魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

スタジオ.T

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第112話 嘘

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 「『死者の檻パーターラ』」

 レイナの灰色の魔力が俺の視界を包む。俺が渡した魔力を振り絞り、彼女は再び魔法を発動した。
 
 視界の端で、サティのものとは違う柔らかな光が明滅した。

「何を……?」

 理解が追いつかない。
 『死者の檻パーターラ』。死者を呼び出す魔法を、なぜレイナはこの場面で唱えたのか分からなかった。

「お願いします。2人とも」

 レイナは懇願こんがんするように言った。
 うっすらと目を開けると、俺たちの前に現れたのは2つの影だった。颯爽さっそうと現れた2人は明るい声で、俺に微笑みかけた。

「や、お待たせ!」

「ナツ……パトレシア……?」

 現れるやいなや彼女たちは魔法を発動した。
 さっきまでの2人からは考えられないほどの、異常なほどの魔力が湧き上がる。パトリシアの雷撃がサティのほこを打ち返し、ナツが創り出したゴーレムが追撃を防いだ。

 サティの攻撃がかき消えてく。
 
 まだ辛うじて生きている。
 俺は呆然と2人の姿を見ていた。

「どうして……?」

「まぁ、気にしない気にしない! それよりか、レイナちゃん、この後はどうすれば良い?」

「女神をとらえます。当初の予定とは違いますが、この局面になってしまった以上は仕方がないです」

「オッケー、まぁ、やってみるよ。レイナちゃんは本当にそれで良いの?」

 ナツの言葉に、レイナは頷いた。

「構いません。アンクさまの命が最優先ですから」

「……分かった。じゃあ行くよ」

 パトレシアの身体が跳ぶ。
 雷をまとって、超高速で跳んだパトレシアの身体は、唖然あぜんとして立ちすくむサティに攻撃を放った。それを援護するように、ナツの魔法がサティの周囲を取り囲む高い壁を作った。

「地の魔法、望て遊ぶものサイティブ・トール……!」

 そこから巨大な岩の拳を創造し、ナツは謝りながら振り下ろした。

「ごめんね、サティちゃん。私たちも悪気はないんだよ……!」

「……っ。割には本気じゃないか」

「悪気はないけど、本気ってこと!」

 ドオオオオオン! と地面が割れるほどの衝撃が響く。間一髪で岩の拳をかわしたサティに、今度はパトレシアの雷電が襲いかかった。雷をまとった金色の髪をなびかせたパトレシアは、宙に浮いたサティに照準を定めていた。

「とらえた!」

 直撃するかに見えた雷電をサティは天の鉾で迎え撃った。雷の魔法はサティのギリギリで2つに分裂して、壁をえぐって更に地下祭壇を破壊した。

 ガラガラと壁が崩れて、粉塵ふんじんが舞う。

「すげぇ……」

 形勢は再び五分五分に戻っていた。
 意識を取り戻したナツとパトレシアの魔力は、今までの比ではなかった。次から次へと最強クラスの魔法を連発する2人に、さすがのサティも対応に苦慮くりょしているようだった。

 気がつくと、身体を修復したレイナが俺の横に座って、俺の魔力炉に手をかざしていた。
 
「アンクさま、今、魔力を与えます。大人しくしていてください」

「あ、あぁ……しかし、何がどうなっているんだ。パトレシアとナツがどうしてこんな力を持っているんだ。それにさっきの魔法は……」

「今は知らなくても良いことです。それより、アンクさまは大変危険な状態です。全てが済むまで絶対に動かないでください」

「動けたくても動けないよ。足の感覚がもうないんだ」

 身体の崩壊は、サティが戦闘中だからか、一旦は落ち着いていた。だが、レイナがいくら魔力を注ぎ込もうとも、失われた感覚は戻ることがなかった。

 満足に四肢ししを動かすことも出来ない俺を見たレイナは、悔しそうに唇を噛んだ。

「やはりアンクさまにかけられている『死者の檻パーターラ』は術者以外の魔力干渉を受け付けないようになっていますね……原型を留めるので精一杯です。アンクさま痛みはないですか?」

「あぁ、だいぶ楽になった。だからレイナたちも早く逃げてくれ。いくらお前たちが強くても、女神に敵わないのは分かるだろ。あいつの魔力は無尽蔵むじんぞうなんだ」

「大丈夫です……きっとあの2人ならやってくれるはずです」

 レイナはそう言ったが、戦況はかんばしくなかった。端から見ても、ナツとパトレシアの攻撃が見切られ始めていることは確かだった。

「天の魔法、罰には苦痛をトリシューラレイ

 サティが展開した槍の雨が、2人をめがけて降り注ぐ。襲いかかるいくつもの矢を、ナツの土人形が盾となって向かい撃ったが、あっけなく破壊されてしまった。

「あー、私の土人形ゴーレムちゃーーん!! ちょっとー、サティちゃん、少しは手加減してよー!!」

「嫌だよ、本気って言ったじゃないか」

「うわーーーん! 人でなしぃ!」

 サティは容赦なく追撃の鉾を投擲とうてきした。対するナツは、地面を隆起させて土の壁を作ったがあっさりと貫かれた。

そらの魔法・雷電の舞クードフードル!」

 青い稲妻をまとったパトレシアが横から飛び出て、ほこを蹴り飛ばして軌道をずらす。以前よりも瞬発力と威力を増したパトレシアの攻撃だったが、空中に浮いた隙をサティは見逃さなかった。

「げぇ……ミスった」

 青ざめた顔のパトレシアが、光の鉾による第3撃を視認する。
 纏っていた雷電を放出させて何とか防御しようとしたパトレシアだったが、敵わずに地面へと叩きつけられた。「なんか今日、調子わるいなー!」と悲しそうな叫びとともに、パトレシアは場外へと吹き飛ばされた。

「パトレシアー!」

「次は君だよ」

 サティはナツにも狙いを向けている。わずか数秒にも満たない間に、いくつもの光の鉾を展開していた。

「わー! ちょっ、ちょっとタンマー! 地の魔法、望て遊ぶものサイティブ・トール!」

 飛んでくる光の鉾に、土人形ゴーレムで防御しようとしたナツも、生成が間に合わず呆気なく吹っ飛ばされた。バラバラに砕かれた土人形の破片とともに、ナツも祭壇の壁まで吹っ飛ばされた。

「きゅう……」

 目を回してこてんと倒れてしまったナツたちを見て、サティは軽くため息をついた。

「君たちは私の力を甘く見過ぎだ」

 サティから無慈悲なほどに強い魔力が放たれる。間違いなく俺たちを消滅させる気だ。今度はサティやパトレシア。この地下祭壇もろとも破壊される。

「甘く……見てなどいません……」

 膨大な量の魔力を見ながら、レイナはそれでも諦めずにサティをにらみつけていた。
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