王に振られた公爵令嬢は王の側近に拾われる

空田かや

文字の大きさ
33 / 52

33 好奇心

王は、笑いを止めて、聞き間違いかと聞き返す。

「性…?何と?」

「『性生活の謎』です…王。
確か、副題は…隠れ技を伝授……だったかと…。」

今度は聞き間違いなどではなく
この上品ぶっている女が、真剣な顔で
紡ぐはずのない言葉を紡いでいるのを
王は、確かに聞いた。

「ふぅ…。知らないが、何だそれは…。」

一呼吸置いて、笑い出したいのをこらえながら、王は平静を装って聞き返す。

「…いえ、そこに書いてある事を実践しましたら、そう言われたのです…。
人気の書物だと思って信用し過ぎました…。」

「聞いてもいいか…?何を実践したんだ?」

王は笑いをこらえながらも、好奇心が抑えられなかった。

「……はぁ。
何と申しますか…ルドン様のものを…。」

「──うむ。」

「いえ…。
とても口に出しては言えません…。」

王は続きが気になり、少しイラついた。

「──目を閉じろ。…後ろにまわるから。」

「…?」

スピナは王に言われるまま、目を閉じた。
すると、かぐわしい香のような、いつもの王の香りがスピナをふわりと包んだ。
気がつくと、王が後ろに座ってスピナの前に手を回していた。

「…王……?!なっ何を…!」

王の長い足は、膝を折った形でスピナの両側を包み込んでいる。

「目を開けるなら、こちらに振り返るなよ?
安心しろ…そなたには手を出さない。
仮にも、ルドンの妻だからな…今はまだ…。」

「…でっ…でも…。」

スピナは、この距離が異性として近いのかどうかも、混乱した頭では分からなかった。

「…で、そなたはルドンに何をした?」

息がかかるほどの距離で、後ろから王にささやかれスピナは頭が真っ白になった。
何も考えられなくなったスピナは、正直に話すしかなかった。

「ルドン様のものをくわえようとして……嫌がられ…ました。」

「……ああ…なるほど。
あいつは、積極的な女性を好まないからな…。
それは、私のせいでもあるのだが…。」

耳をゆでだこのように真っ赤にしてうつむいているスピナを見て、王は言葉を続けた。

「──もしくは、純粋なそなたを穢したくなかった…とか?
まぁ、単に心の底から嫌だったというだけかもな。」

スピナは、初恋だった王に抱きしめられ
こんな会話をしている事に、体中の水分が
沸騰して、蒸発していくような錯覚を覚えた。

──だが、そこに王への嫌悪感はない。

そもそも、王の事を嫌いになって恋をするのをやめたわけではない。
卒業パーティーで無視をされても、嫌いにはなれなかった。

もちろん、学生時代のような王への恋心は今はもう…ない。

ルドンと結婚して、そして恋に落ちて…そして
いつの間にか、王への恋心が消えていた…。

ただ、恋愛感情ではなくとも王の事を好きだという感情は、ある。
異性として王に魅力があるという事実は、否定できない。

王は無意識のうちにスピナの首にかかっている
長い黒茶色の髪を分け、そこに現れた
白く細い首に、キスをした。

「……王?!何を…!」

スピナは、王の行動に動揺した。

「まぁ…私ならそなたのような女にそんな事を
されたらかえって興奮して…悦ぶが…。
あいつは堅物だから…。
だが、そなたの反応を見ていると、本当に
ルドンに抱かれた事があるのかさえ疑わしいが…。」

スピナの白い首筋を、長い形のいい指で王はそっとなぞった。

「……もしかして、そなたは処女のままなのでは?」

あなたにおすすめの小説

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

悪女は愛より老後を望む

きゃる
恋愛
 ――悪女の夢は、縁側でひなたぼっこをしながらお茶をすすること!  もう何度目だろう? いろんな国や時代に転生を繰り返す私は、今は伯爵令嬢のミレディアとして生きている。でも、どの世界にいてもいつも若いうちに亡くなってしまって、老後がおくれない。その理由は、一番初めの人生のせいだ。貧乏だった私は、言葉巧みに何人もの男性を騙していた。たぶんその中の一人……もしくは全員の恨みを買ったため、転生を続けているんだと思う。生まれ変わっても心からの愛を告げられると、その夜に心臓が止まってしまうのがお約束。  だから私は今度こそ、恋愛とは縁のない生活をしようと心に決めていた。行き遅れまであと一年! 領地の片隅で、隠居生活をするのもいいわね?  そう考えて屋敷に引きこもっていたのに、ある日双子の王子の誕生を祝う舞踏会の招待状が届く。参加が義務付けられているけれど、地味な姿で壁に貼り付いているから……大丈夫よね? *小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。