上 下
37 / 43
期末試験編

37話 優しいですが脈ありでしょうか?

しおりを挟む
 とうとう、勉強会も三日目になった。
 昨日は、紫陽花に遅れを取ってしまったが、今日こそはあの券を貰わなくてはいけない。
 あの券を使って、あのボイスレコーダーを取り上げないと、一生あいつの奴隷のままだ!
 今日こそは、絶対取るぞ!
 とは言ったものの、勉強は辛い。
 この1時間の勉強時間でさえ、苦痛だ。

「はぁ~こんな時に、マシュマロが居てくれたらなぁ」

「久しぶりに聞いたな、桔梗のマシュマロちゃん」

「だれ?」

「中学の時、桔梗を助けてくれた人らしい」

「そう、あの子のお陰でこの高校に合格したと言ってもいい」

「確かに、中学の時、ド級の馬鹿だもんね」

「お前に言われたくねぇよ!」

 紫陽花に、向けて思いっきりデコピンをかます。
 紫陽花の額から、低く鈍い音が鳴る。

「ぎゃあああ!!痛い痛い!!ちょっとは、手加減してよ」

「……すまん、加減したつもりだったんだが、まだ強かったみたいだ」

「うう、たんこぶできそう」

「後から、ジュース奢ってやるから、な?」

「仕方ない、許してやろう」

「切り替え速いな、まぁ大丈夫そうだな」

「はぁ~勉強のやる気が出ないぜ~」

「ほらほら、ちゃんとしないと、また紫陽花に負けるぞ」

「そうだなぁ、ああ今となっては、小学生もどきの悪魔に、拷問の如く教えられてるしなぁ」

「その小学生もどきの下着を見て、興奮してたのはどこの誰かしら?」

「下着?」

 俺は、即座に蓮華の耳に指で栓をして、ついでに目も隠した。

「いいか、お前は何も聞いてないし、見てもいない!いいな!」

「あら、なんでそんなに慌ててるの?」

「慌ててないけど!どうもしてません!」

「全く、そんなに優しく教えて欲しいならやってあげようか?」

「え?」

 聞きずてならない事を聞いたぞ。
 この悪魔が、優しく教えるだって?
 そげな馬鹿な!
 こんな悪魔と意地悪を混ぜ合わせたキメラが、優しく教えるなんてなんの冗談だ!

「とりあえず、失礼な事考えてそうだから、後で覚悟してなさい」

「なにも考えてないって!というかお前が、優しく教えるなんてできるの?」

「出来るわよ、優しく教えた所でどうせ覚えないからやらないだけよ」

「いいだろう、やってみろよ」

 楓は、俺の席の横に椅子を置き、そこに座った。
 ほとんど肩が当たってるぐらいの距離感だ。

「なんでこんなに、近いんだ?」

「問題に正解したら、頭をよしよししてあげるから、優しいでしょ?」

「そういう感じ?」

 それから、問題に正解するたびに神奈月から頭を撫でられた。難しい問題で悩んでいる時は、

「がんばれ❤️がんばれ❤️」

 と何処かで聞いた事のある応援をしてくれる。
 めちゃくちゃ恥ずかしい。
 優しいというか、羞恥プレイだろこれ!

「すみません、流石に恥ずかしいので勘弁して」

「自分から言っておいて、また厳しい方を選ぶの?ドM?」

「断じて違う!いつもと温度差が違い過ぎて気持ち悪いだけだ!」

「酷い言い草ね、まぁその調子で頑張りなさい」

 しかし、ほんのちょっと、本当にちょっとだけ嬉しかった事は、絶対に言わない。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

街角のパン屋さん

SF / 完結 24h.ポイント:1,278pt お気に入り:2

異世界はもふもふと共に!〜最強従魔と優しい世界〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:312pt お気に入り:6

大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,893pt お気に入り:24,113

Lv.1の結婚 辺境の地ではじめるスローライフ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:16

彼女を悪役だと宣うのなら、彼女に何をされたか言ってみろ!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:11,042pt お気に入り:108

世界神様、サービスしすぎじゃないですか?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:11,583pt お気に入り:2,216

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:61,153pt お気に入り:3,714

天使志望の麻衣ちゃん

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:127pt お気に入り:1

◼️ブラック・ドラゴン◼️100年に一度蘇る黒竜

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:2

処理中です...