勇者と魔王は真実の愛を求めて異世界を渡り行く

usiroka

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第一章 勇者と魔王、そして神さま

第九話 二人が望んで願うこと

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「「………………。」」

この世界の真実を知ってしまった二人は、強いショックに脚の力が完全に抜けて地面にへばりついていた。

「…まあこれでも二人は一応両想いなんだし、さっきも言ったけどもういっそのこと『勇者と魔王は戦争は終わらせて結婚して幸せに暮らしましたとさ!』とか『勇者と魔王は駆け落ちして、その姿を見たものはもう誰もいませんでした。』にしちゃったら?」

「……無理よ。」

地面に伏せたまま魔王はロキの言葉を否定する。

「なんで?」

「私たちはロキの言ったように魔族と人間の代表…。私たちが強く愛し合ったとしても、駆け落ちしたとしても、いきなり戦争を辞めますと宣言したとしても、この世界の人々は誰もそんなことを絶対に認めようとしてくれない…。」

「…。」

「人間は魔族を…、魔族は人間を数千年間ずっと恨んでいた…。…私もその一人だった…。だから私たちはそれを晴らす為に…、消すために殺し合った…。今更それを全て無かった事にするなんて…。私がそれをしたくても誰も…、いや…、この世界そのものが絶対に許してくれない…。」

顔をぐしゃぐしゃにして泣きながら、魔王はこの場で初めて誰にも見せられなかった弱音をはいた。

「…!!」

好きになった人が目の前で泣いて苦しんでいるのに、好きになった相手が魔族という理由だけで励ますことすら出来ない自分の弱さと、魔族を励まそうとしないことを正義するこの世界に勇者は酷く腹を立てた。

「…そうかぁ。まぁそうだろうね。じゃあ、僕はこの場にいてももう意味は無いね…。貴重な時間を取らせてごめんね。じゃあ僕はこれd。」

「…待て!!」

脱力して崩れ落ちていた勇者は震えながらも何とか立ち上がり、帰ろうとしたロキを引き留める。

「…なに?」

「ロキ…、お前は…、神さまなんだよな…?」

「うん。最初からそう言ったじゃないか。」

「………だったら何で!…お前ら神さまは!…こんなふざけた世界を創りあげたんだっ!!」

「…?」

「こんなに近くに好きな人がいるのに…!泣いて苦しんでいるのに…!!それでも好きな人を助けられないなんて…、…ふざけるなっ!!」

「…。」

「勇者…。」

「今更理解したけど俺たちは最初から争うべきじゃなかった…。ちゃんとお互いに…、きちんと話し合うべきだったんだ…。」

「…。」

「だけど…!!それでも…!!お互いに両想いのはずなのに、俺たちが人間と魔族と言う理由だけで殺し合いをしなければいけないだなんて…!!あまりにもこの世界は理不尽だ…!!それに俺たちの運命も無駄死にしかできないないようにされているなんてあまりにも理不尽過ぎるじゃないかっ…!!」

勇者は激情に駆られるままにロキに近寄り、胸ぐらを強く掴む。

「…こんなくだらない争いがほとんど不要な平和な世界があるなら…!魔族や人間が最初から仲良くできるんだったらっ…!!そんな世界をっ…!!最初から作れるんだったらっ…!!この世界をっ…!!最初からそんな素晴らしい世界にしてくれよっ!!そして俺たちの運命もこの場で素晴らしいものに変えてみせろよぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「…。」

「うぅ…、うう…。」

悔しさで心がいっぱいだった。言えることは全部口から出した。

でも結局脅しに近い行動を起こすことしか出来ず、ただ目上の存在に愚痴を吐くようなことしか出来ない勇者は、ロキの胸ぐらから手を離すと拳を握り締めて下を向いて涙をこぼした。

「………フフフ。アハハ…。アーハッハッハッ!!」

話を聞いていたロキが大きな声で大笑いする。

「…何が、…おかしいっ!?」

「あー、いやいやゴメンゴメン。そういう訳じゃないんだ。」

笑って出てきた涙をロキは軽く指で拭く。

「…そうだよ。勇者くん、よくそれが言えたね。」

「何を…?」

「何をって、僕みたいな目上の存在にここまでしっかりと自分の願いを言ったんだ。」

「…?」

「あのまま何も行動に起こさないかと思ったけど、やるね。」

ロキは勇者の元に近づくと頭をポンポンと優しくなでた。

「さて…、勇者くんは自分の願いをここに示した…。魔王ちゃん、次は君の番だ。魔王ちゃん、君はどうなの?」

「…私は。」

声を震わせながらも、魔王はゆっくり立ち上がる。

「私は…、もう勇者と殺し合いなんてしたくないっ…!!…好きになって相思相愛と分かってても、相手が人間というだけでその恋が叶わないなんて嫌だ!!ロキにこんなことを言うなんておこがましいなんて分かっている…。でもっ…!!こんな酷い世界や運命が変わるなら…、今すぐここで変えて見せてよ!!神さまなら私たちを幸せに導(みちび)いてみせてよ!!」

ロキはその答えを聞くと満足げに笑った。

「…よしよし。そうだよね。好きになったのに。せっかく両想いになれたのに殺し合うなんてやりたくもないよね。…君たちの願いは今ここに届けられた。………だけど僕には残念ながら世界の運命を変える力は無い。」

「「…。」」

二人は一瞬だが希望に照らされた。だがやはり世界の運命を変えるということは神にでもできないということに二人は分かっていたつもりだったが、それでも大きく絶望に落とされていく。

「…だけど、二人の運命を今ここで変えることならできる!!【オープン・ゲート】ッ!!」

大きな声で発したロキは右手を大きく開くと、直径10mほどの大きな薄黒い穴を空間に作り出した。

「「これは…!?」」

「さあ!行くよ!!」

ロキは二人のスキをついて軽々と二人を持ち上げると

「…なっ!?」

「ちょっ!?ちょっと!!」

「せーのっ!!」

その穴の中へ二人を思いっきり放り込んだ。

「「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」















「「うぅ…。」」

「ほら、起きて二人とも!着いたよ!!」

穴から落ちた際に打った個所を押さえながら、二人は立ち上がる。

「イタタタタ…。」

「ここは…。」

そして目を開けた瞬間

「「!?」」

そこには人間と魔族が共存して、楽しく笑顔で過ごしているという自分たちが住んでいた場所では考えられないような光景が二人の目に移りこんできた。

「「…。」」

「ここは君たちがいた世界からはるか離れた場所にある世界…。その世界の名は『フォル・ディーム』…!!」

「「凄い…!!」」

まさに夢のような世界に二人はとても素直に喜び感動した。

「これは僕からのプレゼントだ。君たちにはこれからここに住んで余生を過ごしていけばいい。」

「……え?」

「…えぇ!?」

二人が夢に見ていた素晴らしい異世界にいきなり暮らせというロキの夢のような発言に、二人は流石に戸惑いを見せる。

「嬉しいけど…。」

「いきなりそれは…。」

強い嬉しさの中でもまだ二人の心の中にはわずかなわだかまりが残っていた。

「…勇者くん、魔王ちゃん。言っておくけど僕があのままあの場に水を差さなかったら、もう二人はとっくに死んでいたからね。」

「「でも…。」」

「それにどちらかが助かったとしても結局はそのどちらかが強い悲しみや絶望に落ちて辛い思いしながら残りの人生を生きることになっていたからね。」

「「…。」」

「どのみち君たちはあのままくだらない戦争の駒の一つとして死んだんだ。今はもうあの世界には勇者も魔王もいない。だからこれかはそんな重いものなんか捨てて、ここでお互いに幸せに新しい人生を過ごせばいい。」

「「…。」」

「…それともまたあの世界に戻って両想いと分かっていながらも悲しい殺し合いをするの?」

「「…!」」

その言葉を聞いて二人はもう一度殺し合った時の光景を思い浮かべる。

「「…。」」

ロキが現れる前なら思い浮かべたところで感じるのは僅かな悲しみや後悔だけだったであろう。

しかし今の二人にはもう二度と見たくもない光景へと変わっており、二人は嫌な汗を額から流していた。

「…これが最後だ。この夢と希望に溢れている君たちの望むこの世界で勇者と魔王と言った地位を全て捨てて、ただの一般人として二人仲良く生きていくのか。自分の人生を『勇者』・『魔王』として自分の思いを押し殺して空っぽの存在としてあの世界に戻って生きていくのか。…さぁ、どうするの?」

「……………俺は。」

「……………私は。」

そして二人が出した答えは









「「…この世界で生きていきたい。」」









地位や今までの功績を全て捨て、自分の願いに素直になることであった。




「…その答えを待っていた。そんな君たちの為にこれを渡しておこう。」

ロキは胸元から一枚の紙を取り出すと紙を二人に手渡した。

「ここの紙に書いてある場所に行けば君たちを助けてくれる人がいるはずだ。言葉も通じるし、魔法や武器も使える。君達の元々居た世界の事も上手く誤魔化しておくから、安心してここでの暮らしを楽しんで欲しい。」

「ロキ…。」

「…さて。僕はもうお邪魔虫みたいだし、もう行くね。」

「…あっ、あのっ!!」

「何?魔王ちゃん?」

「ありがとう…、ございます…。」

「……ありがとう。」

「いいって!いいって!!気にしないで!!じゃあね勇者君、魔王ちゃん。………いやそうじゃないな。」

「「…?」」











「じゃあね。ユウトくん、マナちゃん。」











「「!!」」

「【テレポート】」

ロキは満足そうに笑うと転移魔法を唱えて瞬時に二人の前から姿を消した。

((…。))






『ユウトとマナ』






二人がお互いの名前を初めて知ったこの日から、二人の複雑な運命と赤い糸は強く絡み合っていくのであった。
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