58 / 62
第3章:始まるは学院対抗戦
第58話:合宿7日目②│1つのピース
しおりを挟む
「……できない~……!」
森の木々の合間に、情けない声が響いた。
ラルトに連れられてきた3人………ハル、セイハ、リオナは、それからずっと魔術消去(キャンセル)の練習を繰り返していた。だが、結果は出ていない。3人とも額に汗を浮かべながら、地面にへたり込んでいる。
「全然感覚が掴めない……! なんなの、この魔術……!」
「やっぱ、普通に火とか風を出す方が楽だよな……」
「うう……私、ちょっと頭が痛くなってきた……」
弱音が次々に漏れる。無理もない。
この魔術は難易度が桁外れだ。
俺は少し眉をひそめ、隣に立つラルトに小声で尋ねる。
「ラルト……やっぱりこの魔術は、あの三人にはまだ早すぎたんじゃないか? 来てもらっておいてなんだが、本当に良かったのか……?」
「シューファさん。」
ラルトはきっぱりと首を振った。その瞳は、俺の目を見据えて、言葉にしなくても3人のことを信用していることを俺に伝えた。
「あの3人は必ず成し遂げますよ。俺が保証します。伊達に何百人も弟子を見てきたわけじゃありませんから。」
これまで見てきた経験………それはどんなことよりも信用ができる自信だ。
「……随分な自信だな。」
「ええ、俺は知ってます。無理だと思える壁を越える瞬間に立ち会うのが、どれほど尊いことか。」
ラルトの言葉に、俺は息を吐いた。
信じる心。それがあるからこそ、彼は師として弟子たちから慕われるのだろう。
「とはいえ……魔術消去はな。俺は“無属性魔導師”だからできたが、三人はそうじゃない。普通なら到底できるはずもないんだ。」
「大丈夫です。4属性魔導師の俺が創り出した魔術なんですから!」
「それで、これまでにできたやつは?」
「……………それは言わない約束です。」
「はは……。」
気まずそうに笑うラルト。俺もつられて苦笑した。
練習内容は単純だ。
ラルトが張った強力な守護結界を、魔術消去だけで打ち破る。力任せの魔力ではどうにもならない。必要なのは“魔力を魔力のまま制御し、流れそのものを相殺する”繊細な技術。
「……まぁ、できればラッキーってところか……」
俺は呟いた。
だが心の奥で思う。あの3人なら、きっと。
そう思った矢先だった。
「……ラルト。リオナの……あれって。」
「ええ。必ず誰かはできると思ってましたが……まさか、こんなに早くに。」
俺らの視線の先で。
リオナの右手が、結界をすり抜けていた。
木に触れている。まるで結界など存在しないかのように。他の2人が感じでいる結界を感じさせないように。
「なっ……」
「嘘……でしょ……?」
リオナ自身がいちばん驚いた顔をして、自分の手を何度も見返していた。
ラルトの目が潤む。ラルトの目尻には、大きな水溜まりができていた。
「はは……なんなんですか、この子たちは……本当に……」
その声は震えていた。
何十人、何百人もの弟子を教えてきて、誰も成功しなかった魔術。
それを、たったひとりの少女が成し遂げた。
「……良かったな、ラルト。」
「ええ。本当に……。これでひとつ、未来に繋がりましたね。」
俺は頷く。
ハルの異常な魔力量と操作能力。
そしてリオナの魔術消去。
ラルトはどう思っているのか分からないが、セシリアを打ち倒すための“ピース”は、確かに埋まりつつある。
あとは……セイハか。
個々の力なら3人の中で最強だろうが、まだ伸び切っていない。おそらく、俺じゃなくサラが導いた方がいい。相性も含めて。
だが今は。
「リオナ。」
「……先生。」
俺は近づき、静かに言った。
「よくやったな。」
「………っ、はい……!」
リオナは震える声で応えた。まだ信じられないのか、何度も結界に手を出し入れしては、その感覚を必死に刻みつけていた。
ただ俺の横では………。
「……うっ……ぐすっ……」
「いつまで泣いてんだよ、ラルト。」
「だ、だって……っ。俺は……っ……!」
ラルトは男らしい顔つきをぐしゃぐしゃにして、地面に涙を落としていた。
俺は小さく笑う。
喜ぶ時は喜べ。
嬉しいなら泣け。
悔しければ考えろ。
怖ければ逃げろ。
そうやって本能に従うことも、人を強くするためには必要なのかもしれない。
横で泣きじゃくるラルトを見ながら、俺はそう思った。
この1日で、また一歩、セシリアを倒す、3人が目指す目標にその歩が近づいた。
森の木々の合間に、情けない声が響いた。
ラルトに連れられてきた3人………ハル、セイハ、リオナは、それからずっと魔術消去(キャンセル)の練習を繰り返していた。だが、結果は出ていない。3人とも額に汗を浮かべながら、地面にへたり込んでいる。
「全然感覚が掴めない……! なんなの、この魔術……!」
「やっぱ、普通に火とか風を出す方が楽だよな……」
「うう……私、ちょっと頭が痛くなってきた……」
弱音が次々に漏れる。無理もない。
この魔術は難易度が桁外れだ。
俺は少し眉をひそめ、隣に立つラルトに小声で尋ねる。
「ラルト……やっぱりこの魔術は、あの三人にはまだ早すぎたんじゃないか? 来てもらっておいてなんだが、本当に良かったのか……?」
「シューファさん。」
ラルトはきっぱりと首を振った。その瞳は、俺の目を見据えて、言葉にしなくても3人のことを信用していることを俺に伝えた。
「あの3人は必ず成し遂げますよ。俺が保証します。伊達に何百人も弟子を見てきたわけじゃありませんから。」
これまで見てきた経験………それはどんなことよりも信用ができる自信だ。
「……随分な自信だな。」
「ええ、俺は知ってます。無理だと思える壁を越える瞬間に立ち会うのが、どれほど尊いことか。」
ラルトの言葉に、俺は息を吐いた。
信じる心。それがあるからこそ、彼は師として弟子たちから慕われるのだろう。
「とはいえ……魔術消去はな。俺は“無属性魔導師”だからできたが、三人はそうじゃない。普通なら到底できるはずもないんだ。」
「大丈夫です。4属性魔導師の俺が創り出した魔術なんですから!」
「それで、これまでにできたやつは?」
「……………それは言わない約束です。」
「はは……。」
気まずそうに笑うラルト。俺もつられて苦笑した。
練習内容は単純だ。
ラルトが張った強力な守護結界を、魔術消去だけで打ち破る。力任せの魔力ではどうにもならない。必要なのは“魔力を魔力のまま制御し、流れそのものを相殺する”繊細な技術。
「……まぁ、できればラッキーってところか……」
俺は呟いた。
だが心の奥で思う。あの3人なら、きっと。
そう思った矢先だった。
「……ラルト。リオナの……あれって。」
「ええ。必ず誰かはできると思ってましたが……まさか、こんなに早くに。」
俺らの視線の先で。
リオナの右手が、結界をすり抜けていた。
木に触れている。まるで結界など存在しないかのように。他の2人が感じでいる結界を感じさせないように。
「なっ……」
「嘘……でしょ……?」
リオナ自身がいちばん驚いた顔をして、自分の手を何度も見返していた。
ラルトの目が潤む。ラルトの目尻には、大きな水溜まりができていた。
「はは……なんなんですか、この子たちは……本当に……」
その声は震えていた。
何十人、何百人もの弟子を教えてきて、誰も成功しなかった魔術。
それを、たったひとりの少女が成し遂げた。
「……良かったな、ラルト。」
「ええ。本当に……。これでひとつ、未来に繋がりましたね。」
俺は頷く。
ハルの異常な魔力量と操作能力。
そしてリオナの魔術消去。
ラルトはどう思っているのか分からないが、セシリアを打ち倒すための“ピース”は、確かに埋まりつつある。
あとは……セイハか。
個々の力なら3人の中で最強だろうが、まだ伸び切っていない。おそらく、俺じゃなくサラが導いた方がいい。相性も含めて。
だが今は。
「リオナ。」
「……先生。」
俺は近づき、静かに言った。
「よくやったな。」
「………っ、はい……!」
リオナは震える声で応えた。まだ信じられないのか、何度も結界に手を出し入れしては、その感覚を必死に刻みつけていた。
ただ俺の横では………。
「……うっ……ぐすっ……」
「いつまで泣いてんだよ、ラルト。」
「だ、だって……っ。俺は……っ……!」
ラルトは男らしい顔つきをぐしゃぐしゃにして、地面に涙を落としていた。
俺は小さく笑う。
喜ぶ時は喜べ。
嬉しいなら泣け。
悔しければ考えろ。
怖ければ逃げろ。
そうやって本能に従うことも、人を強くするためには必要なのかもしれない。
横で泣きじゃくるラルトを見ながら、俺はそう思った。
この1日で、また一歩、セシリアを倒す、3人が目指す目標にその歩が近づいた。
1
あなたにおすすめの小説
辺境の無能領主、聖女と信者に領地を魔改造されて聖地と化した件〜俺はただ、毎日ジャガイモを食って昼寝したいだけなんだが?〜
咲月ねむと
ファンタジー
三度の飯より昼寝が好き。特技は「何もしないこと」。そんなグータラ貴族の三男、アッシュ・フォン・バルバドスは、ついに厄介払いされ、狼が出るという噂のド辺境「ヴァルハラ領」を押し付けられた。
「これで心置きなくグータラできる」と喜んだのも束の間、領地は想像を絶する貧しさだった。今日の食事も、裏庭で採れたジャガイモだけ。そんな絶望的な日々を送るアッシュの元に、ある日、王都から一人の美しい聖女セレスティアがやってくる。
政争に敗れて左遷されてきたという彼女は、なぜかアッシュを見るなり「神託の主よ!」とひれ伏し、彼を現人神として崇め始めた!アッシュが空腹のあまり呟いた「天の恵みはないものか…」という一言で雨が降り、なけなしのジャガイDモを分け与えれば「聖なる糧!」と涙を流して感謝する。
こうして、勘違い聖女による「アッシュ教」が爆誕!
「神(アッシュ様)が望んでおられる!」という聖女の号令一下、集まった信者たちが、勝手に畑を耕し、勝手に家を建て、勝手に魔物を討伐し、貧しい村を驚異的なスピードで豊かにしていく!
俺はただ、ジャガイモを食って、昼寝がしたいだけなんだ。頼むから、俺を神と崇めるのをやめてくれ!
これは、何の力もない(はずの)一人の青年が、聖女と信者たちの暴走する信仰心によって、意図せずして伝説の領主へと成り上がっていく、勘違い領地経営ファンタジー!
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。
故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。
一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。
「もう遅い」と。
これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!
僻地に追放されたうつけ領主、鑑定スキルで最強の配下たちと共に超大国を創る
瀬戸夏樹
ファンタジー
時は乱世。
ユーベル大公国領主フリードには4人の息子がいた。
長男アルベルトは武勇に優れ、次男イアンは学識豊か、3男ルドルフは才覚持ち。
4男ノアのみ何の取り柄もなく奇矯な行動ばかり起こす「うつけ」として名が通っていた。
3人の優秀な息子達はそれぞれその評判に見合う当たりギフトを授かるが、ノアはギフト判定においてもハズレギフト【鑑定士】を授かってしまう。
「このうつけが!」
そう言ってノアに失望した大公は、ノアを僻地へと追放する。
しかし、人々は知らない。
ノアがうつけではなく王の器であることを。
ノアには自身の戦闘能力は無くとも、鑑定スキルによって他者の才を見出し活かす力があったのである。
ノアは女騎士オフィーリアをはじめ、大公領で埋もれていた才や僻地に眠る才を掘り起こし富国強兵の道を歩む。
有能な武将達を率いる彼は、やがて大陸を席巻する超大国を創り出す。
旧タイトル「僻地に追放されたうつけ領主、鑑定スキルで最強武将と共に超大国を創る」
なろう、カクヨムにも掲載中。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる