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異世界?

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ーーじわじわと足元から上ってくる暑さ。
その不快さに、目を覚ます。

あれ。
見覚えのない天井。

そうだ私たち未来の世界に…、やはり夢ではなかったらしい。


私は、今の状況に至るまでを思い出そうと、眠い頭を叩き起こす。
そうだ、私はリーネと話してて、そのうちに寝てしまったんだ。

当のリーネは、隣でお休み中だ。

あまりの暑さに窓を開けると、外からシャッシャッシャッっと擦るような音が聞こえる。
外で時雨が、石畳を掃いていた。


よく見ると、この建物の周りは鬱蒼と雑木林に覆われている。
見た事のない木も多い。

どうやら少々高台になっている様で、石畳の先は下りの階段になっている。
階段の終わりには、歪な赤い門が立っている。


ぼーっと見ていると、時雨がこちらに気づいた。
手を振っておはようと言うのが見える。

私は手だけ振り返して、リーネを起こさないようそっと部屋を出た。


ーー


「おはよう蓮音、早起きだね。」
「おはよう、暑さで目が覚めてしまって。」

時雨が目を見開く。

「言ってくれたら良かったのに、エアコンつけたじゃん。」
「…エアコン?」
「室温を丁度良くする機械だよ。」

そ、そんなものが…。
それにしても、初めて家の外に出た。

私達のいた小さな建物の他に、外廊下で繋がっていて、もう一回り小さな別の建物が付いている。


時雨が掃いている石畳のもう一方は、その建物に続いていた。


よく見てみると、今日は昨日と服が違う。
服の前を合わせた様に、襟がV字に合わさっていて、上下とも微妙な緑色。
ズボンは充分な長さがあり、足首がキュッと締まっていて、裾はフワッと開いている。
足元は裸足で、乾いた植物を編んだ様な靴を突っかけている。

「あ、これ?作務衣って言うんだ。こっちは草履。」


そんな話をしていると、後ろから声がかかる。

「おはよう時雨、蓮音さん。」
「あ、おはよう父さん。」
「おはようございます。」

秦さんだ。

「出かけてくるよ、任那みまなさんの所に行ってくるから……多分夕方には戻れると思う。」
「分かった。」


時雨は行ってらっしゃいと言って、秦さんを階段まで見送る。
それから腰のポケットに手を突っ込むと、なにやら板を取り出した。
なんか黒い、手のひらサイズの四角い板。

時雨はそれを片手で掴んで、親指で撫でた。
撫でた面は見えない。

「7時か。」

…それ時計?

「太郎と花子も起きてくるだろうし、朝ごはんにしよう。」

そう言って、時雨は私に戻っててと言い残すと、どこかへ走って行った。

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