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第139話 旧サラダ村跡地へ再び
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「いやぁ、ゆうべはずいぶんとお楽しみだったようで!」
翌日起床してキッチンに降りていくなり、ニックは開口一番、元気良く言った。
「どこで覚えたんだそんなセリフ……」
少し寝すぎてしまったようだ。午前9時と言ったところだろう。さんさんと輝く太陽がカーテンの隙間から覗いている。今日も良い天気だ。
「おはよー、アンクー」
俺より少しあとにリタが起床した。昨日、魔力補給を行ったせいか顔色が良いように思える。
「あら、奥さま! おはようございます!」
「やー、もー、奥さまだなんて。やぁねぇ!」
満更でもない顔でリタは平手でバシンとニックに肩を叩いた。地味に痛かったらしく、ニックは「うぐっ」とうめき声を漏らした。
「いやぁ、絶好調だね。魔力もみなぎっているし、女神狩りにもってこいの日だね」
「女神狩りって……」
「いやぁ、冗談、冗談! さー今日の朝ごはんはなにかなー」
完全にリタの地に足が付いていない。こんな調子で大丈夫なのだろうか。少し不安になってきた。
ニックが作ってくれた生ハムのサンドウィッチを食べる。
この食事も大変お気に召したらしく、リタは余ったサンドウィッチをバスケットの中に詰めていた。
「まるでピクニックだな……」
「良いの良いの、腹が減っては何とやら! あ、ニック、コーヒーを水筒につめておいて」
「はいよぉ。ところでどちらに行かれるんで?」
「旧サラダ村跡地よ」
「……そりゃまぁ大変なところですが……まるでピクニックに行かれるみたいですなぁ」
「そう思うよな」
「これくらいテンション上げていかないとやってられないのよ」
かくして左手にサンドウィッチの入ったバスケット、右手にコーヒーの入った水筒を抱えたリタと共に旧サラダ村跡地へと向かうことになった。
「よし、準備万端! レッツゴー! ニック、行ってきまーす」
「気をつけてー」
ニックに送り出されて家を出た。
隣を歩くリタは鼻歌を歌いながら、軽快な調子で歩いていた。
「キャラ崩壊していないか」
「実は緊張でガッチガチよ。テンション上げてるのは現実逃避……コーヒーいる?」
「いただきます」
旧サラダ村跡地までは一旦国道まで出てから、森の方へと道を外れる。
子どもの頃暮らしていた村だから、ある程度まで行けば、俺の庭みたいなものだ。
「ところで旧サラダ村のどの辺りまで行けば良いんだ? 村って言っても面積はそこそこあるし、離れたところに建っている家もある。瘴気が出ているから、のんびり探索している余裕もないぞ」
「そんなの簡単。瘴気の濃いところへ行けば、自ずと分かるわよ」
「つまり危険な方に進めってことだな」
「そういうこと」
国道を外れて、森の方へと進んでいく。
湿った地面を慎重に踏みしめながら歩く。視界の先には不気味な霧が立ち込めている。獣の呻り声が遠くから聞こえてくる。
「久しぶりだな、ここに来るのも」
「それ、本当?」
「え?」
「つい最近も来たことあるんじゃないの?」
そういえば、そんなこともあるような気がする。
べとりと肌につくような嫌な湿気。おぼつかない視界。そして前を歩く、騒がしい鳴き声をあげるロバ。
そして、その上に乗った小さな人影。
間違いない。記憶の鍵が近づいてきている。
「こっちだ」
なんとなく分かり始めてきた。右へと方向を変える。
瘴気が濃い方向。歩くたびに心臓が高鳴る方向へと進んでいく。
……呼吸が苦しい。
「アンク、危ない!」
リタが叫び声をあげる。
その間にも森のハンターは、俺のすぐ背後へと迫っていた。
ただの獣じゃない。
長い胴体としたたかな頭脳を持った怪物。
「なんで……ナーガがここに」
「風の魔法、裂戒の飛!」
牙を向けて襲い掛かってきたナーガに、リタが手刀を放つ。圧縮された空気が、鎌のような形になって無防備なナーガの首を襲う。
「ギャオオオオオオオ!!」
断末魔をあげてナーガは崩れ落ちた。胴体と首が真っ二つに裂かれて、蛇の魔物はだらだらと気味の悪い血を地面に垂らした。
でかい。
人間の数倍のサイズはある巨体だ。
「どうして、こんなところにナーガが……?」
「本来は存在しない幻影魔獣だよね。『異端の王』が手ずから作り出した魔物が、まだこんなところにいたなんて。まるで……」
————まるで、あの時みたいだ。
そう口走ろうとして頭痛が走る。脳みそを針で刺されたような鋭い痛みが、頭の奥を襲う。
「いっつ……!」
「大丈夫か?」
「……問題無い。ナーガは強力な毒を持っている、気をつけろよ」
周囲に向けて索敵《サーチ》を展開する。
勘の良いナーガたちは俺が魔法を展開したのを確認すると、すぐさま補足範疇外へと距離をおいた。やはり、一筋縄ではいかないようだ。
「索敵範囲を拡張したいけど、魔力の消耗が厄介だな……面倒な敵だ」
「あまりここで魔力を消費し過ぎない方が良い。本番はまだこの先にいるから、アンクは索敵を解いて大丈夫」
「しかし……」
「私がなんとかする」
そう言うとリタはポケットから大きな扇子を取り出した。白い羽が飾り付けられたそれを掲げると、持ち手のところから魔力を注ぎ込み始めた。
「魔導具か」
「わたしの魔力を増幅させる様に作られた特化型の魔導具。……危ないから、ちょっと下がってて」
リタは扇を掲げて、前方の森へと向けた。
翌日起床してキッチンに降りていくなり、ニックは開口一番、元気良く言った。
「どこで覚えたんだそんなセリフ……」
少し寝すぎてしまったようだ。午前9時と言ったところだろう。さんさんと輝く太陽がカーテンの隙間から覗いている。今日も良い天気だ。
「おはよー、アンクー」
俺より少しあとにリタが起床した。昨日、魔力補給を行ったせいか顔色が良いように思える。
「あら、奥さま! おはようございます!」
「やー、もー、奥さまだなんて。やぁねぇ!」
満更でもない顔でリタは平手でバシンとニックに肩を叩いた。地味に痛かったらしく、ニックは「うぐっ」とうめき声を漏らした。
「いやぁ、絶好調だね。魔力もみなぎっているし、女神狩りにもってこいの日だね」
「女神狩りって……」
「いやぁ、冗談、冗談! さー今日の朝ごはんはなにかなー」
完全にリタの地に足が付いていない。こんな調子で大丈夫なのだろうか。少し不安になってきた。
ニックが作ってくれた生ハムのサンドウィッチを食べる。
この食事も大変お気に召したらしく、リタは余ったサンドウィッチをバスケットの中に詰めていた。
「まるでピクニックだな……」
「良いの良いの、腹が減っては何とやら! あ、ニック、コーヒーを水筒につめておいて」
「はいよぉ。ところでどちらに行かれるんで?」
「旧サラダ村跡地よ」
「……そりゃまぁ大変なところですが……まるでピクニックに行かれるみたいですなぁ」
「そう思うよな」
「これくらいテンション上げていかないとやってられないのよ」
かくして左手にサンドウィッチの入ったバスケット、右手にコーヒーの入った水筒を抱えたリタと共に旧サラダ村跡地へと向かうことになった。
「よし、準備万端! レッツゴー! ニック、行ってきまーす」
「気をつけてー」
ニックに送り出されて家を出た。
隣を歩くリタは鼻歌を歌いながら、軽快な調子で歩いていた。
「キャラ崩壊していないか」
「実は緊張でガッチガチよ。テンション上げてるのは現実逃避……コーヒーいる?」
「いただきます」
旧サラダ村跡地までは一旦国道まで出てから、森の方へと道を外れる。
子どもの頃暮らしていた村だから、ある程度まで行けば、俺の庭みたいなものだ。
「ところで旧サラダ村のどの辺りまで行けば良いんだ? 村って言っても面積はそこそこあるし、離れたところに建っている家もある。瘴気が出ているから、のんびり探索している余裕もないぞ」
「そんなの簡単。瘴気の濃いところへ行けば、自ずと分かるわよ」
「つまり危険な方に進めってことだな」
「そういうこと」
国道を外れて、森の方へと進んでいく。
湿った地面を慎重に踏みしめながら歩く。視界の先には不気味な霧が立ち込めている。獣の呻り声が遠くから聞こえてくる。
「久しぶりだな、ここに来るのも」
「それ、本当?」
「え?」
「つい最近も来たことあるんじゃないの?」
そういえば、そんなこともあるような気がする。
べとりと肌につくような嫌な湿気。おぼつかない視界。そして前を歩く、騒がしい鳴き声をあげるロバ。
そして、その上に乗った小さな人影。
間違いない。記憶の鍵が近づいてきている。
「こっちだ」
なんとなく分かり始めてきた。右へと方向を変える。
瘴気が濃い方向。歩くたびに心臓が高鳴る方向へと進んでいく。
……呼吸が苦しい。
「アンク、危ない!」
リタが叫び声をあげる。
その間にも森のハンターは、俺のすぐ背後へと迫っていた。
ただの獣じゃない。
長い胴体としたたかな頭脳を持った怪物。
「なんで……ナーガがここに」
「風の魔法、裂戒の飛!」
牙を向けて襲い掛かってきたナーガに、リタが手刀を放つ。圧縮された空気が、鎌のような形になって無防備なナーガの首を襲う。
「ギャオオオオオオオ!!」
断末魔をあげてナーガは崩れ落ちた。胴体と首が真っ二つに裂かれて、蛇の魔物はだらだらと気味の悪い血を地面に垂らした。
でかい。
人間の数倍のサイズはある巨体だ。
「どうして、こんなところにナーガが……?」
「本来は存在しない幻影魔獣だよね。『異端の王』が手ずから作り出した魔物が、まだこんなところにいたなんて。まるで……」
————まるで、あの時みたいだ。
そう口走ろうとして頭痛が走る。脳みそを針で刺されたような鋭い痛みが、頭の奥を襲う。
「いっつ……!」
「大丈夫か?」
「……問題無い。ナーガは強力な毒を持っている、気をつけろよ」
周囲に向けて索敵《サーチ》を展開する。
勘の良いナーガたちは俺が魔法を展開したのを確認すると、すぐさま補足範疇外へと距離をおいた。やはり、一筋縄ではいかないようだ。
「索敵範囲を拡張したいけど、魔力の消耗が厄介だな……面倒な敵だ」
「あまりここで魔力を消費し過ぎない方が良い。本番はまだこの先にいるから、アンクは索敵を解いて大丈夫」
「しかし……」
「私がなんとかする」
そう言うとリタはポケットから大きな扇子を取り出した。白い羽が飾り付けられたそれを掲げると、持ち手のところから魔力を注ぎ込み始めた。
「魔導具か」
「わたしの魔力を増幅させる様に作られた特化型の魔導具。……危ないから、ちょっと下がってて」
リタは扇を掲げて、前方の森へと向けた。
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