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(2)記憶の旅~始まりはダイエット
しおりを挟む春休み、高速バスの車内。
地元から横浜へと向かう楓伽は、彼氏とのこれまでを思い出している。
去年の3月、卒業式のあと、3年生の先輩に告白。
その場でOKをもらい、つきあえるようになった。
子供の頃から可愛いと言われることが多く、男子から告白されたこともちょくちょくあったが、本命の男子にはなかなか振り向いてもらえず、両想いになれたのは今回が初めて。
それは、リサーチと努力の成果でもある。
先輩のことを意識し始めたのは、1年生の秋。
でも、他校に通う彼女がいると知り、告白なんて考えもしなかった。
その彼女というのは自分と同じ1年生なのだけど、可愛くて、しかもモデルみたいに細い子らしい。
ただ、しばらくして破局。
彼女の親が勉強に集中しろとか言ったそうで、結果的に先輩は振られてしまった。
そこでちょっと、やる気が生まれた。
その他校に通う友達に、彼女の身長体重を調べてほしいと頼み込み、164センチ45キロだと判明。
楓伽は当時、162センチ48キロだったから、身長は2センチ低いのに体重は3キロも多いことにショックを受けた。
でも、死ぬ気で頑張れば超えるのも不可能じゃないよね。
先輩が年下の細い子が好きってことなら、ひょっとして脈アリかも。
うん、ダイエットして自信が持てたら、告白してみよう。
そう思った楓伽は、12月にダイエットを開始。
3カ月弱で6キロ痩せて、42キロになった。
当たって砕けろでやってみた告白も、大成功。
とはいえ、それは不安の始まりでもある。
横浜の大学に合格した先輩とは、4月から遠距離恋愛に。
3月のうちに3度デートして、キスまでは済ませたものの、大学生になった先輩は勉強とアメフトで忙しく、楓伽が安心できるほどには連絡もマメではなかった。
大学ってどんな感じなんだろ。
横浜だし、可愛くてオシャレで細い女の子も多いんだろうな。
アメフト部には女子マネもいるらしいし。
私、このままだと捨てられちゃうかも。
そうならないためにはどうしたらいいのかな。
あ、そうだ、ダイエットしよう。
じつは4月初めの身体測定で、楓伽は痩せすぎを注意されていた。
前年より体重が6キロも減っていたからだが、自分としては別に痩せすぎだとは感じていない。
むしろ、もうちょっと痩せたいのにと思いつつ、やむなくキープを心がけていた。
しかし、遠距離恋愛ゆえの不安に会えない淋しさ、そして学校生活の退屈さやいずれやってくる受験へのストレスなどがつのるうち、痩せたい気持ちもヒートアップ。
ゴールデンウイークを前に、ダイエットを再開することにした。
ちなみに、告白前、ダイエットしたことは先輩には言っていない。
ガツガツしている子には見られたくないのと、もともと細い子だと思われたかったからだ。
今回のダイエットも、内緒でやることに。
目標の数字は特に決めていないが、夏休みに横浜へ行く計画を立てた。
そのとき、再会する先輩に、痩せたことを気づいてもらうのが目標だ。
それから約3ヶ月。
楓伽の体重は38キロ前後になった。
1年前は48キロだったから、10キロ減ったわけだ。
衣更えの段階で、夏用の制服のスカートはウエストがぶかぶかに。
自分で詰めてみたものの、今はまた、ぶかぶかになりつつある。
今回のダイエットも大成功。
と声を大にして言いたい楓伽だが、じつは新たな不安も芽生えていた。
前回に比べ、今回は周囲の反応が今ひとつなのだ。
親には過剰に心配されるし、ふだん細くなりたいと言っているクラスメイトたちにも「痩せすぎで怖い」とか「前のほうがよかった」とか、耳障りな言葉をかけられるように。
体育の授業がプールに変わり、水着姿になると「骸骨に近づいちゃってるよ」とまで言われてしまった。
そんななか、味方になってくれる友達もいる。
ダイエット自体については「ちょっとやりすぎじゃない」としつつも「楓伽が満足してるならそれでいいんじゃないかな」というスタンスだ。
今回の横浜行きもその友達が協力してくれた。
行き帰りは一緒で、同じホテルを予約。
ただし、楓伽はそこに泊まらず、先輩のマンションで過ごすという流れだ。
当日、ホテルでチェックインだけして、楓伽が先輩のところに向かうときも、
「痩せたこと、褒めてもらえるといいね」
と、優しく送り出してくれた。
とはいえ、そのあたりについてもじつは不安が。
先輩にとっては、告白した頃の42キロの楓伽がベストで、38キロの楓伽については、多くの人が見せるような今ひとつの反応をされてしまうのではという不安だ。
そんな不安を抱えながら、先輩の住むマンション最寄りの駅に降り立ち、改札を抜けると――。
先に着いていた先輩が楓伽を見つけて駆け寄り、
「よく来てくれたね。疲れたでしょ」
と、ねぎらった。
そして、真夏コーデで手足の細さが際立つ姿を見ながら、
「あれ? 痩せたんじゃない。なんか、ますます可愛くなってる」
彼女が何より期待していた言葉が。
このひとことで、疲れも不安も吹っ飛び、ともすれば揺らぎがちだった自信も復活した。
さらに、そこからの展開についても、きっと大丈夫、素敵なことが起こりそうという予感がして――。
その瞬間のことを思い出すと、楓伽は今もにんまりしてしまう。
そして、そのあとのことになると、いまだに照れてしまうのだ。
春休み、高速バスの車内。
彼氏とのこれまでをめぐる記憶の旅はまだまだ終わらない。
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