やまあらしのジレンマ

なごみ

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『…さんは片想いしている女性がいらっしゃることで知られていますが、その後の進展は?』

『いや、それが全然なんですよね。ほんと困ってます。』



「……。」

杏はテレビの電源を切った。
また付けっぱなしかとため息をつく。
朝から気分があがらないがこれから仕事だ。
切り替えなければならないと杏はお気に入りのチョコレートを口に入れた。




「おはようごさいます、杏さん。」

「おはよう。」

「杏さんは時間を守ってくださるから本当に助かります~。」

「ふふ、それいつも言ってるわ。」

「だって、本当に大変なんですからね!」

ころころと表情の変わる彼女に癒されながら車に乗り込む。

「えーっと、今日の杏さんの予定は午前中はファッション誌の撮影1つとその合間に取材を1つ、午後からは1つ取材を受けたあとテレビ局に移動して、Mustのリハと生放送です!」

「了解。」

「撮影はちょっと遠いので急ぎますね。」

「飛ばしすぎには注意よ、和葉ちゃん。」

ハンドルを握ると人格が変わる和葉に杏は念を押す。

「大丈夫ですよー!じゃあ、行きますね!」

急発進した車に杏はため息を吐いた。





「お疲れ様でーす。ささ、本番までにごはん食べちゃってください!」

「そんなにお腹すいてないんだけど…」

「食べなきゃダメですよ!腹が減っては戦はできぬです!」

和葉に無理矢理割り箸を握らされ、杏は苦笑いを浮かべた。

「そうだ!杏さん、今日のシークレットゲストって誰だと思います?」

和葉は台本をぺらぺらめくりながら杏に問う。
今日出演するMust!という番組は出演者がその日のテーマのMust、つまり、なくてはならないものを紹介する生放送トーク番組だ。
またトークだけではなく、歌手枠で出演しているゲストが生歌を披露する場面もある。
杏はその歌手枠で出演する。
そして、この番組の特徴としては毎回視聴者だけでなく出演者にも知らされないシークレットゲストがいることが挙げられる。

「やっぱり今旬の人ですかねー?」

「今までは番宣とかが多かったわよね。」

杏は溜まっていたメッセージに返信しながら答える。

「ですよねー!うーん…」

ーコンコン

「Azuさん、準備お願いします。」

「あ、もうそんな時間なんですね。杏さん、いきましょう!」

「えぇ。」

杏は開いていた画面を閉じると、今日の流れを思い出しながらスタジオへ向かった。
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