乙女ゲーム短編集

karu

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モブは端にいたいのです。

聖女

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私はしばらくその言葉に固まった。

うそでしょ?私がせいじょ?
ありえない。

男の子は説明を続ける。
「最近、以前の聖女様が引退されて新しく聖女候補を集めているらしい。条件は、魔力の色が見えるもの、ただ一つ。伝承の絵本では魔力の色が見えるものは怪我でも病でも、なんでも治せると書かれていた。」
伝承について聞きながら私は震えていた。

こわくて震えているのか。

うれしくて震えているのか。

震えている声で、私は聞く。

「それは、貴族、平民、貧民は問わないの?」

厳しい、それでも意思の強そうな瞳でこちらを見ている男の子はゆっくりと、でも、しっかりと教えてくれた。

「問わない。だから、もしかすると聖女になれるかもしれないと言ったんだ。選考はあるようだが、なかなか人数が集まらないようだし。」

そして、真意を量ろうとする目と目が合った。

「君は、どうする?」

行くかどうかを尋ねているのだろう。
服そうとかで私のじょうきょうもわかるだろうし...。
それでも、親とはなれるのはさびしいのではないかと案じているのだろう。

昔からこういう他人の感情を察するのは得意だった。
それで、両親から捨てられる同然の行為をされても、彼らの気持ちは理解できるし、と、胸が痛まないのかもしれない。
でも、それだけ、もう両親に両親へ対する愛情はないということだろう。

兄妹にはひそかに便りを出せばいい。
どうせ、子供に興味のない両親には気付かれやしないだろう。
聖女として、お金をもらえば兄妹をこちらに連れてくることも可能だろうし。

よし!いじでもせいじょになるぞ!

意思が決まると、彼の目をまっすぐ見つめる。
意思が伝わったのか彼は落ち着いて言葉を待っているようだった。

「私は、聖女になる!」

すると彼は
「そうか。じゃあ、教会まで連れてってやる。また攫われそうだし。」
と、夕日を背にし、晴れやかな笑顔で初めて笑った。

私はこの時の笑顔を一生忘れることはできないだろう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



時は数刻過ぎ、もう夜に太陽が沈みかけている頃。

教会の前で一つの別れがあった。

「じゃあ、今度こそ、帰る。」

無事に教会へと彼が話をしてくれて、聖女候補となることが決まった。
そしていよいよ彼が去ってしまう寂しさに私は泣きそうになっていた。
「また、会ってくれる?」

そう一言、彼に尋ねる。

「いや、会えない。もう聖女候補なんだ。これからきっと、怒涛の毎日が過ぎ去るだろう。
そこに俺と遊んでる暇なんかない。」

「でもっ...「それに、俺も忙しい。」
そうだよね。彼だって、これだけ魔法の才能があれば毎日忙しく働いているはず。
服装からして平民だろうし。
それでも私のために半日使ってくれたんだ。
それだけでも感謝しなくちゃならない。

あぁ、でも、これだけは聞いとかないと。
「じゃあ、名前だけでも教えてくれない?」

彼は少し逡巡した後、まあいいかというようにこちらを向いた。
「ミカだ。君の名前は?」

「ケリー!」

「そうか、じゃあ、ケリー、元気でな。」

「みか...ミカ!元気でね!」
もう歩き出している彼の背中に向かって叫んだ。

すると彼は後ろ手に手を振り3歩あるいたところでさっきも使っていた転移の魔法で消えた。

私はしばらく彼、ミカが消えた虚空を見つめていた。

そして、決意する。
また恩返しをしないと!

彼とはまた会えるだろう。
あれだけの才能が有ればいずれ貴族社会へあがってくる。




ミカが聖女様に見つかってしまった原因は、彼女が彼の才能に気付いたこと。
そして、彼は彼女の才能を知らないことにあった。

そして、ミカは数年後に始まる乙女ゲームの開始の準備に向けて、忙しい、のであった。
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