王に振られた公爵令嬢は王の側近に拾われる

空田かや

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33 好奇心

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王は、笑いを止めて、聞き間違いかと聞き返す。

「性…?何と?」

「『性生活の謎』です…王。
確か、副題は…隠れ技を伝授……だったかと…。」

今度は聞き間違いなどではなく
この上品ぶっている女が、真剣な顔で
紡ぐはずのない言葉を紡いでいるのを
王は、確かに聞いた。

「ふぅ…。知らないが、何だそれは…。」

一呼吸置いて、笑い出したいのをこらえながら、王は平静を装って聞き返す。

「…いえ、そこに書いてある事を実践しましたら、そう言われたのです…。
人気の書物だと思って信用し過ぎました…。」

「聞いてもいいか…?何を実践したんだ?」

王は笑いをこらえながらも、好奇心が抑えられなかった。

「……はぁ。
何と申しますか…ルドン様のものを…。」

「──うむ。」

「いえ…。
とても口に出しては言えません…。」

王は続きが気になり、少しイラついた。

「──目を閉じろ。…後ろにまわるから。」

「…?」

スピナは王に言われるまま、目を閉じた。
すると、かぐわしい香のような、いつもの王の香りがスピナをふわりと包んだ。
気がつくと、王が後ろに座ってスピナの前に手を回していた。

「…王……?!なっ何を…!」

王の長い足は、膝を折った形でスピナの両側を包み込んでいる。

「目を開けるなら、こちらに振り返るなよ?
安心しろ…そなたには手を出さない。
仮にも、ルドンの妻だからな…今はまだ…。」

「…でっ…でも…。」

スピナは、この距離が異性として近いのかどうかも、混乱した頭では分からなかった。

「…で、そなたはルドンに何をした?」

息がかかるほどの距離で、後ろから王にささやかれスピナは頭が真っ白になった。
何も考えられなくなったスピナは、正直に話すしかなかった。

「ルドン様のものをくわえようとして……嫌がられ…ました。」

「……ああ…なるほど。
あいつは、積極的な女性を好まないからな…。
それは、私のせいでもあるのだが…。」

耳をゆでだこのように真っ赤にしてうつむいているスピナを見て、王は言葉を続けた。

「──もしくは、純粋なそなたを穢したくなかった…とか?
まぁ、単に心の底から嫌だったというだけかもな。」

スピナは、初恋だった王に抱きしめられ
こんな会話をしている事に、体中の水分が
沸騰して、蒸発していくような錯覚を覚えた。

──だが、そこに王への嫌悪感はない。

そもそも、王の事を嫌いになって恋をするのをやめたわけではない。
卒業パーティーで無視をされても、嫌いにはなれなかった。

もちろん、学生時代のような王への恋心は今はもう…ない。

ルドンと結婚して、そして恋に落ちて…そして
いつの間にか、王への恋心が消えていた…。

ただ、恋愛感情ではなくとも王の事を好きだという感情は、ある。
異性として王に魅力があるという事実は、否定できない。

王は無意識のうちにスピナの首にかかっている
長い黒茶色の髪を分け、そこに現れた
白く細い首に、キスをした。

「……王?!何を…!」

スピナは、王の行動に動揺した。

「まぁ…私ならそなたのような女にそんな事を
されたらかえって興奮して…悦ぶが…。
あいつは堅物だから…。
だが、そなたの反応を見ていると、本当に
ルドンに抱かれた事があるのかさえ疑わしいが…。」

スピナの白い首筋を、長い形のいい指で王はそっとなぞった。

「……もしかして、そなたは処女のままなのでは?」

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