最強のアラサー魔導師はかつての弟子達に迫られる~ただ冒険者を始めようとしただけなのに弟子達がそれを許してくれない~

おやっつ

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第3章:始まるは学院対抗戦

第59話:合宿8日目(最終日)│それぞれの個性、進む道

「久しぶりのシューファさんの料理、めっちゃ美味しいです!」
「………なんであなたがまだ居るのよ。」

あれから皆で夕食を食べている時だった。
当然のように食卓に腰を下ろし、当たり前の顔で箸を進めていたラルトに、サラは半眼でじとりとした視線を向ける。

「懐かしいよな。昔はよく三人で食卓を囲んでいたし。」

ラルトが十八歳、セシリアがまだ幼かった頃。
あの時期、セシリアを俺の家で育てていたから、よくラルトも遊びに来て三人でご飯を食べた。
まだ心に空いた穴を抱えていたラルトの顔に、笑みが戻り始めたのもその頃だった。
………一人の小さな少女に出会ったからだ。

「最初シューファさんのご飯を食べた時、美味しすぎてセシリアと大泣きした記憶が未だに残っていますよ。」
「………そんなこともあったな。」

懐かしい思い出に、胸が少し熱くなる。
初めて二人に料理を振る舞った時、初対面の俺ですら彼らは心のどこかにぽっかりと空いた隙間を抱えていると感じた。

その隙間を埋めるように、俺は2人を放っておけなくて………結局、友達というよりも家族のように一緒に暮らしていたのだ。

「そう思うと、ラルトは泣いてばっかりだな。」
「漢の涙ってやつですよ。」

軽口を叩き合うと、隣や正面からクスクスと笑い声が零れる。
セシリアは無邪気な笑顔で肩を揺らし、サラも口元を押さえている。
あぁ………本当に、あの頃に戻ったみたいだ。

「セシリアが聖国に行ってから、本当に癒しがないですよぉ……。」

ラルトはよく俺のことを“セシリアの親みたい”と言っていたが、実際は逆だと思う。
俺やセシリア、他の子どもたちからすると、ラルトの方がずっと“父親”のように見えていた。
今こうして机にぐでーっと突っ伏している姿は、娘の旅立ちを後悔している父親そのものだ。

そんな何気ない会話をしながら、食卓は温かな空気に包まれていく。

「そういえば、ラルトはいつまでここに居るんだ?」
「確かに……い…つまでいましょうか?」

とぼけたように首を傾げるラルト。いや、なんでお前が分かってないんだよ。
突っ込みかけた矢先、サラがすっと言葉を差し込む。

「あなたが居ればちょうどいいでしょ。」
「ちょうどいいって……なんですか。……って、そういうことですか。」

「ハル、リオナ、セイハ。それぞれに一人ずつ付ける、ってことか。」

サラはセイハとラルトの相性を理解していたらしい。

「じゃあ、今日はもう寝るぞ~。」

そう声をかけると、それぞれが部屋に散っていった。
一日の終わり。静かな夜の空気の中で、胸の奥に小さな期待が芽生える。



───翌日

「今日は………何をするか。」

リオナとセイハは、それぞれあの二人に魔術や魔術の使い方を教わり、すでに稽古を始めていた。
その真剣な声が、外の庭から時折聞こえてくる。

対して俺とハルは、まだ方針を決めかねていた。

「そういえば………先生って、魔力が少し違いますよね。」
「んん………それか?それは魔力を練っているからな。」
「魔力を………練る?」

小首をかしげるハル。その瞳には興味と疑問が入り混じっている。

「そうだ。魔力を練れれば便利だぞ。例えば………。」

俺は手を軽く握って見せながら説明する。
練ることで、例えば元の魔力の量を100から50に抑えられる。
その状態で魔術を使えば、結果的に少ない魔力で大きな効果を発揮でき、同じ魔力量でも数倍の魔術を繰り出せる。

「でも………先生以外はしていませんよね。ラルトさんもサラ先生も。」
「あぁ………これは“俺しかできないからな”。」
「そうなんですか?」

「実際、俺もつい最近できるようになったんだ。フェンと契約したからな。」

その名を口にすると同時に、白い影が隣に現れる。
淡い光を纏った灰色狼………フェンだ。

「この子……すごく強いですよね?」
「多分俺よりも強いぞ。」
『主人の方が強いと思うがな。』

フェンの低い声に、ハルが目を丸くする。
その反応を横目で見ながら、俺はふとを思いついた。

「………そうだ!フェン、ハルにあと足りないのはなんだと思う?」

フェンの黄金の瞳が、じっとハルを射抜いた。
一瞬で場の空気が張り詰める。
ハルはごくりと喉を鳴らしながら、背筋を伸ばした。

『………実力は申し分ない。あとは経験だな。』
「経験………それは模擬戦ということじゃないよな。」
『あぁ………命を懸けた実戦だ。』

あまりやりたくはなかったんだが………やらないといけないか。

俺たちは新たな課題を見つけ、それを克服するために森に出る。

ハルにセイハ、そしてリオナ。この3人が学院対抗戦でどんな結果を残すかは、まだ分からない。
ただ1つ、確かなことがあった。
それは………

学院対抗戦で、戦いを見ている全ての人、相手、関係者の心をつかむこと。そして、この大陸に新たな歴史を刻むこと。

ただ………“どんな戦いになるかは”、まだ分からない。
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