王都から追放されて、貴族学院の落ちこぼれ美少女たちを教育することになりました。

スタジオ.T

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41時限目 学内対抗戦(2)

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 校舎裏の森を整地されて作られたスタジアムは半径ニキローメトル弱の円形になっている。高々とそびえる木々や、鬱蒼うっそうと茂る草原が視界を塞いでいる。索敵さくてきの能力も求められるこのステージでの戦いは、生徒たちの総合的な能力が求められている。

「……緊張してきた……」

 森の中の開けた広場にはマキネスとリリアが立っていた。マキネスが中央に、リリアがその少し離れた場所に立っている。

「マキネスでも緊張するんだ」

「……うん、うまくいくかな……」

「大丈夫だよ、たぶん……きっと」

 昨日フジバナが作り出した模造人形コピーキャットに、リリアは視線を送った。今回の対抗戦にはイムドレッドとシオンもエントリーされている。二人に決して注意を向けさせないようにするというのも、作戦の一部だった。

 リリアはふっと息を吐いた。腰にぶら下げた模造剣が随分と重く感じる。この一戦にすべてがかかっていると考えると、足の震えは止まってくれなかった。リリアは自分の頬をパチンと叩いて気合を入れた。

「……よし!」

 戦場をしっかりと見据える。ぶら下げている剣のことは考えない。自分がやるべきことは、作戦を成功させること。抜けるような青空を見て、リリアが覚悟を決めたと同時に、戦闘開始のブザーがスタジアムにこだました。

 ブー!

 鳴り響く大きな音と共に森を駆けてくるいくつもの音が聞こえてきた。他のクラスは十数人単位で動いている。あらかじめ目をつけていたのか、ボーンクラスの生徒たちが、すでにリリアとマキネスを取り囲んでいた。

「なんだ二人しかいないのか」

「悪いが、ポイントいただくぜ」

 じりじりと迫ってくる三人の生徒たちは、模擬剣を構えて悠々と近寄ってくる。以前相手をした「ボーン」の生徒たちは、容易くポイントを稼げると知っていて、ナッツ組を狙っていたようだった。

 他にも近づいてくる気配がある。全員が協力して袋叩きにするつもりなのだろう。この開始早々のピンチは、ダンテの読み通りだった。

「マキネス、お願い!」

「……うん」

 リリアの合図でマキネスが魔導を展開する。
 手をかざし、目を閉じ、彼女は真名マナを口にした。

大きなメイル大きなメイル守護對天ガーディアン

 大事なのは、今自分にできることをすること。
 今回は出し惜しみしない。自分の中にある膨大な魔力量を活かして、彼女は地面から特大の触手を呼び出した。

「……お願い力を貸して」

 祈るようにマキネスがつぶやいた。自分ができること。自分の力から目をそらさないこと。マキネスの言葉に応えるように地面が鳴動する。ぐらぐらと揺れた大地がひび割れて、中からおぞましいタコの一本足が覗く。

「な、なんだ……!?」

 近づいてきていた生徒たちは、予想外の出来事に対処することができなかった。触手の誕生によって盛り上がる大地に巻き込まれて、ガクガクと足を震わせて場にへたり込んだ。

 その大きさは規格外。
 スタジアムの中央に出現した触手は、どこからでも目につく巨大なものへと進化した。大きく膨らんだ、その天辺ではマキネスがほっと息をついていた。

「……とりあえず成功……」

 観戦席で見ていたアイリッシュ卿もあまりの大きさに「ほう」と目を見開いた。

「あれは……」

「マキネスの魔導です。今回は手加減しないように言いました。あの娘はいつも自分の力をセーブしていましたから。隊長からの指示です」

「そうですか。治療魔導の大家がここまでの召喚魔導を……」

 唖然あぜんとした様子のアイリッシュ卿にフジバナが説明する。モニターに映された他の生徒たちの様子を見て、アイリッシュ卿は心配そうに言った。

「ですが、これでは他の生徒たちに自分の居場所を教えているようなものです。あの子たちを狙おうと人が集まってきてます」

「問題ありません。それが狙いです」

 アイリッシュ卿はそれぞれの生徒たちの動きを改めて注視した。触手を取り囲むように集まってきた他クラスの生徒たちは、一人地上に取り残されたリリアを狙っていた。
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