理由が私たちが面白い存在だったからだと!?…ふざけているにも程がある!!!」 
 
「そうだ!!お前が身を挺してまで俺たちを止めた理由が面白い存在だったから!?ふざけるな!!!俺たちの殺し合いは全てを背負ったものだったんだぞ!!俺たちの殺し合いはそんなくだらない理由で止めていいものじゃないんだよ!!」 
 
二人は強烈な威圧を放って怒号の嵐をロキに向ける。普通の人ならかなり怯えるはずの迫力があるものであるが 
 
「はあああぁ…。」 
 
ロキは呆れて顔をしてため息を吐いていた。 
 
「あのねぇ…。だから僕はそんなことの為に来たんじゃないんだよ…。仮に勇者くんと魔王ちゃんの殺し合いが見たかったなら僕は姿を消して隠れながらも見ていたし、決着がつかないようにこっそり回復魔法を二人に使うようにしてたよ…。それに二人の戦いはレベルが低いから見てても面白くないんだよ…。」 
 
「「レベルが低いだと…!?」」 
 
ロキの発言は二人のプライドに触ってしまい、二人は怒りをさらに強める。しかしロキは二人を気にすることなく話を続けていく。 
 
「改めて言うけど僕は神さまだ。君たちよりも遥かな年数を生き、数えきれないほどの宇宙や世界を巡っていろんなもの見てきた、そして見てきた景色の中には、僕の想像すらを上回った戦いが何千・何億もあった。そんな戦いを見て来ただからこそ僕は君たちの戦いのレベルは低いと言っただけだ。ほら?おかしなことは何一つないだろ?」 
 
「「…!!」」 
 
あまりにもメチャクチャすぎるロキの正論に、二人のイライラは収まるどころかますます強くなっていく。 
 
「さて…、こちらも言葉を濁したようにして話したのは流石に謝ろう。ほらほら、君ら二人が何故僕が興味を引く程の面白い存在なのかちゃんと話すから二人とも座った座った!」 
 
「「…クッ!!」」 
 
剣も壊され、魔法も封じられ、何もできない二人はロキの言葉通りイラつきながら乱暴にソファに腰かける。 
 
「では改めて。僕が二人を面白い存在と思った理由、それはね…。」 
 
 
 
 
 
 
 
「「…。」」 
 
 
 
 
 
 
 
 
「この世界の命運を握るであろう勇者と魔王の君たち二人が、たった一枚の写真でお互いに禁断の一目ぼれをしちゃていたからさっ!!!」

 
 
 
 
 
 
 
「「…。」」 
 
 
 
 
 
 
 
 
「「………はっ、はあァァぁああ嗚呼ぁアあ亜阿ァぁぁあ唖あぁぁ亜あああアあぁアアあ嗚呼あ嗚亞ああアああ亞あ亜阿ああアあぁァぁっ!?」」
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