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第6話 (※)
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朔と少しえっちなことをしてしまってから、僕はちょっと警戒していた。
寮の部屋では常にぴったりくっついてくるから、どうも甘い雰囲気に流されてしまう。
キスされそうになる前に、回避するしかない。
「奏、どうしたら付き合える?」
クッションにもたれている僕の顔を、朔が覗き込む。唇が視界に入り、身体ごと反転する。
「な、な、んで?」
「付き合って恋人になりたい」
「友達じゃ、だめなの……?」
朔は、僕が好きだと言うけど、男同士でも何も気にならないのだろうか。
キスしまくってる僕がどうこう言えることではないかもしれないけど。
「……好きだから、友達じゃ嫌だ」
「うう……」
そんなことを言われても、男と付き合ったことないからどうしたらいいのかわからない。
友達に相談するにも揶揄われそうで恥ずかしい。
中学時代に付き合ったのは女の子だったし、キスすら出来なかったけど、僕の恋愛対象は女の子だ。
「朔は、……女の子より男が好きなの?」
中学時代の朔を知らないけど、この外見だしきっとモテただろう。告白もいっぱいされてそうだし、付き合った経験も多そうだ。
「好きになったの、奏が初めてだからわからない」
「そ、そうなのか……」
みんなが羨むような外見の持ち主でも、恋愛経験が豊富とは限らないようだ。
「奏が付き合ってくれるなら、何でもする」
「何でもとか……言われても……」
正直、僕が足を怪我してからの朔はびっくりするほど優しくて、何か困ってるとすぐにサポートしてくれた。
今だってもう治って何ともないのに、変わらず優しくしてくれる。
顔も格好良いし、キスも嫌じゃない。
でも、もし付き合うってなったら、この間のえっちなことよりもっと先をするってことだよな。
それはちょっと出来るかわからない。
その他には、2人でお出かけとか……?
お揃いのもの持つとか……?
どうしよう、嫌じゃない。
むしろしたいかもしれない。
でも、そもそも僕は朔のこと恋愛対象として好きな訳じゃない、と思う。
キスだって、気持ち良くて流されちゃうんだ、きっと。健康な男子だったら、少しくらい快楽に弱いのは仕方ないと思う。
うーん、と悩んでいると朔の携帯がブブブと通知を知らせた。
「あ……忘れてた」
朔は呟きながら携帯を手に取り、ささっと操作するとパタンと置いた。
何事もなかったかのようにまたくっついてくる。
「……大丈夫なの?」
「ん、今日の点呼前に先輩に呼ばれてたけど、やっぱり用事できたから、また明日って」
「えっ、この間の先輩?」
「……? そうだけど……」
魔性先輩、まだ朔を部屋に誘ってるのか。
別に部活の先輩だって、朔は言っているし気にすることなんて何もないけど。
「……僕が、ずっと朔と付き合わなかったら、どうするの?」
「悲しい」
「そうじゃなくて、誰か別の人と付き合う?」
「……奏がいい」
「うう……」
質問しておいて、僕は朔になんて答えてほしかったのかわからない。
でも、朔が僕以外の人に懐くのはちょっと嫌だ。
なんでこんなにモヤモヤするんだろう。───
ぐるぐる考えても、答えは出ない。
自分が何に悩んでいるのかも、よくわからない。
朔とはこれからも仲良くしたいし、変に突き放してまた静かな空間に戻るのは嫌だ。
だからといって、好きでもないのに付き合うのも変だし……。
男同士の恋愛も、ネットで調べても未知の世界すぎてファンタジーみたいだ。
「はあ……」
昼休み、図書委員の仕事をしながら思わずため息を吐いてしまう。
図書室はガランとしていて暇だったので、先生に頼まれていた雑務をさっさと終わらせることにした。
よくわからない分厚いファイルの入った箱を持って、資料室へ向かう。教室からも遠いし、滅多に通らない廊下を進む。
いつもならこういう時も朔がくっついてくるけど、部活の先生に呼ばれて来れなくなった。
朔がいたら、この地味に重たい箱を代わりに持ってくれたんだろうな~、なんて甘えたことを考えながら資料室のドアを開けようとした時だった。
『……っ、……ぁ』
資料室の隣の教室から、何か聞こえてくる。
名前のない狭そうな部屋なのに、何やってるんだろうとただの興味本意で隙間から覗いてみた。
『あっ、あっ、んんっ』
『……大きい声出すと、誰か来ちゃうよ』
『んっ、でも……っ、アッ、もっ……イくぅ』
セッ…………!!!
パチ、パチ、と肌のぶつかる音が生々しい。
他人の性交渉を見てしまった衝撃に、思考と共にその場で固まってしまう。
2人とも僕と同じ制服を着ているけど、ネクタイの色からして上級生のようだった。
『アッ、んん、……昨日もしたのに、凄い♡』
『まだ余裕あるみたいだね?』
『……や、ッ、あっ、だめ、あっ、~~ッ』
……き、昨日もしたの?!
さっきまで机で仰向けに寝かされていた人が、ぐいっと起こされて正面の人の首に手を回すと、繋がったまま抱えられ再び肌のぶつかる音が響く。
しがみついて艶かしく身体を震わせる人物の顔が見えて、更に固まってしまう。
……魔性先輩!!
『あっ、イく、ッ、またっ、あっ……ッ』
魔性先輩の果てる場面を2回も見てしまった。
覗いていたことがバレる前に、音を立てないように資料室へ荷物を運ぶと、僕はその場から急いで逃げた。
頭の中が混乱して図書室まで全力疾走していた。
男同士で、付き合っているのかな。
魔性先輩……、めちゃくちゃ声出してたし気持ち良さそうだった。
ついさっきまで、ファンタジーだと感じていたものが一気に現実味を増す。
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