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第12話
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「そっかそっか~、上手くいったんだ~♡」
夕飯の時間、食堂でご飯を食べていると魔性先輩に見つかって声をかけられた。
警戒している僕に対しても、やけに終始にこにこしている魔性先輩に、朔と2人で部屋にお呼ばれされたのだった。
話を聞くと、朔が部活で絶不調な時期があり、魔性先輩が冗談で好きな子でも出来たのか聞いたらしい。正直な朔は同室の子が好きになった、とそのまま伝えたらしく、そこからお節介が始まったようだった。
なぜ既に知られているのかというと、僕がやけに魔性先輩のことを気にしているので、朔はなんとなく夕飯前に付き合えたことを報告したらしい。
「えっ、……じゃあ、朔と先輩は本当にえっちなことしてない……ってことですか?」
半信半疑な僕に、魔性先輩はおかしそうに笑うと携帯の写真をこちらに向かって見せてきた。
この間、カフェに一緒に来ていた人が写っていた。
「これ、オレの彼氏♡」
「……あっ、そうだったんですね」
「そう♡あ、この間は、彼氏と一緒に色々教えてあげたんだよ~、えっちの仕方とか? 上園がこんな身なりして童貞だって言うからさ~」
勉強熱心だったって……、そういうこと?
「上園も、あげたやつ、役に立ったでしょ?」
「……はい、役に立ちました」
「良かった~♡」
魔性先輩は自らくそびっちを装って、朔と僕をくっつけようとしてくれたらしい。
朔の鞄から出てきたゴムも、魔性先輩が予備をお裾分けした物と教えてくれた。
めちゃくちゃお節介だな、と思うのと同じくらい、心の中で悪口をいっぱい言ってしまったことに申し訳なくなってくる。
「胡桃川くん、ちょっとオレいじわるだったよね? ごめんね、何かあったら相談してね♡」
「あ、……ありがとうございます」
通常の魔性先輩は、ただのお世話焼きの美人な先輩で、最後部屋を出る時に、お詫びとお祝いのお菓子までくれた。
魔性と噂されているのも、先輩に振られた人が評判を落とすために言い出したけど、更にモテてしまったらしく結構気に入っているとまで言っていた。
メンタルまで強い。敵にはしたくない。
「先輩、めっちゃいい人だね……」
「うん……俺は奏だけって、信じてくれた?」
「……ん」
先輩の部屋からの帰り道、誰もいない廊下でこっそり手を繋いで歩いた。
朔の大きい手も熱い視線も声も唇も、僕だけのって考えるとたまらなくなる。ぴったりとくっつくように朔の腕に頬を擦り付けた。
「……さっきは黙っておいたんだけど、空き教室で先輩が彼氏と……えっち、してるところ見かけちゃったことあって……」
「……そうなんだ」
「でね、……朔ともしてたら、すごい嫌だなってなっちゃって……」
「うん……」
「朔のことで頭いっぱいで……いつの間にか、朔とならしてもいいかも、とか……考えてた」
ぴく、と朔の手が震えて、ぎゅうと握られた。僕も握り返しながら言葉を続けた。
「朔……冷たくして、ごめんね」
「……いいよ」
「……好き」
「うん」
ちら、と顔を見上げると、朔の顔がちょっと赤い気がして今すぐ抱きしめたくなったけど、ちゃんと部屋まで我慢した。
* * * * *
先輩の誤解も解けて、晴れて朔とはカップルになったけど、よくよく考えたらいつもとあんまり変わらない。前から部屋ではくっついていたし、めちゃくちゃキスしていたし。
ただ、なんとなくだけど恋人ってなると、全てが正式に同意の上って感じがしてちょっとむず痒い。
そんなことを考えながら、朔と一緒に仲良くお風呂に行って、ホカホカになって帰ってきてすぐのことだった。
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