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31 最後のキス
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シャルリンテは、まだ夜の明けきっていない青白い空の下、一人でサシュナに向かってひたひたと走っていた。
下半身には、スーリに何度も抱かれたせいで、甘い痛みが残っていたが、足を止める事はしなかった。
足を少しでも止めると、耳元で囁かれたスーリの言葉が響いて、まともな思考ができなくなるから…。
スーリは結局、一晩中シャルリンテを抱いた。
正直、何回抱かれたのかは覚えていない。
スーリが自分を落とそうと、全力で向かってきた事は確かだ…。
『王女様…どうしても…私とはサシュナに行きたく…ない?』
とぎれとぎれにスーリがそう聞いてきた時、シャルリンテは朦朧としながらも頷いた。
スーリは切なげな瞳でシャルリンテを見て、力なく笑った…。
『王女様…。私の完敗です……』
そしてスーリは、シャルリンテの下半身に、避妊魔法をかけながら言った。
『…初めて会った日の事…覚えています…?』
シャルリンテはそう言われ、シャム猫みたいな美少女と出会った日の事をうすぼんやりと思い出していた…。
『私は、カルダンテ王に引きずられて…部屋に投げ込まれ…。どうせ、すぐに男だとバレると思っていたので毒を隠し持っていました。』
『…毒?』
『ええ…。小さい頃から飲まされていた耐性薬のせいで、私はちょっとやそっとの毒では効かないので猛毒を…』
シャルリンテは初めて聞かされた事実に、驚きながらも小さく頷いた。
『毒を飲んですぐに死のうと思っていたら、呑気にお菓子を食べながら本を読んでいる少女が目に入って…』
スーリはその時の事を思い出したのか、おかしそうにくっと笑った。
『結局、私はあなたのそばにいる事になった…。毒も捨てました』
『…じゃあ、毒を捨てた事、後悔した?その後続いた、私との生活など…辛かったでしょ』
シャルリンテは意地悪そうに、片方の眉毛を上げて聞いた。
『ふふっ…いえ。駆け引きばかりのシーセントにいた時より、ずっと楽しかった…。あなたは乱暴で口も悪かったけれど、駆け引きはしなかったから…』
スーリは横になると自分の腕に、シャルリンテの頭を引き寄せながら静かに言った。
『鳥籠の中のはずのあなたは、いつも自由で…惹かれないわけにはいかなかった…』
『……なにそれ…口説いてるの?』
『ははっ……口説いてはいない…』
そう笑うと、シャルリンテを抱きしめたまま、スーリは深い眠りに入ってしまった…。
シャルリンテは、しばらくスーリの寝息を聞いていた。
スーリが本格的に寝始めたのが分かるとスーリの腕を持ち上げ、こっそりと身を抜いた…。
そして、音を立てないように気をつけながらドレスを身に着け、ドアの方に向かった。
ドアノブに手をかけようとして、シャルリンテは、つい後ろを振り返ってしまった。
白んできた外の明かりで、ベッドに寝ているスーリの顔がよく見える。
繊細な白い肌…上品で綺麗な顔…。
やはり、美しい男だな…と思った。
こうして寝ていると、連れて来られたばかりの幼さの残るスーリと、大して変わっていないように見える…。
シャルリンテは、無意識のうちにスーリの元に戻ると、ベッドに跪き、唇にキスをした。
そして、小さな声で呟く。
「万に一つもありえないと思うけど…。サシュナに売り飛ばすっていうのは嘘かもしれない…。でも、そんな賭けに出られるほどの自信は、私には…ない」
シャルリンテは、唇を固く閉じると、すっと立ち上がった。
「…ごめんね、スーリ…。お金もあげられないし、恨みも晴らせないかもしれないけど…。どうしても…あなたに売り飛ばされるなんて事は…経験したくなかったの…」
そう言うと、シャルリンテは振り返る事なく部屋を出た。
宿を出られない魔術が、まだかかっていたらどうしようかと一瞬不安に襲われたが、宿の扉は簡単に開いた。
スーリの魔術は、もう解かれていた…。
下半身には、スーリに何度も抱かれたせいで、甘い痛みが残っていたが、足を止める事はしなかった。
足を少しでも止めると、耳元で囁かれたスーリの言葉が響いて、まともな思考ができなくなるから…。
スーリは結局、一晩中シャルリンテを抱いた。
正直、何回抱かれたのかは覚えていない。
スーリが自分を落とそうと、全力で向かってきた事は確かだ…。
『王女様…どうしても…私とはサシュナに行きたく…ない?』
とぎれとぎれにスーリがそう聞いてきた時、シャルリンテは朦朧としながらも頷いた。
スーリは切なげな瞳でシャルリンテを見て、力なく笑った…。
『王女様…。私の完敗です……』
そしてスーリは、シャルリンテの下半身に、避妊魔法をかけながら言った。
『…初めて会った日の事…覚えています…?』
シャルリンテはそう言われ、シャム猫みたいな美少女と出会った日の事をうすぼんやりと思い出していた…。
『私は、カルダンテ王に引きずられて…部屋に投げ込まれ…。どうせ、すぐに男だとバレると思っていたので毒を隠し持っていました。』
『…毒?』
『ええ…。小さい頃から飲まされていた耐性薬のせいで、私はちょっとやそっとの毒では効かないので猛毒を…』
シャルリンテは初めて聞かされた事実に、驚きながらも小さく頷いた。
『毒を飲んですぐに死のうと思っていたら、呑気にお菓子を食べながら本を読んでいる少女が目に入って…』
スーリはその時の事を思い出したのか、おかしそうにくっと笑った。
『結局、私はあなたのそばにいる事になった…。毒も捨てました』
『…じゃあ、毒を捨てた事、後悔した?その後続いた、私との生活など…辛かったでしょ』
シャルリンテは意地悪そうに、片方の眉毛を上げて聞いた。
『ふふっ…いえ。駆け引きばかりのシーセントにいた時より、ずっと楽しかった…。あなたは乱暴で口も悪かったけれど、駆け引きはしなかったから…』
スーリは横になると自分の腕に、シャルリンテの頭を引き寄せながら静かに言った。
『鳥籠の中のはずのあなたは、いつも自由で…惹かれないわけにはいかなかった…』
『……なにそれ…口説いてるの?』
『ははっ……口説いてはいない…』
そう笑うと、シャルリンテを抱きしめたまま、スーリは深い眠りに入ってしまった…。
シャルリンテは、しばらくスーリの寝息を聞いていた。
スーリが本格的に寝始めたのが分かるとスーリの腕を持ち上げ、こっそりと身を抜いた…。
そして、音を立てないように気をつけながらドレスを身に着け、ドアの方に向かった。
ドアノブに手をかけようとして、シャルリンテは、つい後ろを振り返ってしまった。
白んできた外の明かりで、ベッドに寝ているスーリの顔がよく見える。
繊細な白い肌…上品で綺麗な顔…。
やはり、美しい男だな…と思った。
こうして寝ていると、連れて来られたばかりの幼さの残るスーリと、大して変わっていないように見える…。
シャルリンテは、無意識のうちにスーリの元に戻ると、ベッドに跪き、唇にキスをした。
そして、小さな声で呟く。
「万に一つもありえないと思うけど…。サシュナに売り飛ばすっていうのは嘘かもしれない…。でも、そんな賭けに出られるほどの自信は、私には…ない」
シャルリンテは、唇を固く閉じると、すっと立ち上がった。
「…ごめんね、スーリ…。お金もあげられないし、恨みも晴らせないかもしれないけど…。どうしても…あなたに売り飛ばされるなんて事は…経験したくなかったの…」
そう言うと、シャルリンテは振り返る事なく部屋を出た。
宿を出られない魔術が、まだかかっていたらどうしようかと一瞬不安に襲われたが、宿の扉は簡単に開いた。
スーリの魔術は、もう解かれていた…。
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