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24時限目 対抗戦、迫る(1)
しおりを挟む授業開始時間から遅れて、ダンテは浮かない顔で教室に入ってきた。いつもと違う様子にリリアが怪訝そうに言った。
「先生どうしたの? 顔、おっかないよ」
「……いや、そうか? そんなことないぞ」
顔を上げたダンテは表情を変えて、笑顔を作ってみた。さっき起こったことを悟られないように、いつも通りの笑みを浮かべてみたつもりだった。
だが、その笑顔を見てリリアはますます眉をひそめて、ミミたちの方を振り向いた。
「やっぱおかしい」
「おかしいニャ」
「……おかしいです……何かを隠しています」
「……ちっ」
ダンテは面倒臭そうに舌打ちを打った。自分の嘘の下手さを恨みながら、ちらりとシオンの方を見た。やはり彼も怪しむようにダンテのことを見ており、ダンテと視線が合うと何かを察したようだった。
「……先生、イムドレッド、見つかったんですか」
鋭い。
ダンテは言葉に窮した。絡んでいる厄介ごとの危険度からいうと、本当のことを言うのは非常にまずかった。気まずい沈黙をよそに、何も知らないリリアたちだけが、呑気に反応した。
「え? イムドレッド帰ってくるの?」
「楽しみだニャあ。元気だったかニャあ」
「……ようやく全員揃うね」
「あー……」
喜ぶリリアたちを見て、ダンテはますます本当のことが言えなくなった。退学寸前まで話が進んでいることを知れば、どんなことになるかは目に見えている。しかし適当にごまかすことは、シオンがいる限り無理な話だった。シオンは再びダンテに質問してきた。
「イム、見つかったんですか」
「……居場所は分かった」
本当のことを言うしかなかった。ダンテは教卓にクラス簿を置くと、シオンたちに向かって話し始めた。
「結論から言うと、イムドレッドは退学寸前だ。それくらいのところまで話が進んでいる」
「……そんな」
「あいつの真意を探りにいくように、アイリッシュ卿から依頼された。その答え次第では、どうなるかは分からない」
「居場所はどこですか」
珍しく強い口調でシオンは言った。身を乗り出して、彼はダンテに問いかけていた。長く伸びた前髪の奥の瞳がまっすぐにダンテのことを見ていた。
「イムは今、どこにいるんですか。僕が話をつけてきます」
「それは言えない」
「どうしてですか」
「相手がヤバイ連中だからだ。子どもが行ってどうにかなる場所じゃない」
ダンテの言葉にシオンは衝撃を受けて表情を凍らせた。何も言えずに彼は、目を見開いていた。彼の驚きと悲しみは痛いほどに伝わってきた。
「まだ何も決まった訳じゃない」
「……でも」
「大丈夫。俺が何とかする」
「何とかなるんですか」
「五分五分だ」
残酷だとは分かっていたが、ダンテはシオンに本当のことを言おうと決めていた。イムドレッドが帰ってこない可能性があることを、正直に伝えるしかシオンを納得させる方法はなかった。
「これはイムドレッドの選択次第だ」
ダンテの言葉に、シオンは何も言わず悔しそうに表情を曇らせていた。
「……シオン。イムドレッドを心配する気持ちは分かるけれど、先生の言うことももっともだよ」
うなだれるシオンをリリア優しく諭した。
「旧市街は本当に危険なんだから。シオンみたいに可愛い子が言ったら、犯罪に巻き込まれちゃうかもしれないよ。そうしたら、もっとひどいことになる」
「そういうことだ。イムドレッドは探して話はつけてくる。だから、このことは俺に任せてくれ」
「……はい」
「本当に納得したか?」
下を向くシオンの長いまつげが、風に揺れていた。じいっと黙して考えを巡らせた後で、シオンはこくりと頷いた。
「……分かりました」
それ以上、シオンは何もいわなかった。やや未練がありそうな様子に若干の不安を残しつつも、ダンテはもう一つの懸念を伝えることにした。
「あともう一つ言わなきゃならんことがある。こっちの方がお前らに大きく関わる問題だ。今度の対抗戦で成績を残せなかった場合、お前らの退学が決まった」
「えっ」
藪から棒に、突きつけられた事実に四人の表情が固まった。
「教員会議で決まったことだ。こればっかりは逆らえない」
「そんな急に……」
「無理は承知だ。でも不可能じゃない。この三週間で追い込みをかけるぞ。だからこうしてる暇じゃないんだ。校庭に出ろ。特別授業だ」
「マジか……」
「いきなり崖っぷちニャ……」
戸惑いの表情を見せる四人を引き連れて、ダンテは校庭に全員を並べた。校庭の真ん中で念入りに準備運動を始めた。
「今日は訓練場じゃないニャ?」
「そうだ。もう直線的な動きは避けられるようになってきている。だから訓練のレベルをもう一段階上げる」
「もう一段階?」
「不規則な軌道に対応する力だ。ついでに基礎体力をつけるのにちょうど良い」
身体を伸ばし終わると、さっそくダンテが何やら魔導を展開し始めた。
ダンテを中心に砂埃が舞い上がる。得体の知れない寒気が四人を襲った。恐ろしいほど強い力の片鱗が、すぐ目の前にあった。
手をかざして、ダンテはその真名を呟いた。
「エレナ。久しぶりの出番だ」
ダンテが手を振り下ろすと、辺りにまばゆい電光が走った。視界が真っ白くホワイトアウトした後で目を開くと、そこには手のひらに収まるほどの小さな妖精が飛び交っていた。
「キキキ!」
四匹の妖精は太陽の光を反射して、色とりどりに輝いていた。
「こいつらがお前らの特別講師、小妖精のエレナだ。よろしくしてやってくれ」
「妖精……!?」
「……初めて見た……」
唖然と口を開ける生徒たちの前で、妖精たちがキキキと楽しそうに舞っていた。
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